2. メイドさんといつもの朝

2. メイドさんといつもの朝




 私はいつも通り起床して、髪をとかし、メイド服のリボンをしっかりと結んだ。そして鏡の前で一回転し、身だしなみに問題がないかチェックする。


「うん!今日も完璧!お仕事頑張らないと」


 そして部屋を出て大広間に向かう。そこではメイド長のメリッサさんからの朝礼、仕事内容の伝達があるから。これはいつも通りの朝。


「おはよう!みんな集まって!」


 ちょうどタイミングよくメリッサさんの朝礼が始まるところね。私はここ半年ずっとあることをしている。それは朝礼の時にある使用人の男の子の隣に行くことだ。その子は少し変わった子。


 そうだなぁ……一言で言うと『不思議で面白い』かな。


 そんなことを考えているといつものように視線を感じる。また私のこと見てる。しかも胸を凝視しながら。きっと彼は『大きな胸』が好きなんだろうな。まあ、悪い気はしないけど。でもあんまり見ないで欲しいな。恥ずかしいし……。


 私が気付いていることに彼は気付いていないんだろうな。本当に不思議だ。


「では今日の業務連絡をします」


 いけないいけない。今はメリッサさんの話を聞かないと。そう思い私は彼の隣に立ちながらメリッサさんの話を聞く。


 今日は彼とほとんど同じ仕事だった。また面白いことが起こりそうで少し嬉しくなる。


 でも、きっと彼は話を聞いていないと思う。いつものことだから。私はふと視線をカイル君に向け微笑む。するとすごく嬉しそうにしている。やっぱり不思議、いつも同じ反応をしている。それに話を聞いていないからいつものように……


「カイル=オーランド。聞いてますか?」


「はい?聞いてませんでしたメリッサさん!」


「あなたは何をしてるんですか?」


「今、癒されてました!」


「……私はイライラしました。カイル=オーランド、あなたは朝食係のあと2階の部屋の掃除と庭の整備です。次は聞いておきなさい。では各自持ち場についてください」


 ほら怒られた。怒られると分かっていて、いつも私を見てる。きっと彼は胸が大きいのが好きなんだろうな……たぶん。分からないけど。でも癒しだなんて少し恥ずかしいかも。


 そのあと、私はメイドとしての仕事をテキパキこなしていく。その途中に何度かカイル君が視界に入る。その度に私はクスッと笑う。だって彼が一生懸命頑張ってるんだもん。


「よしっ!今日もいい感じに仕上がったぞ!完璧だぜ!」


 本当に不思議だ。だってサラダの野菜を洗っただけなのに、あんなに自分が朝食を作ったかのようにしているし。なんかちょっと可愛い。


「カイル君。これ運んでくれるかな?」


「マリアさん!?」


 驚きかたも面白い。さっきまで自分の作業に没頭していたはずなのに急に声をかけられてびっくりしたのかな。でも私が話しかけるとすぐに笑顔になってくれた。


「どうしたの?そんなにビックリして……」


「い、いえ別になんでもありませんよ!すぐに運びます!」


 カイル君はそう言って料理を載せたトレイを持って、テーブルまで運ぼうとしている。そんなに一度に持たなくても……本当に面白い


「ふふっ今日もカイル君は元気だね?私は元気いっぱいのカイル君好きだよ」


「え?」


 あれ?変なこと言ったかな?不思議で面白くて好き。カイル君の顔が真っ赤になっている。熱でもあるのかな?


「まっまぁ!元気だけが取り柄ですからね!それじゃ運びますね!」


 彼は私を癒しと言っていた。でもね、私の方こそカイル君のことを見ていると癒されるよ、そう……まるで新種の生物を見ているみたいな気持ちになるから。


「カイル君」


「はい!」


「食堂はそっちじゃないよ?」


「あ。」


「ふふっ」


 うん。やっぱり面白いな。私はカイル君のいるこの屋敷で働けて良かったよ。これからも飽きないだろうしね。

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