2.俺、ロドム・ジニアス
俺、ロドム・ジニアスには魔獣を狩るスキルがない。
びっくりするくらい戦闘系スキルが生えなかった。
いえ、ちょっとは生えましたが、我ジニアスぞ!と名乗れるヤツはひとつもない。
しかも驚くほどきょうだいに、両親に似ていない。
敢えて似てると言えば、体躯、というか高身長くらいだ。
それ以外があまりにもにていないから俺は時々「俺ってば橋の下で拾われた子なんじゃねー」と冗談で言う。
その度に、おもに怖い顔をして「お前はあたしの曽爺さん似なんだよ」と母に怒られる。
そして家族全員、素敵なお婿さんの魔法騎士も仲間になって怒ってくる。
実はそうやって自分を安心させているので、家族は分かってて付き合ってくれるのだ。
我が家はみんなそこそこ美形だ。
なんというか野性的な美しさってのを持っている。
自然界における強者が美しく見えるような感じだ。
ジニアスの血が流れてない母は知的で妖しい、そしてやっぱり強いって感じる美魔女だ。
両親が並ぶと俺達きょうだいは「魔王と妃がイチャついてる」と茶化す。
それを両親は照れながらやめろよーって言ってくるけど、万年熱々夫婦はいつも嬉しそうによりそってる。
そして家族は皆親戚含め、笑い方も言葉運びも、好みも、何かと似ている。
ジニアスの血族だなあ、と感じる部分が沢山ある。
そんな中で俺だけのほほーんとした面構えだ。
家族と並ぶと本当に血族なのか疑わしいほど、似ていない。
色合いは同じだ。
茶色の髪に濃い緑の目。
だけど、仕草も思考も様相もなんもかんも、誰とも似ていない。
そしてスキルツリーすら、真反対。
幼い頃、兄たちが魔獣狩りごっごだーと棒切れ振り回してるのを横目に、俺はゲーム画面に、魔獣辞典に集中していた。
雨の日でも家の中で兄と妹が暴れているのを尻目に、映画を見て、宝物の魔獣カードを眺めていた。
きょうだい仲は悪くない、除け者とかそういうのじゃない。
俺もきょうだいは好きだ、けれどしたいことが違うのだ。
興味の方向性が、違うのだ。
そうなると俺って似てないよなあ。
不安、ってなるだろ?
それで一回本当に不信になってガチのトーンで両親に聞いたら、大泣きしながら抱き締められた。
上の兄ふたりは俺が生まれた日のことを詳細に説明してくれた。
妹はよく分かってない様子だったが、俺が苦しんでいることだけは分かったようで「ロドムお兄様はマリのお兄様!」と泣きながら俺にお兄様お兄様って抱き付いてくれた。
大事にされてる、好かれてる。
それは俺にすごく伝わった。
けれど不安は拭えなかった。
やっぱ似てないから。
スキルツリーが、違いすぎるから。
そんな俺の不安を払拭させる為、後日俺は母の実家に連れてかれた。
そして自分とそっくりの少年が微笑むアルバムを見せてもらった。
本当にそっくりだった。
同じ位の子供が成長していくアルバムを捲り、最期見覚えのある老紳士と目が合った。
その人は母の祖父、俺からすると曾祖父『グェンド・フェザーヴ』だった。
元美魔女で今も綺麗な祖母は「ロドムちゃんは生まれた時からひぃおじいちゃんにそっくりでね…だからお名前も、お父さんのムドウさんとお母さんのローズ、そしてひぃおじいちゃんのグェンドから一文字ずつとってつけられたのよ」と俺に曾祖父のことを教えてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。