第13話

 アリアナは地面に降ろしてもらうよう頼んだ。そうじゃった、そうじゃった、と言って優しく地面に戻すと蔓を体から外してもらった。


『まぁそうか、人との暮らしはなにかとめんどいと聞くのぉ』

 アルディから人との暮らしの何かを聞いていたのか木の顔面の眉間にしわを寄せて口をへの字口にしている。

 話に共感してくれる友を見つけて嬉しくなったのかアリアナは口が軽くなった。


「全くです。聞いてくださいよ。私、別に望んで王子にアピールしてたんじゃないんですよ。お父様も喜んでいたし、キラキラのイケメンが優しくしてくれて、そんな事されたら普通好きになりますよね?周りの上級貴族のお姉さま方もなんだか優しくしてくれてたからそんなもんかと思うでしょ?結婚するならイケメンがいいし」


『?よくわかんがなぜ、追放された?』

 いきなり王子やなんだと言われ大きな顔面が困っていた。


「えーっとなんだったかな。なんか魅了を使って貴族たちを騙して王子と結婚しようとしていた性悪女だったと思う」


『ほーほっほっほ、性悪女かいな。ほっほっほ』


「笑い事じゃないのよ。最高権力者に敵認定されたら終わりなんだから。…でもこれでよかったのかも、私に王妃なんて無理ゲーだったし父には申し訳ないけど。その父だって自業自得ですよね。王子だから近づくなって言ってくれればアピールもしなかったのだし、こんな事にならなかったんだわ」

 王都に残った家族はどうなっているのかはわからない。しかし王族に魅了を掛けたと疑われているとなると良くて貴族籍没収、没落となるだろう。

 下手したら処刑もあり得る。アリアナが追放なのだから家族がそこまでも罪には問われる事はないだろうとは思う。

 

 お父様は私の事、疫病神の娘だと思っているだろうな。と、せっかく事業を大きくしたのに台無しにさせてしまったのだ。アリアナはため息を吐く。


『そうか、まぁよくわからんが、好きなだけいるがいい』

「ありがとうございます。でも残っているものを遺族に確認しないまま勝手に使ってもいいのでしょうか?」

『遺族とはなんじゃ、アルディがお主に託したのだからお主が好きに使えばいいのだろうよ』

「いいのかなぁ…あのツリーハウスが現れた時、なにか魔法陣のような物が燃えたように見えたのですが、もしかしてなにか私で登録とかしていたのですか?」

 降れただけで、魔法陣が発動するなど聞いた事がないのだが確かに何かが燃えた。


『していただろうな。血だろうな。血には魔力も含まれているから万能じゃて。王に言って少し血を分けて貰ったのだと言っていたな。そういえば王妃候補が生まれてから頻繁に王都に出かけていたのぉ。王都に息子がいるとかも言っていたかな。孫だとかも連れてきていたな。夫が死んだので森に来たのだと言っていたな』

 ん~どんだけ権力者だったのだろうか、私の血を分けて貰ったって陛下に対してちょっと頼んだって感じだけど


「では遠慮なく使わせていただきます」

 アリアナのいい所は気後れしないところだろう。

『うむ、わしとしてもアルディが死んで寂しくしとった、賑やかになるのは悪くない。歓迎しよう』

「はい、お願いします。私はアリアナ・カビラ。アリアナよ」

『わしは「モジャ」という。アルディが勝手に呼んでいた名じゃ、わしは気に入らんが…』


 葉がたくさん生い茂っていていて遠くから見るともじゃもじゃに見えるからかな、とアリアナは思って、ぷっと笑ってしまった。

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