番外編「ドキドキ英語授業」
チャイムが鳴り、ALTのマイケルは一拍おいて授業を開始する。
「Hallo,everyone.」
「はろー、みすたーまいけるー」
「NO,no. Michael.」
「のーのー、まいけるー」
「Oh...No..」
「ゆーせいぐっばーい」
以下、作者の英語能力不足により全編日本語でお送りいたします。
「エンアーイセイハロー」
「……」
マイケルが新井たちの粗いボケに乗ってあげたとたんに、教室は静まりかえった。マイケルは目ん玉をかっぴらいて皆を見回す。彼はその形相に反ししばらくの間、沈黙に怯えていたが、まぁいつもこうかと、またお決まりの言葉で再開する。
「アイムマイコー。リピートアフタミー、マイコー」
「まいけるー」
もはや気にせず進めるしかない。ほら、もしかしたら最後の授業でちゃんと「マイコー」と呼んでくれて感動……とか、あ、あるか? いや、ないだろうな。
そんな日常が今日も展開される中、成木は一つの大問題を抱えていた。
「ふがっ!」
そう、この男、授業が始まってもなお熟睡し、やっと今起きたのだ。よって、まだ英語の用意をしていない。もちろん、面倒くさいので手を上げて取りに行くなど考えていない。
成木は、『マイケルは、表面上優しいが、通知表では鬼と化す。で有名で、点数は下げたくねぇしな』と言い訳を付け足す。
さてそんなわけで、成木の持ち物忘れを悟られないようにする世紀の心理戦が始まったのであった。
早速マイケルは攻撃を仕掛ける。マイケルの知らぬまに。
「エーット、ジャー、コノモンダイハ、ナルキ」
「はいっ!!」
まずは、大音量の返事でマイケルの鼓膜を破り、時間を稼ぐ。が、万策尽きた。何しろ成木はテロリストが入って来た時に一人でどう無双するかということばかり夢想していから。この無音に思念と少数の視線ばかりが漂う教室の空気を平良は敏感に察知し、成木の方へ答えの書かれた紙手裏剣を投げる。
突風! 廊下の方から吹いた、悪意に基づいた風神のような気流が無慈悲にも紙手裏剣の航路を曲げる。そうして人の意識を失い暴走幽霊車と成り果てたそれは、二、三回、空をループ挙動してマイケルのその……なにかとは言わないが、薄くなった頭頂部にしっかりと乗った。
「オーイ、ナルキー?」
マイケルは気づいていないようだ。
こうなったらあれしかない。そう成木は考え、平良の方にアイコンタクトで『プランB'だ』と告げる。これは二人が考えた対テロリスト用作戦である。もちろん、名前のかっこよさのみのネーミングのため、AとC以下は無い。ナチュラルBも無い。
成木は考える。どういうプランにしようかと。成木は思い付く。メタルドラゴンクラッシュによる超破壊力の重量打撃でマイケルの感覚器官という感覚器官を破壊して擬似的にザ・ワールドを起こして取り戻そうと。
平良は考える。どういうプランにしようかと。平良は思い付く。バウンドアタックによるパワーの蓄積と、空気を切り裂くことによる圧倒的機動力で、しっぷうダッシュのようにして、誰にも気づかれぬことなく取り戻そうと。
二人は考える。どういうプランにしたのだろうかと。二人は思う。相手はまだ思い付いていないだろうと。
いざ、尋常に!
「「ヴロァンルギキヌリスー!!」」
失敗!
意を決した平良が、成木に答えを耳打ちした。
「はい。答えは、『私です』」
「チガイマス」
成木の隣の席の、
「あれ成木、英語の準備してねぇじゃん」
その発言に、マイケルは眼を光らせ、高揚する。
「うっしゃおらぁ通知表下げれるぅ! 気持ちぃー!」
新井は眼を丸くする。くりくりおめめだ。
「え、マイケル今、日本語……」
「シャベッテマセン」
「いや、喋ってた……」
「シャベッテネェッツッテンダロ、オクバガタガタイワセタロカ」
「ひぃ」
英語リスニングが、万年零点である新井が全て聞き取れているということは、つまりそう言うことである。
だんだんと、どこからかクスクスと笑い声が上がってきた。
「ナニワロテンネン、アアン?」
怒鳴って、頭が揺れた拍子に、頭頂部に乗ったままになっていた紙手裏剣が、マイケルの鼻に引っ掛かった。
皆の笑い声で、マイケルの鼓膜はもう再生し得ない程破れた!
以上、ギャグパートであった。
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