第4幕 あなたと越えたいマッチョ越え
翌日早朝。
いつものように、番長と愉快な仲間たち、別名マジカル☆ドリーマーズのみなさんが
それもそのはず、五人の中央にいるのは美しい黒髪ボブに黒縁メガネをかけた、いかにも見た目は超優等生、実際の中身も超優等生(本当の姿はヒ・ミ・ツ)の
そんな城ヶ崎悠花の両サイドにいるのが、外国からの美人転校生姉妹、夢野
三人ともトップモデルと言ってもいいくらいの美人で、道ゆく人々は目をハートにしながら振り返るのだ。
そんな美女三人の後ろからついてくるのが、金髪オールバックの強面マッチョ、
そんなマッチョの隣には、眼鏡をかけたおかっぱマッチョ、
そんなふうにして、美女三人の後ろに怖い筋肉お化けが二体、歩いてくるものだから、初め美女目当てで近づいてくる人々が後ろの怖マッチョに恐れをなして、道を開けていくのだ。
しかし今朝だけは様子が違った。五人の目の前に、一人のマッチョが上半身裸で、仁王立ちで立ちふさがったのだった。
「やあ、夢野李紗に夢野真弥!」
その声の主は
「この容姿端麗筋肉増量品行方正なこの僕が、二人を彼女にしてあげよう。どうだい、後ろにいる番長よりも筋肉がついただろう?」
と、仁王立ちから、自信たっぷりにモストマスキュラーのポーズへと移行する。
「……だれ?」
悠花が左右(李紗と真弥の方)を見て、尋ねる。
「えっと、昨日お話しをした……きみまろさんですかね? その割には体が大きく見えますが……」と真弥が答える。
「……なんなの、あの筋肉」と李紗が呆れ顔で見つめていた。
「ヌハハハハ! 言っていたじゃないか、番長に比べて体が細いって! それはつまり『番長よりもムキムキになったら僕の彼女になってくれる』っていうことだろう?」
ヌン! と両腕のちからこぶを強調して、胸筋をピクピク震わせて、仲麻呂が笑顔を見せる。ええ、そんなこと言ったの? 李紗! という顔をする悠花に、李紗は無言で首を横に振る。
女の子三人の後ろにいる蝶介と秀雄は、目の前に突如現れたマッチョを見つめながら「あの筋肉は……すごいな」「ええ、相当な努力をしたのかもしれませんね」と、仲麻呂の筋肉に感心しきっていた。同じトレーニー仲間として、決して相手の筋肉を批判したりはしないのである。そこに至るまでの過程を想像し、その努力を称えるのである。二人はもちろん、仲麻呂が松千代神社の力を借りてマッチョになったことは知らない。
「さあ、さあ! 夢野李紗に夢野真弥! 番長よりも筋肉があるだろう! 細くないだろう?」
自信たっぷりにこれでもかと筋肉を見せつけてくる綾小路仲麻呂に向かって、李紗と真弥がはあ、と息を一つ吐いてから言った。
「あのね、細いとは確かに言ったわよ!」
「でも、今のきみまろ様はムキムキすぎて、気持ち悪いですわ!」
「何事にも限度ってもんがあるでしょ! やりすぎよ、やりすぎ!」
その言葉にピタリと仲麻呂の動きが止まる。天使のような二人の美女を見る彼の目が、大きく開かれた。
「き……気持ち悪いだって? だって、筋肉が、筋肉が大きくなったんだぞ! 僕の彼女になってくれるんじゃ?」
「ならないわよ!」
「なりませんわ!」
はあ? 一体誰のためにこんなにムキムキになったと思ってるんだ! 代々伝わる「
綾小路仲麻呂の心の中が怒りに震えるとき、同時に彼の奥底からどす黒い感情が湧き起こってきた。先日の
私の鍛え抜かれたこの筋肉を気持ち悪いというのは……どこのどいつじゃあ! この
なんと松千代成蔵の魂が綾小路仲麻呂の中で復活し、黒い怨念となった。
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