第264話 開発
「お待たせしました~!」
「おお…これが神の宿り木商会のレストランの…」
「え?これでほんとに大銅貨一枚なの?」
「出てくるのめっちゃ早いし…それにこの料理…」
「見ただけでいい食材使ってるのすぐ分かるし、匂いだけで美味そうなのすぐ分かるし!」
「おまけに量も多いし!」
「どうぞ、冷めないうちにお召し上がりくださいね」
「は、はい!」
「しかも店員は美人さんめっちゃ多いし、接客もすごく丁寧だし…」
「!う、美味!」
「やべえよ…こんなのいくらでも入っちまうよ!」
「あ!おばあちゃん!」
「うふふ…いつも可愛いねえ。こんな可愛い子達に笑顔で接客してもらえて…あたしゃほんとに幸せだよ」
「えへへ~♪ありがとうございます!」
「今日もいつものセットですか~?」
「ありがとねえ。ここの朝食セットは安いのにほんとに美味しくて、食べると元気が湧いてくるからねえ…もうやめらんなくなっちゃったよ」
「おばあちゃんが喜んでくれて、わたしすっごく嬉しいです!」
「こちらでお召し上がり、ですね?」
「ええ。ここは可愛い子がいっぱいで、その子達にとても丁寧に接してもらえるから…いつまでもいたくなっちゃうくらいだよ。神の宿り木商会のパン屋さんはほんとにいいところだねえ」
「ありがとうございます!すぐにご用意致しますね!」
「ボアの串焼き、塩で五本!!」
「こっちは店主の特製タレで十本ね!!」
「畏まりました!!」
「ボアの串焼き、塩のお客様!!お待たせ致しました!!」
「いつも早いね~!!ありがとう!!」
「ボアの串焼き、特製タレのお客様!!お待たせ致しました!!」
「うお!!めっちゃ早え!!ありがとよ!!」
「うっま!!これヤベえ!!」
「もう一日の内に絶対これ食わねえとだめになっちまってるよ!!」
「神の宿り木商会の串焼き屋、めっちゃいい店だなあ!!」
「おれ、今後も通い詰めるわ!!」
神の宿り木商会系列の施設は、今日もどこもかしこも大盛況となっている。
ここ最近、他国や他の大陸からスタトリンやサンデル王国に流れてきた流民も増えてきたこともあるからか、レストラン、パン屋、串焼き屋は特に売上の伸びが凄まじくなっている。
リンの生活空間で日々暮らしているおかげで、とても清浄な魔力と食事に恵まれ…
決して従業員に無理をさせない神の宿り木商会の方針もあって、生活リズムもとても理想的で安定していることもあって…
神の宿り木商会の従業員は誰もが容姿に磨きがかかっており、見目麗しい美男美女が揃っている。
特に直接客とやりとりすることになる、各支店のスタッフ、そして商会拠点の交渉部門の従業員はその地域でも評判の美人が勢ぞろいとなっており…
しかもそんな美人がとても丁寧に対応してくれるので、客も自然とリピーターとして支店に通い詰めることとなってしまう。
「領主様のお姿を絵にしてほしい。できれば、製作する絵師には領主様の屋敷まで出向いてもらいたいのだが…可能だろうか?」
「絵画の製作依頼ですね。製作自体は可能です。領主様のお屋敷まで出張となりますと…一度商会内部で相談、検討させて頂く必要がございますが…問題ございませんか?」
「それは構わない。ただ、できるだけ早々に領主様に献上させて頂きたい…」
「畏まりました。早急に回答させて頂けるよう…そして、絵画製作に早々に取り掛からせて頂けるよう、尽力させて頂きます」
「その言葉を頂けただけでもありがたい。この神の宿り木商会は、偉大なる我らが守護神様が設立された商会…我らは日々、この神の宿り木商会を通して領地を…我らを始めとする民の生活をもお護り頂いている。偉大なる守護神様の、大きすぎる程の大恩に報いるどころか、実際にはそのお力に甘えてばかり…せめて、報酬だけでも弾ませてもらう所存だ」
「ありがとうございます。そのお言葉だけでも、我らが守護神リン様はお喜び下さるでしょう。領主様のご意向に沿わせて頂けるよう、尽力させて頂きます」
「ありがとう。よろしく頼む」
「我が領地で、偉大なる守護神様を崇め称える歌を披露してほしい。場所はこちらで用意するゆえ…」
「畏まりました。我が神の宿り木商会の芸能部門吟遊詩人グループで現在、歌の製作に取り掛かっております。その歌が完成次第と言うことになりますが…よろしいでしょうか?」
「問題ない。領地内でその歌を披露する舞台を用意する必要もあるゆえ、それについてもまだ時間はかかるだろうしな」
「畏まりました。でしたら、その舞台のご用意も我が神の宿り木商会で、正式な依頼としてお受けさせて頂くことは可能ですが…いかが致しましょう?」
「!そうだな…神の宿り木商会の建築部門なら完璧な仕事をしてくれると、微塵の疑いもない。領地内でその場所の選定をするゆえ、それが決まり次第正式に依頼をさせてもらおう」
「ありがとうございます。この領地の為にも尽力させて頂きます」
「ありがとう。よろしく頼む」
サンデル王国の各地にある、神の宿り木商会の拠点においても…
芸能部門の設立を聞きつけた各領地の領主が、絵画製作や歌の披露などの芸術関係の依頼をしてくるようになっている。
とうとう千人を超える大所帯となった、神の宿り木商会の交渉部門の従業員が、リンの生活空間から各地の商会拠点に常駐し、神の宿り木商会に持ち込まれる直接交渉の窓口として、丁寧に対応している。
交渉部門の従業員は、それぞれの個性こそあれど誰が見てもそうだと思える程の見目麗しい美女が揃っており…
そんな美女が懇切丁寧に対応してくれることを、商会拠点に訪れる客はとても好感を持っている。
しかも各領地にある商会の施設…
冒険者ギルド、商会拠点、宿屋、孤児院を主とした全ての施設が魔物や天候などによる災害が発生した時の、民達の為の避難所としても活用されることとなっており…
もはやサンデル王国中の領地の民が、神の宿り木商会の存在をとてもありがたく思っているのであった。
――――
「リ…リン様…」
「こ…これは…」
「え、えへへ…ぼ、ぼく、が、つ、作って、み、みま、した」
依然として衰えるどころか、ますます勢い付いて増加していく、神の宿り木商会の売上。
直接の売買が行われている各支店、宿屋、レストランは常時満員御礼。
冒険者ギルドは所属する冒険者のおかげで、本部はもちろん各支部でも湯水のように溢れる依頼の数々をきっちりとこなし、最上の評価を得ることができている。
それに加え、芸能部門の活動も本格的に開始しており…
芸能部門の統括管理を任されている広報部門の提案によって、リンの生活空間に作られた個展と舞台。
個展の方では、すでに数多く所属する絵画師が思うが儘に描き上げた絵画の数々が展示されており、その素晴らしい出来栄えに多くの客が魅了されている。
舞台の方でも、吟遊詩人達が繰り広げる、音で表現される世界…
演者達が繰り広げる、空想を目に見える形にした物語…
それらもまた素晴らしい出来栄えとなっており、それらを目の当たりにした多くの客が魅了されることとなっている。
キャラバンの編成による移動型の舞台となる大型の馬車に、それを曳く馬型のゴーレムも、商品開発部門と鍛冶部門の協力によって、順調に製作が進められており…
リンの偉大さや神の宿り木商会の素晴らしさを、自分達の芸で広め伝えていくことができるのを、芸能部門と広報部門の者達はとても楽しみにしている。
そんな中、リンが自身の清浄な魔力によって生み出す、不純物など一切ない清浄な水をベースに、ノゾキ草とタモチ草から抽出した成分を配合して開発した、安価な化粧水を…
自身の自宅で、自身の傍付となる女性達に披露している。
ノゾキ草は一見どこにでもありそうな、雑草とも言うべき無個性な見た目をしているものの、触れたものの不純物を吸収し、自らの栄養分にする性質のある植物。
ノゾキ草自体は比較的どこにでも育つ植物なのだが、ただの雑草とあまりに見た目が酷似していることもあり、その草がノゾキ草だと気づかれないことが圧倒的多数な状態となっている。
それゆえに、ノゾキ草の存在そのものがこの世界でほとんど認知されておらず…
ごくごく一部の研究者がその存在を知っている程度となっている。
タモチ草はただの雑草よりも幾分か青の成分が多めな色に染まっている草であり、自らに水分を溜めこむ性質を持つ植物。
水分を溜め込めば溜め込む程、その色味が青に近くなると言う性質も併せ持っている。
ノゾキ草と比べると幾分は分かりやすい見た目となってはいるものの…
川や湖など、淡水のある場所のそばでしか育たない為、ノゾキ草よりも採取できる場所が限られてくる。
こちらも、存在そのものがあまり認知されておらず、ごく一部の研究者がその存在を知っているのみとなっている。
リンは【鑑定】が使えるので、ノゾキ草もタモチ草もすぐに分かることもあり…
自身で森の中に出かけて数株を採取し、それを自身の生活空間の土壌で生育することに成功している。
その自身で生育しているノゾキ草とタモチ草を使って、リンは今回の化粧水の開発に成功したのだ。
「こ、これ…」
「塗っただけで、お肌にハリと潤いが出てくるのが分かります!」
その化粧水を実際に塗ってみたメイド達が、その効果に驚きの表情を浮かべ反応を見せる。
化粧水が皮膚の中まで浸透し、まずノゾキ草の成分が肌の老廃物や不純物を吸収して肌にいい栄養素へと変換してくれる。
そして、化粧水のベースとなっている、リンの魔力で生み出された清浄な水をタモチ草がしっかりと逃がさずに肌の中で保たせてくれるようになっている。
「この化粧水、塗った箇所がすっごく心地いいです!」
「こ、こんな凄い化粧水をお作りになられたなんて…」
「リン様…リン様はやっぱり神様です!」
その効果は、実際に塗ってみたメイド達が言葉にした通りのものとなっており…
それも即効性が高いこともあって、まさに画期的な発明とその場にいる女性陣は大絶賛することとなっている。
「み、皆、さん、が、よ、喜、んで、く、くれて、ぼ、ぼく、う、嬉、しい、です」
自身が【生産・錬金】を駆使して生み出した、世の女性ならば喉から手が出る程欲しくなってしまう化粧水を試し、その効果にとても驚きながらも、盛大に喜んでいる…
化粧水の被験者となったメイド達の反応に、リンはとても嬉しくなってしまう。
「リ、リン様!こ、この化粧水は本当にとんでもない効果です!」
「塗った瞬間にお肌の潤いが保たれるだけでなく、ハリやツヤも出て、お肌自体が若返る感じがします!」
「こんな素晴らしい化粧水が、ノゾキ草とタモチ草の成分で作られているなんて、信じられません!」
メイド達の反応を見て、自分もと試しに使ってみた専属秘書達も、その効能に驚きを隠せない。
しかも、リンの魔力で作られた清浄な水が必要ではあるものの…
素材としては、現在進行形でリン所有の畑に大量に育てられているノゾキ草とタモチ草のみであり、その上それぞれ一株ずつから0.5ℓもの化粧水が製造可能なのもあって、製造コストとしてはかなり低いものになってくる。
こんなとんでもない効能を持つ化粧水を、ほぼ二束三文で大量に製造できるのはまさに神の所業を思うしかない状態となっている。
「…リンちゃん、これは本当に凄いものだよ。私達女性からすれば、これ一本に大白金貨を出しても惜しくないと言えてしまう程のものだよ」
同じようにリン特性の化粧水を試してみたエイレーンからも、絶賛の言葉が声になる。
その言葉を聞いた専属秘書達やメイド達も、うんうんと首を縦に振って同調の意を見せる。
だが、エイレーンは何かを懸念するような、不安げな表情を浮かべている。
「ぼ、ぼく、そ、そんな、た、大金、だ、出して、も、もらわ、な、なく、ても…」
「いいや…これはあまりにも効能が凄すぎる。こんな凄まじい効能を持つ化粧水を、平民でも手に取れるような価格で世に出したりなんかしてしまったら…下手をすればこれを巡って戦争が起こってしまうかも知れない」
「!わ、分かります!エイレーン会頭補佐!」
「こんな凄い化粧水、貴族はもちろん王族も黙ってられませんから!」
「わたし達だって、こんな凄い化粧水がお手頃な価格で店に売られてたら、絶対に買い占めちゃう自信あります!」
大白金貨を出しても惜しくない、と言うエイレーンの言葉に、元々平民でも気軽に買えるような価格で提供しようと思っていたリンはぎょっとしてしまうのだが…
リン製造の化粧水の効能が凄まじすぎて、これはそんなお手頃価格では世には出せないとエイレーンは断言してしまう。
そして、そんなエイレーンの言葉に、実際に化粧水を試してみた専属秘書達やメイド達も力強く同調してしまう。
「だからリンちゃん…せっかく作ってくれたこのお試し版だけど、これは世に出さない方向で行こう」
「!う、うう…」
「その代わりと言ってはあれなんだけど…この化粧水、もっと効能を落として量産することは、できるかな?」
「?は、はい。で、でき、ます、けど…」
「平民でも気軽に買えるような価格帯で出すのなら…これの百分の一くらい…たった一回で効果が発揮されるのではなく、使い続けていくことでじょじょにその効果が表れる、くらいの効能がちょうどいいと、私は思うんだ」
「?そ、そう、ですか?」
「そうだよ、リンちゃん。その方が、世の女性も美しくなる為の努力をしてくれると思うし…人々に長く愛されて、ずっと買い求めてもらえる人気商品になると思うんだ」
低い効能をより高くする、と言うのは非常に困難になる。
だが、リンの化粧水のようにとんでもなく高い効能を抑えることは、容易なはず。
そうすれば、美しくなりたい女性の努力を支援する、平民にも気軽に買えて誰からも愛される、神の宿り木商会の新しい定番商品になる。
それを確信したエイレーンは、あえてそのままの効能では出さず、それよりもかなり抑えた効能の商品を世に出すことを、リンに提案する。
「わたくしもそう思います、リン様。エイレーン会頭補佐がおっしゃられる効能にして、それを50mℓ程の小瓶サイズで、一瓶あたり大銅貨一枚程でしたら、平民の方でも手軽にお求め頂けて、少しずつ自分のお肌が奇麗になっていく楽しみも感じて頂けると思います」
「さすがアシリスさんだね。私もそのくらいがちょうどいいかな、と思っていたんだ」
「ありがとうございます。わたくしも神の宿り木商会の経営を担わせて頂いていますから…そう言って頂けると嬉しいです」
そのエイレーンの案に、リンの専属秘書であり神の宿り木商会の経営も任されているアシリスも同調する。
そして、実際に販売する際の容量や価格も具体的な数字まで言葉にする。
その内容にエイレーンも同調してきたことで、アシリスは嬉しそうな笑顔をその美貌に浮かべて喜ぶ。
その場にいる他の女性陣も、二人の意見に賛同の意を見せている。
「ぼ、ぼく、の、か、開発、し、した、もの、に、き、貴重、な、い、意見、を、あ、あり、がとう、ござい、ます。そ、その、方、が、み、みんな、が、よ、喜、んで、く、くれる、なら、そ、そう、します」
そして、それがみんなに喜んでもらえるならと、リンはエイレーンとアシリスの意見を素直に受け入れ…
ノゾキ草とタモチ草の成分を千倍に希釈することで、ちょうどエイレーン達の意見にぴったりとマッチングする効能の化粧水を生成する。
最初の効能でも、一株ずつで0.5ℓもの化粧水が生成できていたのだから、当然希釈して配合するようになったことで、より製造コストを減らすことにもなる。
その為、原価率のよさは神の宿り木商会の商品の中でも屈指のものとなった。
そして、実際に販売が開始すると、エイレーン達の見込みを遥かに上回る反響を得ることとなり…
リンが開発した化粧水は、神の宿り木商会のイチオシ商品として、あっと言う間に大人気になるのであった。
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