超短編④ 「カエルノキモチ」

※この作品は草野心平さんの「河童と蛙」からインスピレーションを受けた

二次創作作品です。


 告白は、緩やかな不思議だった。心臓は騒ぎ立ち、頭上の皿も割れそう

なほど緊張していたけれど、その時間は心と身体が分離しているようで、

魂が宙を揺蕩ってしまっている感覚。一言で表すなら、あれは矛盾だった。

 私の、あまりにも不器用で、まとまりのない月すべりの踊りは、どこま

で彼に伝わっただろうか?一声小さく返事をして、すぐに帰ってしまった

から、彼の真意は解らずじまいである。

「ああ、ごめんなさい、お月様。あなたの光をお借りしたのに、徒爾な結

果に終わってしまったかもしれない。」

月を見上げて河童が言うと、

「そんなに自分を詰らないで。恋するものは常に貴く、美しいのだから。」

と、彼を讃嘆し、まんまるな笑みを浮かべた。

「今度のよく晴れた夜、星の便りが私の隣を通るわ。私は、今より少し欠

けてしまうけれど、2人で見上げにきなさい。」

河童の顔がパッと明るくなった。

「ありがとうございます!お月様。天気読みは得意です。きっと、また2人

でこの池に来ます。」

河童はそう行って一礼すると、ドポンと音を立てて、水の中へ帰っていった。

 月はそこに広がった泡と波紋を、消えるまでじっと見つめていた。

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