閑話 第二王妃の考え


 ……なんとも驚いたわ……『還らずの荒野』を一望とはね……


 ……それよりも驚いたのは娘のクレア……あの笑わないぶっきらぼうの娘が、あんなに女らしくなって……

 ……寝たのかしらね?この男と……でも、誠実そうな男よね……いささか容姿は問題ありだけど……


 ……クレアも出戻り、このままでは修道院に入れるしか無いけど、この男、間違い無しに『神の使徒』じゃないの……

 ……私の鑑定が深く届かないのよ!あり得ないわ!……


 ……陛下がどう考えておられるか分らないけど、少なくともこの男をつなぎ止めなくては……

 ……でも、どうするか?平民相手に例え出戻りの娘と云えど、降嫁はありえない……


「ヒロ殿といったかしら、クレアのことをどう思っているの?」

「妻にしたいと思っております」


「一応、こんな出戻り娘でも王女なのよ、平民に降嫁はあり得ないのよ、どうするつもりなの?」

「出来ますれば、国王陛下に嘆願したいと思っています、その後は、国王陛下のお言葉を伺い考えます」


 ……この男、見てくれよりも胆力がありそうね……


「軟着陸できるとお考えなの?」

「神様の『宣託』があり、クレア様を娶ることに対して、お祝いをいただいております、だからどんなことがあっても、クレア様を娶れるとおもっております」

「神様の『宣託』ですか……」


 ……『宣託』を受けたの?あながち嘘ではないわね……

 ……私としても、娘には幸せになって欲しい……陛下はあの馬鹿侯爵に、クレアを押しつけたけど……


 ……クレアは可哀想に子をなせぬ身体、不憫で……これほどの美貌なのに、あの馬鹿ぐらいしか……

 ……王族貴族に嫁ぐとなると、子をなさねばならぬ、不妊の女は妻にはなれない、愛人が関の山……

 ……なんとか侯爵夫人に押し込んだときには、少しばかり母としては嬉しかった……


 ……それを、暗殺とは……どんな理由かは、クレアの書類に書かれているのでしょうが……陛下が宰相に直接渡されたみたいで……なにか大変な事が書かれていたのでしょうね……

 ……クレアもその事に対しては一切喋らないし……


 ……そんなことより、クレアの身の振り方よね……


「神様からお祝いを頂いたとおっしゃったわね、この国の嫁取りは代金がいるのはご存じね、その『神様からお祝い』、差し出せるの?」

「お母様!」

「クレアは黙ってらっしゃい!」


「差し出します!勿論、差し出します」

「云いましたね、二言は無しですよ」

「誓います」


 ……何とかなりそうね……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る