第274話 鍛錬

(あ!またえものきた!)

(ちぬき!ちぬき!)


(のうぎょうたのしい!)

(さくもつい~っぱいそだつ~!)


(おそうじ!おそうじ!)

(ごしゅじんのしゅうのうくうかんにあるいらないの)

(ぜ~んぶおそうじ!)


(おせわ!)

(ますたーがかってるかちくのおせわ!)

(からだ、きれいきれいする~!)


リンの生活空間にある、リンの自宅。


いつの間にかスタトリンの第一領地よりも広大となったその庭で、生まれたばかりのリムとリラの兄弟達が、所狭しと動き回っては、リンの生産活動の支援を始めとする様々な作業に、とても楽しそうに取り組んでいる。


ここ最近では、ホムラ、スイ、フウ、ラクド、グリフが魔の森での魔物狩りを担当しており…

日にかなりの数の魔物を討伐しては、死体の収納の為に同行する、戦闘系冒険者として登録しているメイド達を驚かせている。


そのホムラ達が討伐した魔物の死体の血抜きに始まり…

広大すぎる程に広大なリンの自宅の庭にある畑での農作業、家畜として飼っている魔物の身体に寄生している悪虫の退治に汚れを食べて綺麗にするなどのお世話、リンの収納空間にある再生不可能なごみの処理などを、数百はいるスライム達が全て担当するようになってくれている。


「ふふふ…リムちゃんとリラちゃん、その兄弟になるスライムちゃん達のおかげで、このリン様が住まわれる神殿の庭の作業が、とても捗るようになりました」


今はリンの自宅に住み込みとなり、同時にリンの庭にある畑や木材調達用の森林、そして家畜のお世話に製薬の支援を担当しているアイリも…

リム達スライムがその数と能力を活かして、所狭しと働いてくれるのをとてもありがたく思い、喜んでいる。


特に討伐した魔物や、漁業で狩った獲物の血抜きが非常に早く行われるようになったおかげで、リンの【空間・解体】ですぐさま多くの解体ができるようになり、商会の商品開発部門が魔物素材を、調理部門や食品化工部門が魔物や魚などの食材をより早く取り扱うことができるようになった為…

魔物素材を使った魔導具などの開発、外に提供する食材の加工、レストランで提供する料理の準備がますます活性化するようになっている。


加えて、ジャスティン商会チェスター支店で開催される、超高額オークションでの出展品の確保もしやすくなった為、いつでもオークションに出すことができるようになっている。


もちろん、商会系列の孤児院預かりとなっている子供や、商会の従業員の子供の遊び相手にもなる予定であり…

すでにリムとリラが子供達ととても仲良しなので、その流れで分裂したばかりのスライム達も仲良くできると、誰もが思っている。


「ふふ…リムとリラが大量に分裂してくれたのが、本当に嬉しい誤算となりましたね。おかげでリン様の神殿の庭での作業はほぼスライム達に任せることができて、他の従魔達は他のことができるようになりました」


リンの従魔のまとめ役となり、従魔達の中でも最高戦力となるフェルも、リムとリラの大量分裂のおかげでリンの自宅の庭である作業をほぼスライム達に一任することができるようになったのをとても喜んでいる。


ナイト、ザード、メイジは主にリンの生活空間にある海での漁業。

ルノ、ロックは主にリンの神殿のすぐ裏にある鉱山での採掘作業。

ホムラ、スイ、フウ、ラクド、グリフは主に魔の森での魔物討伐。

ミラは主に商会の医療施設で患者の軽い怪我や不眠症の回復。

ヤイバは主にスタトリン周辺の森の至る所にある諜報部隊の偵察基地での索敵。

キヌは主に上質な絹の生成。

ミドリは主に商会従業員の居住地にある畑での農業支援。


と言う風に、以前よりもさらに明確に分担をすることができるようになったのだ。


フェルは農業支援、漁業支援、魔物討伐支援に加え、リンの自宅となる神殿の守護及び、従魔達の司令塔としてどっしりと構えている。


スタトリンとサンデル王国の守護神であり、神の宿り木商会の会頭でもある…

誰からも非常に重要な存在として認知され、心から崇拝されているリンは、今はこの神殿に半ば引きこもるような形で様々な業務や活動を行なっており、その最中で自身が生み出した人造人間ホムンクルスとなるコピーリンとの修行、生活空間のカスタマイズなども行なっている。


「(リン様はまさにこの世界に生きる神そのもの…そのリン様をお護りさせて頂けるのは、まさに栄誉そのもの…私はリン様の従僕として、この生活空間はもちろんスタトリンもしっかりと守護させて頂き、リン様の商会となる神の宿り木商会の業務が円滑になるようにしていかねば…)」


フェルも今となっては心の底からリンを慕い、正真正銘の神として崇めている。


だからこそ、リンの幸せと喜びの為、リンのみならずリンに関わる者全てが幸せになれるようにと取り組み、充実した日々を送っている。


その喜びを噛み締めつつ、フェルは今日もリンの為にその力をふるっていくのであった。




――――




「お、おおお……」

「こ、これは……」


場所は変わり、神の宿り木商会所属の防衛部隊の訓練場。


リンが作り上げた様々な魔導具が数多く設置されており、非常に実戦的な訓練を可能としている。




射的訓練の魔導具

・製作者:リン

・属性:無

・対象にしたい敵の身体の一部(体毛や血液でもOK)を吸収することで、その敵に擬態することができ、さらには急所となる部位に分かりやすく的を表示させることができる魔導具。

一度擬態したものには、以降は素材なしで擬態することができるようになっている。

攻撃を受けると反応(リアクション)を返すようになっており、攻撃を与えた部位、そして威力に伴って反応が異なって来る(致命傷に近づく程反応が大きくなる)。

自己再生能力を有しており、さらには魔力を吸収する性質を持っているので、物理と魔法両方の訓練に使用することが可能となっている。

魔導具自体がリンの魔力を吸収し、充填する機能を備えている為、魔力のない者でも使用可能となっている。

・使用MP:擬態時800、反応時1400、自己再生時2000

・防犯・盗難対策:神の宿り木商会の関係者にしか使用できず、一定期間未使用の場合は自動的にリンの収納空間に収納されるようになっている




擬態人形の魔導具

・製作者:リン

・属性:無

・対象にしたい敵の身体の一部(体毛や血液でもOK)を吸収することで、その敵に擬態することができ、さらには本物と全く同じ知能と行動パターンで戦闘をさせることができる魔導具。

一度擬態したものには、以降は素材なしで擬態することができるようになっている。

致命傷を与えることで行動を停止し、元の人形の状態に戻る。

自己再生能力を有しているので、物理と魔法両方の訓練に使用することが可能となっている。

魔導具自体がリンの魔力を吸収し、充填する機能を備えている為、魔力のない者でも使用可能となっている。

・使用MP:擬態時800、戦闘時毎秒100、自己再生時2000

 ※擬態人形が魔法を使った場合は、その分の魔力も追加で消費する

・防犯・盗難対策:神の宿り木商会の関係者にしか使用できず、一定期間未使用の場合は自動的にリンの収納空間に収納されるようになっている




このような、実際の魔物に擬態して的になる魔導具や、実際に動いて実戦形式の戦闘が可能な魔導具をリンが開発し、それらを増産しているので…

防衛部隊の面々は非常に質の高い訓練を行なうことができるようになっている。


訓練場の内壁は全て、リンの【空間・結界】による保護がされているので、どんなに激しい戦闘訓練を行なったとしても破壊されることはないようになっている。




「ぬうううううう!!!!!」

「さすがはヒドラ!!まさに脅威そのもの!!」

「だが、我らはリン様と商会をお護りする防衛部隊!!」

「たとえヒドラが相手であろうと、引くわけにはいかん!!」




商会の防衛部隊でも、トップクラスの実力を誇る幹部達がパーティを組んで、ヒドラに擬態させて擬態人形と戦闘訓練を行なっている。


その光景に、ここ最近から所属することとなった新人の隊員達は度肝を抜かれている。


もちろん、亜人も含め人族にとっては天災そのものと言える程の脅威度を誇るヒドラが相手である以上…

幹部達はろくに攻撃を通すこともできず、防戦一方の状態となってはいるものの…

それでも、決して致命傷を受けずにヒドラの爪や牙による物理攻撃、息災による範囲攻撃をどうにかいなしている。


リンが作ってくれた魔導具のおかげで、こうして天災クラスの脅威度を誇る魔物とも戦うことができるようになっているので、非常に効果的な戦闘訓練となっている。


特に上位の魔物と立て続けに戦い、激しい訓練に挑んでいる幹部達の実力はメキメキと伸びており…

今では、ビッグホーンブルやウォータイガー辺りなら単独でも討伐できる程の実力にまで到達することができている。


そんな幹部達の姿に、他の隊員達も大いに刺激を受けており…

幹部達程脅威度の高い魔物を相手にはできていないまでも、それでも今の自分より遥かに強い魔物を相手に訓練を重ねることができている。


各部隊の隊長クラスであれば、下位の魔物であれば複数にかかってこられても問題なく討伐することができるようになっており…

中位の魔物であっても、部隊の隊長クラスでパーティを組めば討伐は十分に可能な域にまで達してきている。


魔物に擬態した擬態人形は、攻撃や思考こそは本物の魔物と全く変わりないものの、相手の生命力を厳密に感知している為、決して命を奪うまでには至らないような、安全装置とも言うべき仕組みが備わっている。


その為、極めて実戦に近い戦闘訓練を、命を散らすことなく行えている。


加えて、商会の医療部門が極めて優秀なことと、世界樹の葉に世界樹の雫、そしてリンや製薬部門が日々生産する、極めて上質な回復薬や治療薬が…

商会全体で消費しても使い切れない程にリンの収納空間に収納されているので、死にさえしなければ極めて迅速に治療してもらえるし、もし死んでしまったとしても直後であれば、世界樹の葉やリンの【光】魔法で蘇生までできてしまうのだ。


それゆえに、怪我や死亡を恐れずこういった激しい戦闘訓練に取り組むことができるようになっている。


「よし!!当たるようになってきたわ!!」

「魔法自体は発動できるようになってるから、あと重要なのは命中率!!」

「私達魔法使いが、ちゃんと前衛をサポートしてあげられるようにならないと!!」


そして、商会に所属する魔法使いは、魔法の素質の開花、新しい魔法の習得、魔力制御の精度向上、詠唱破棄など、魔法そのものに関する訓練は魔術研究部門で行なっているが…

攻撃や支援などの魔法の命中率など、実戦的な戦闘訓練はこの防衛部隊の訓練場で行なわれている。


加えて、商会系列の教会所属となる、ミリアを筆頭とする聖女も今、かつてサンデル王国に巣くっていた悪辣な教団から解放された少女達とは別に、【聖女】の称号を得ることのできる存在が商会内部でぽつぽつと見つかっており…

希少性の高い【光】属性の魔法に特化した存在が増えてきていることで、医療部門もより手厚い治療ができるようになり、さらには教会所属の聖女が増えていることで、より信者のリンへの崇拝心と信奉心が著しく伸びることとなっている。


当然、最前線で戦闘に携わる防衛部隊にとっては、物理攻撃が効きにくい、もしくは効かない不死アンデッド系の魔物に対する切り札、そして怪我の回復や能力上昇バフによる支援など、安心して背中を預けることのできる心強い仲間となっているのだ。




――――




「はあっ!!」


防衛部隊が、リンとリンが作ってくれたものを護る力を得ようと鍛錬に励む中…

リンは、自身の神殿の地下に新たに作り上げた、自身専用の鍛錬場にいる。


防衛部隊の鍛錬場と比べると、ただ広いだけで特に何かがあるわけではないのだが…

鍛錬場全体をリンの【空間・結界】で保護しているので、いくら激しく修行をしても外に影響がないようになっている。


加えて、自身の生活空間と世界樹から発する清浄な空気と魔素が濃い為、体力と魔力の回復が通常よりも活性化されるようになっている。


また、すぐそばに自身のコピーとなる人造人間ホムンクルスのコピーリンが暮らす部屋を作り、そこで生活するようにしたので、自宅からいつでも自分自身と戦う激しい修行を行なえるようにしている。


その鍛錬場で、すでにこの世には並び立てる者などいないと言い切れてしまう程の力を、さらに向上させようと鍛錬に励んでいる。


「…うん。うまく使えるようになってきた」


その幼げな左拳に【火】の【息災】を纏わせ、拳撃を放つと言う技を今、思い付きで試していたところであり…

こうした新技の開発にも、リンは余念なく取り組んでいる。


ただでさえその驚異的な身体能力により、絶大な威力を誇るリンの徒手空拳。

その徒手空拳の威力に著しくブーストをかけるこの新技は、筆舌に尽くしがたい威力となるのは一目瞭然。


【火】属性が弱点属性となる魔物であれば間違いなく一撃必殺となり得る威力であり、【火】属性に完全耐性がある魔物でも、その拳の威力がそのままダメージとして通ってしまうことは間違いない。


【火】魔法よりも魔力の制御が困難である【息災】をうまく拳に纏わせ、インパクトの瞬間に拳に纏った息災の魔力を爆発させるのは、言うまでもなく神の領域にまで魔法の力を高めないとできるものではなく…

同時に、純粋な物理攻撃力も究極にまで練り上げる必要がある。


その為、普通の人族はおろか、人族よりも戦闘能力に優れた亜人であってもこの技を使うことは到底不可能となっている。


この世界が男が物理、女が魔法と言う感じで、どちらか一方に偏ることになってしまっているのも大きな理由の一つ。


物理の力と魔法の力。

その二つを神の領域にまで高め、併せ持つリンだからこそ可能とする技。


「他にももっといろいろできるかも…試してみよう!」


それ程のことができたとしても、元々が研究者な性質で探求心の強いリンはそれだけで満足することなどなく…

今思いついてできた技をさらに発展させようと、心底楽しそうな笑顔を浮かべて、より修行に励んでいくのであった。

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