第8幕 倒してからがヤバかった! マザープロテインの暴走!

 マジカル・バタフライの普通のパンチで、ラスボスであるヒーヨワーはいとも簡単にやられてしまった。


「え、終わり?」


 マジカル☆ドリーマーズたちも拍子抜けした感じで、ただただ一連の流れを見つめていた。すると……倒れているヒーヨワーの右手から、マザープロテイン(宝石)がコロンと転がり出てきた。


 ぷっちょ君が「あれは!」とマザープロテイン(宝石)に気づき、駆け寄ろうとする。


「ちょっとマッチョ! じゃなかった、待って!」


 マジカル・エターナルが大きな声でぷっちょ君の動きを制した。突然の大声にぷっちょ君はびくっと体を震わせて立ち止まる。


「ど、どうしたの?」


 ぷっちょ君がそう言ってマジカル・エターナルの方を見ると、彼女は真面目な顔でマザープロテイン(何度も言うが、宝石)を見つめていた。

「あの宝石……危ないです!」



 パキン!



 そう言うや否や、マザープロテイン(いい加減わかってほしい。宝石である)にヒビが入った。これまで光り輝く乳白色をしていたマザープ(以下略、宝石のこと)が黒く変色した。それが厄災の始まりだったのだ。


 あっという間に空に雲が立ち込め、大雨が降り始めた。そして、まるで台風のように真っ黒な雲は渦を巻いて強風が吹き荒れた。

 窓ガラスは全て割れ、風が部屋の中にも吹き込んでくる。その風は世界中の生きとし生けるものからプロテインを奪い、宝石の中へと吸い込んでいく。


 これはなんと、マッキンだけでなく、異世界扱いの人間界や魔法界、現時点で侵略されていない天空王国や海底王国(本編第10話エンディング参照)にまで及んでいたのだ。


 プロテインを奪われた生物が、次々とガリガリーズへと姿を変えていく。それでもマザープロテインの暴走はおさまらず、すさまじい風とともにその小さい宝石の中へプロテインが吸収されていくのだった。



 都合よく、六人はマジカル・オーシャンが作り出したバリアのおかげで被害はなかったが、ヒーヨワーを倒したことによって明らかに状況が悪くなってしまったことだけはわかったのだった。



「どういうことでしょう……?」真弥がバリア越しに周囲の様子を見ながら言った。


「ヒーヨワーがマザープロテインを魔改造した反動が今になって現れたんだ! 彼がいなくなったことにより、プロテインが暴走を始めたのよんだ!」

 マジカル・オーシャンが本当かどうか分からないが、なんだか納得できそうな理由をつけて説明する。


「ど、どうすればいいのよ!」李紗が慌てるが、どうすることもできなかった。


 

たちの魔力をぶつければ、暴走を止められるのではないかしらんじゃねぇのか?」


 ヒーヨワーを倒し、マザープロテインの暴走を引き起こした張本人、マジカル・バタフライがそう提案した。それにマジカル・エターナルが両手を合わせて賛成する。「そうね、負のエネルギーに対して私たちの正のエネルギーをぶつければ……もしかしたら!」


 ――ボクたちの魔力って正のエネルギーなの? マジカル・オーシャンと真弥は冷静にそうツッコもうと思ったが、二人で顔を見合わせて「ま、いっか」とうなづいた。


「じゃあ、バリアを解くよ! そしたらすぐに最大出力であの宝石に魔法を!」


「うん!」マジカル・オーシャンの声にみんながうなづく。魔法が使えないぷっちょ君は少し心配そうな顔をしていたが、それを察したマジカル・バタフライがぷっちょ君にバリアの魔法をかけてあげた。


「……! ありがとう、蝶介!」

「心配しないですんな! マザープロテインはたちが元に戻してみせる!(半分、ヒーヨワーをぶっ倒した自分のせいでもあるから)」


 ニコッとマジカル・バタフライは笑い、親指を立てた。



「バリア解除まで、3、2、1、いくよっ!」

 六人を包んでいたバリアが解除される。


「うっ!」


 突如、空から物凄い力がマジカル☆ドリーマーズに襲いかかる。まるで超強力な掃除機で上から吸われているような、体の中の生気を全て持っていかれるような感覚だった。


「みんな、耐えるのよんだ! そして魔力をぶつけて!」


 魔力をぶつけて、といったものの、五人とも自分の体を吸収されないように踏ん張るので精一杯だった。普通の人間ならプロテインを奪われて、即、ガリガリーズになるところだったが、彼女らは自分たちの持つ強力な魔力によってなんとか耐えているのだった。


「やばいわね、打つ手無しよ……」


 李紗が魔力を放出しながら打開策を考えるが、思いつかない。真弥もマジカル・オーシャンもまた、同様であった。


 しかし、ぷっちょ君だけは黒く変色してしまったマザープロテインの中に、少しだけ残る光り輝く部分がはっきりと見えていたのだった。

 そしてそれが、マザープロテインの暴走を止める最大のヒントなのである。

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