第65話 デビュー
いつもより早めに学校に着いた拓真は、下駄箱の前であくびをしながら上履きに履き替えていた。
「おはよ、拓真」
「おう、
「眠そうだな」
「昨日の夜ゲームやりすぎた」
「好きだねー」
「俺の体は9割がゲームでできてるからな」
「じゃあ残りの1割は?」
「バナナ」
「まだ半分寝てるだろ」
颯人は拓真の両頬を軽くペチペチ叩いた。
「なんだよ」
「目覚めたか?」
「最初から覚めてる」
「嘘つけ」
2人は話しながら3階にある教室へと向かった。
「突然だけどさ、実は縁なしメガネにしようか迷ってるんだよな」
「
「そうそう」
「へー」
「似合うと思う?」
「さぁ?」
「そこは嘘でも似合うって言ってくれよー」
「じゃあ似合う」
「嘘じゃん」
「似合うかどうかは見てみないと分からないし」
「まぁな」
「迷ってるなら変えてみれば?」
「うーん……別に今すぐじゃなくてもいいんだよなー」
「じゃあ中学に行く時に変えたら?」
「あー、それはいいかも」
「解決だな」
拓真の案で解決したように思えたが、颯人の表情が突然険しくなった。
「待て。もし中学行って変わったら中学デビューじゃん」
「デビュー?」
「今まではこうだったのに中学で突然変わったな、みたいなやつだよ」
「あー」
「うわー、いい案だと思ったけどこれもダメかー」
颯人は再び悩み始めたが、それを見た拓真はデビューに対しての考えを口にする。
「○○デビューってさ、変わりたいって思った人が変わることだろ? それって気持ちを行動に移すことができた結果だし、かっこいいと思うけど」
「そういう考え方もあんのか……」
「まぁ悪いほうに変わってなければの話だけどね」
「それって似合う似合わないの話?」
「違うよ。人に迷惑をかけるような悪い人間に変わること」
「あー、なるほどな」
颯人は気持ちが変わりかけていたが、まだ気になることがあるらしい。
「でもさ、いいほうに変わっても中学デビューじゃんって言われるのは避けられないと思うけど」
「そんなの言われたって気にするなよ」
「うーん……」
「変わりたくて変わったのにあまり気にすると自分を否定しかねない。だからそういう発言はスルーしとけばいい」
「……そうだな!」
2人は教室に着いた。
早く着きすぎたのか、まだ誰もいない。
閑散とした教室には、外から光が入っている。
その光を見て、颯人の表情はスッキリと晴れた。
拓真はというと、2つの光を見てこう言った。
「おはよう」
もう半分が起きたのか。
そう思った颯人は、笑顔で「おはよう」と言った。
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