第30話 『ルゥナ』②

「くらえ!!」


 その言葉と共に巨大な槍が私めがけて飛んできた。


「舐めるな!」


 私も対抗すべく、全身に炎を纏わせ迎え撃つ。


 激しい轟音と衝撃が辺りを襲う。


 ぶつかり合った力は拮抗していた。


 だが、徐々に押され始める。


 このままでは負けると悟った私は力をさらに込めて押し返そうとする。


 しかし...「甘いわよ! そんなんじゃアタシには勝てないよ! アタシはアンタ達とは格が違うんだから!」


 そう言うと、彼女の身体が輝きだす。


「これで終わりにしてあげる! 食らいなさい! これがアタシの真骨頂!『ライトニングボルト』!!!」


 その瞬間、私の身体を電流が貫いた。


「がああぁあぁあ!!!!」


 あまりの威力に意識が飛びそうになる。


 だが、必死に堪えて立ち続ける。


「ほお〜! まだ立てるなんて凄いじゃん!なら、これはどうかしら?」


 そう言うと、今度は無数の雷撃が降り注いでくる。


「うがあぁぁぁぁ!!!」


 絶え間なく続く電撃の嵐に遂に耐えきれず膝をつく。


「はぁ...はぁ...」


「これで分かったでしょ? アンタじゃアタシに勝つことは出来ないのよ」


「...、言いたい事はそれだけか?」


 私はそう言うと、立ち上がりながら言った。


「強がっちゃって、もう諦めたら? まあ、これから死ぬ奴にそんな事言っても意味無いんだけどね」


「そんな事言ってさ、私の目的が達成された事にも気がついてないだろ?」


「え? どういうこと? 何を言ってるの?」


「お前は、私が何の為に戦ったと思っているんだ? 私が今までお前と戦っていたのはお前を倒す為じゃないんだよ」


「はぁ? 何訳の分からない事を言っているのよ! アンタが戦っていた理由はアタシに殺されるためでしょ!?」


「違うね。私はツカサにノエルを逃す時間を稼がせていたのさ!」


「は? 一体何の話をしているのよ」


「もう遅い! 今頃、あいつらはこのビルから出ているはずだ!」


「...まさか! あんたの目的は最初からあの2人逃す事だったの!?」


「そうだ! これでようやく思いっきり戦える!」


 私は拳を握りしめ構えをとる。


「くそっ! でも、残念だけど、ここから逃げる前にあんたはここで死ぬのよ!」


 彼女は再び詠唱を始める。


「我の名は『ルゥナ』。我が身に宿りし力を解き放ち敵を殲滅せよ! サンダーボルテクス!!」


 私めがけて、雷の槍が飛んでくる。


 だが、私はそれを難無く避ける。


「くそっ! なんで当たらないのよ!」


「無駄だよ。もう手加減してあげる必要も無くなったからね。わざと技をくらってオーバーリアクションをとる必要もないってわけ」


「ふ、ふざけんなー! アタシは最初っから本気でやってたわよ!」


「はいはい。じゃあ、今度はこっちからいくぞ! 覚悟しろよ!『フェニックスドライブ』!」


 私はそう叫ぶと、彼女の目の前まで一瞬で移動する。


「ぐあっ!」


 そして、そのまま彼女に強烈な蹴りを食らわせる。


 彼女は大きく吹き飛ばされ、壁に激突する。


「ぐぅ、こ...こんなもん効くわけないでしょ!」


「だろうな。だから、今の攻撃はあくまでただの目眩ましだ。本命は次からだ!」


「...えっ?」


 私は両手に炎を集めそれを一気に放出した。


「な...なんだこれ?...あついっ!熱いよぉ!」


「どうだ? 私の技は? 全身が燃え尽きるまで熱くてたまらないだろ?」


「な、なによこの力...さっきまでのあんたと全然違...」


「おいおい、勘違いしないでくれよ。別に私は弱くなってなんかいない。むしろ、今の私はさっきよりも強いくらいだぜ?」


 私は、先程とは比べ物にならない程の炎をその手に集めて言っ。お願い、助けて!」


 彼女は泣きそうな顔をしながら懇願してくる。


「悪いけど、それは出来ない相談だ。なぜなら、お前が弱いままなら私は殺す気は無かったんだ。だが、お前は私の大事な友達を傷付けた! 許さない!絶対に許せない!!」


 そう言うと、私は一気に彼女に接近して、その手で彼女を殴り飛ばした。


「きゃあぁあ!!」


 そう叫んで彼女は気絶しながら燃え尽きた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る