箒に乗ってどこまでも
男が魔女に憧れると
“男らしくない”とされる
“男はロボットに憧れるものだ”と
そういうことになっている
ただ俺はあくまでも
“男の魔法使い”になりたいのであって
魔女は別に憧れてるだけ
あくまで“男”の魔法使い
“何が好きでもいいんだよ”
“男とか女とか関係ない”
“男らしく、じゃなく、自分らしく”
そのこと自体は確かにその通りだと思う
でも俺は
自分は男だと思ってるし、男でいたいと思ってるし、
“男らしい”と言われたら単純に嬉しい
別に“男らしくしたくない”と、そう思ってるわけじゃないのだ
何かがおかしい
“らしさ”が妙な使われ方をしている
痛みに耐えて“男らしい”と言われたら、素直に喜ぶ、が、
でもだからって“女は痛みに弱い”は偏見だし、
“だから女に危険な作業はさせない”は差別だし、
そして“だから男には危険な作業をさせる”は、とんでもない
“男らしさ、女らしさは意味がない”
“男でも女でも好きに生きるべきだ”
本当にそう、本当にそう思ってる
思ってるんだけど
“女”になりたい彼女がそう言われたら
やっぱり何かを思うのではないか
かといってパッと見“女”だとわかるなら
なら殊更に“女らしくする”のは不自然ではないか、とも
結局、強制されるのが苦痛、と、
ただそれだけの話かもしれない
しかし事はそう単純じゃない気がする
だって、それじゃ“他人らしく”しちゃいけないの
何かがおかしい
“らしさ”が妙な使われ方をしている
とにかく俺は
魔女に憧れてて、
ロボットには興味がなくて、
三角帽子を被って箒に跨る、
男の魔法使いになりたいんだ
ただそれだけの話なのに
それがおかしな話になってる
それもかなり大きな話に
そう世界の根幹を揺るがすような
何かがおかしい
“らしさ”が妙な使われ方をしている
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