超短編

超短編① 「あの春と同じ」

　連日、雨が降ったせいだ。4月の初めにも関わらず、桜はほとんど散って

しまっていた。

「せっかく晴れたのに、残念だね。桜、ほとんど咲いてないや。」

僕が言うと、彼女は不思議そうに僕を見つめて

「サクラ、たくさんさいてるよ？」

と言って、花弁の散らばった、湿った道端を指差した。

　この子には、帰ったらママの話をしてあげようと思った。