第25話 『マッドマン』③

 しばらく劣勢の戦いが続くと、彼は不思議そうな表情で私の事を見てきた。


「...どうしてそこまでして戦うんだ? お前がいくら頑張ったところで所詮は女、俺たちにはかなわないぞ?」


「別にあなた達に勝つ必要なんてないのよ。ノエルを助けられればそれでいい」


「なるほどな。だがそれは不可能だ。お前が何をしようとあいつは助けられない」


「それはどうかな? あなた達は知らないでしょう? 私たちの元いた組織を」


「お前達のいた組織だと?」


「えぇ、僕たちはビッグスター社、そこの組織の元最高幹部の一人よ」


「なんだと!? そんなはずはない! そんな奴らがあんな簡単に捕まるわけがない!!」


 動揺する『マッドマン』を見てニヤリと笑う私。


「まぁ、証拠があるわけじゃないんだけどね。ただ、僕はあなた達みたいな『カオスチャイルド』の最高幹部クラスを倒せるくらいには強いのよ?」


「なるほど、つまり貴様は7人存在していた『コア・チルドレン』の1人だと言いたいわけか」


「そういうこと」


「ならば強さを証明してみろ」


『マッドマン』はそう言うと両手を地面につける。


 すると地面から無数の槍が伸びてきて、私の体を貫く!


「きゃあああ」


 私は悲鳴を上げ、その場に倒れる。


「これで分かっただろう? 貴様に勝ち目などないということが」


「まだ...、終わっていない」


 私は立ち上がる。


「ほう、なかなかしぶといじゃないか」


「当然でしょ? 私はノエルを助けるまでは死ねないんだから」


「その執念だけは認めよう。だが、その願いは叶わない」


「それはどうかしら?」


 私が不敵に微笑むと、背後から爆発音が聞こえてくる。


「何事だ!?」


「どうやら、間に合ったみたいね」


「何!?」


 奴が爆発した方を見ると、雑魚どもを殲滅し、ノエルを肩に担ぐレイカの姿があった。


「お待たせ、レイカ」


「遅いよ。待ちくたびれた」


「これでも急いだんだけど」


「でもありがとう。助かったよ」


「どういたしまして」


「ちっ、仲間がいたのか。面倒なことになってきたぜ」


『マッドマン』は私達を警戒したのか距離を取る。


「お前は一体なんなんだ?」


「私はただの喫茶店のマスターだよ。それ以上でも以下でもない」


「ふざけているのか? お前からはただの人間とは思えない力を感じるぞ?」


「そう? 気のせいだと思うけど」


「...そうか、ならもう用はない。貴様らはここで消えろ」


『マッドマン』はそう言って両手を広げる。


 すると私とレイカの周りに黒い壁のようなものが出現する。


「これは...?」


「この空間内でお前たち二人を殺す。そしてその後にゆっくりあのガキも始末すればいい」


「なるほど、そうはさせない」


「どうするつもりだ?」


「こうするのよ!」


 私は水で自分の体を覆い、水圧を上げる。


そしてそのまま『マッドマン』に向かって突っ込むのだった。

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