第6話 お野菜を洗うアリスちゃん

 


「ん〜良く寝たぁ♪」

「ままぁ.......すぅ.......すぅ」


 あらあら、私のお腹の上でアリスちゃんがスヤスヤと寝ていますね。左右を見ればフェンちゃんやサラちゃんもまだ寝ています。少し寝るつもりが、みんなガッツリと寝てしまいました。


「もう夕方かぁ.......ふぅああぁぁ.......んんっ」


 私は寝ているアリスちゃんを起こさない様にそっと上半身を起こしました。


「アリスちゃん。ママの上じゃなくて、ベッドでお寝んねしましょうね〜」

「んんっ.......やっ.......」

「ぐはっ.......!?」


 アリスちゃんが私の身体にしがみついており、全く離れる気配がありません! 私の胸に顔を埋めてスヤスヤと爆睡しています。これは私もまだ寝てろという事でしょうか?


「嬉しいけど、ちょっと困っちゃうな。あ、そうだ」


 アリスちゃんには悪いですが、私はアリスちゃんを自分の身体から引き離してフェンちゃんのお腹の上に乗せてあげました。寝惚けているアリスちゃんがめっちゃ可愛いです♡


「えへへ.......もふもふ」

「よいしょっと、先にアリスちゃんの離乳食でも作ろうかな」


 まだまだやる事が沢山あります。時間がある時に部屋にある家具や物を少し片付けたいと思います。アリスちゃんが転んだ時に、万が一に机の角や尖った物に頭やお顔をぶつけたら一大事ですからね。机は丸みを帯びた形状にして、角が立ってる所は全て面取りして丸くしよう。


「うぅっ.......ままぁ.......ぐすんっ」

「あらあら! アリスちゃん起きちゃったの?」

「ふぅえええええぇぇんんんん.......!!」

「よしよし♪ ママが抱っこしてあげるから泣かないで♪」


 アリスちゃんの鳴き声でフェンちゃんやサラちゃんも目を覚ましてしまいました。


「うふふ.......アリスちゃんは甘えん坊さんでちゅね〜♪」

「ぐすんっ.......ままぁ」

「よしよし〜しょうがない子でちゅね〜♡」


 これはあれを付けるしかありません。秘密兵器.......抱っこ紐です! これを付ければ両手で抱っこしなくてもアリスちゃんをあやす事が出来ますし♪


「ん〜主ぃ、おはよう」

「俺とした事が.......だいぶ寝ちまったな」

「2人ともおはよう♪」


 全員起きたので、一緒にご飯の支度をしようと思います。アリスちゃんは私の背中に抱っこ紐を付けて、固定しておきましょう。ここまでママっ子になってくると将来独り立ち出来るか少し心配ですね。


「ままぁ、なにしゅるの?」

「今からご飯を作りますよ〜アリスちゃんは離乳食だよ♪」

「ありすもおてつだいしゅる!」

「おお、でも刃物や火を使うのは危ないし.......」


 せっかくアリスちゃんがお手伝いしようとしてくれてるのだから、無下には出来ないわね。そうだ! アリスちゃんにお野菜を洗って貰いましょう! それなら安全です!


「アリスちゃん、これお野菜って言うんだけどこれを洗ってくれるかな?」

「おやちゃい? ままぁ! まかちて!」

「おおぉ♡ アリスちゃんお手伝いしてくれるなんて、良い子でちゅね〜♡」

「えっへん!」


 幼女が胸をえっへんとしてる姿がとても愛らしいです♡ うちの子は世界一可愛いわね♪ 


「フェンちゃん、サラちゃん。アリスちゃんの事しっかり見ててよ? 野菜洗うだけだから大丈夫かもしれないけど」

「お嬢様の事は任せて下さい。むしろ心配なのは、僕達の方だよ。念の為エリクサーいつも持ち歩いては居るけどさ」

「伝説の薬をポーション感覚で使うのもどうかと思うけど、まあ仕方ないわよね」


 では早速アリスちゃんには、お野菜を洗ってもらいましょう。


「ままぁ、これなぁ〜に?」

「あ、このお野菜はね、ジャガイーモ、マカドニアレタス、ハルクニンジンと言うのよ♪」


 まだアリスちゃんには分からないかもしれませんね。最近色々な言葉を覚えては来ましたが、多分意味がまだ理解出来てないと思います。


「んぅ.......ゴシゴシしゅる!」

「あ、あのお嬢.......それは俺の尻尾.......」

「あい!」


 アリスちゃん.......天才か.......そうか、サラマンダーのサラちゃんの尻尾には、ああ言う使い道があったのね。


「サラちゃん、せっかく私の娘がやる気を出して居るんだから、大人しくたわしになりなさい」

「主! 待ってくれ、お野菜と言うのは手で洗うものでは無いのか!? 俺は水に弱いんだ!」

「大丈夫よ、エリクサーまだあるでしょ?」

「全然大丈夫じゃなあああぃぃぃい! 冷たっ.......!」


 あぁ、サラちゃんが暴れるからお水が周りに飛び散ってしまったわ。布で早く拭き取らなければ.......


「さらねーたん、おとなしくちてて!」

「お嬢.......あ、はい」

「あ、おみずこぼしちゃった.......」


 何と!? アリスちゃん、今度はフェンちゃんの尻尾を使って床を拭くとは.......確かにフェンリルの尻尾は、キメ細かくてもふもふとしている。アリスちゃんは、将来有望なビースト・テイマーになれるかもしれないわね。その年齢で、サラマンダーやフェンリルを掃除道具に使うとは.......アリスちゃん.......恐ろしい子。


「お嬢様.......僕の尻尾は床を拭くための物ではありませんよ。こちらの布を使って下さい」

「ふぇ? ふぇんねーたん、これなぁに?」


 んんんっ.......!? 何か見覚えのある布だと思ったら、あれ私のぱ.......ぱんつじゃない!? しかも、金貨10枚もしたマーカス商会の特注品! 私の勝負下着です!


「これはパンツの形をした雑巾です。お嬢様、これで床の水を綺麗に拭き取りましょう」

「ふぇ.......しょうなんだ!」


 アリスちゃん、違う。それは私のおパンティ! フェンちゃん.......一体どう言う風の吹き回しかしら?


「主も道ずれです♡ てへぺろりんこ♪」

「フェンちゃん、おやつのビーフジャーキー抜きでも良いの?」

「な!? 主ぃ! それはズルいよ! あれは僕の生命線と言っても過言では無いのに!」


 ミレーナ達が台所で、ガヤガヤと言い争って居ると玄関の扉がドンドンと強く音を立てながら揺れる。何者かが叩いているようだ。ミレーナが玄関へと向かい扉を開けると.......


「もう、何ですか? そんなに強く叩いたらドアが壊れちゃうじゃないの!」

「ふふっ.......やっと見付けたぞ! 深淵の魔女!」

「えっと.......どちら様ですか?」

「え、俺の事を忘れたのか!? ほら、12年前.......オーバル平野で激戦の死闘を繰り広げた、魔王軍の四天王の一人、【天魔のグレイゴル】様だ!」


 あら、魔族の方でしたか。ん〜こんな頭に角の生えた魔族と会った事あったかな? しかも、オーバル平野? あれれ、でも強敵なら私も記憶には残ってる筈だし.......


「ここであったが100年目! あの時の屈辱を晴らしに来たぞ! 俺は.......今ここで! 尊厳の反旗をひるがえしてやろう! 再戦だ!」

「え、? うちはお寺ではありませんよ?」

「ちっが〜う!! 再戦だよ、再戦! 何で貴様に俺がお金を渡さないと行けないんだよ!」


 何だか頭のおかしい人が来てしまいました。しかし、この場所を突き止めてくるとは.......何処から情報が漏れたのでしょうか?


「ままぁ?」

「あら、アリスちゃんは来ちゃ駄目ですよ。頭のおかしい不審者が居るから」

「誰が頭のおかしい不審者だ! ふっ、まさかお前にも娘が居たとはな.......見せしめに、貴様の目の前で八つ裂きにしてくれるわ! 死ね!【⠀破滅の鉤爪カタストロフィ⠀】!!」


 こいつ! うちの娘に手を出したらどうなるか、その身体に教えてやるわ。


「貴方.......この私を怒らせてしまったようね.......」

「何っ!? 俺の奥義を片手で止めただと!?」

「貴方には、明日を生きる資格はありません.......死になさい」


 ミレーナの右手から悍ましい量の魔力が溢れ出ている。


「冥界へと続く深淵の道、開きなさい【 冥界の扉ヘヴンズ・ゲート 】」


 四天王のグレイゴルの背後に、悍ましい冥界の門が出現する。少しずつその禍々しい扉が開いて行き、中から無数の手や怨嗟の声に悲鳴等が聞こえる。


「なっ!? 深淵の魔女.......ミレーナ・フォーゲンベルク! 俺を倒したとしても、他の四天王がお前を襲いにくるだろう! それまで首を洗って待っているんだな!」

「はいはい、さよなら。アリスちゃん、あのおじさんお家へ帰るそうですよ?」

「おじたん、ばいばぁ〜い!」

「ちくしょおおおおお.......!!!!!」


 これにて一件落着です。魔王軍の四天王だなんて、世の中物騒ですね。早く勇者に魔王を倒して貰わないと。私はあいにく平和主義者なもんでね。


「主、今のは.......」

「ここでは何も起きなかった。良いわね?」

「お、おう.......」


 さて、ご飯を作って皆で食べましょう♪

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