第262話 女神

「な、なんと!!こ、この私が、リン様の御許でお仕えさせて頂ける…しかも、この屋敷をリン様の御許に設立される、国の首脳会議の会場におつなぎ頂けるとは!!」

「領主様!!我々は偉大なる守護神様の御許でお仕えさせて頂けることが嬉しすぎて、言葉がございません!!」

「ああ…非合法の奴隷を購入してしまうと言う罪を負うこの私に、そのような慈悲が頂けるとは!!皆の者!!至らぬ領主である私だが、全身全霊でリン様にお仕えさせて頂く所存だ!!偉大なるリン様のお役に立たせて頂けるよう、皆の力を貸してほしい!!」

「もちろんでございます!!領主様!!」

「領主様の…ひいては偉大なる守護神様のお力になれますよう、微力を尽くさせて頂きます!!」

「ありがとう…私は皆のような従者を持てて本当に幸せ者だ…」

「!!領主様!!」

「我々、領主様に生涯お仕えしてまいります!!」


シェリル、マクスデル、エリーゼとの謁見でエミリアに伝えられた…

サンデル王国の貴族達が、リンの生活空間に作られる会場での首脳会議に参加が義務付けられること。

そして、その会場に対象となる貴族達の屋敷を接続されること。

それにより、サンデル王国の貴族達も、国の守護神となるリンの御許で仕えられるようになること。


それらを、各領地の神の宿り木商会の拠点より、国王マクスデルの直属となるセバス、アンを始めとする侍従達が、領主となる貴族にその件が勅命として認められた封書を順次、送付していっている。


シェリルとの謁見を果たしたことにより、真っ先にそれを知らされることとなったエミリア以外では、スタトリンに最も近いキーデン伯爵の領地に、その封書が真っ先に届けられることとなり…


その内容を確認したキーデン伯爵から、感激のあまり冒頭の台詞が飛び出すこととなり…

キーデン伯爵に仕える侍従達も、主となる領主はもちろん領地をも救い、日々の守護を与えてくれるリンの御許で仕えられることを、心の底から喜ぶこととなる。


「おとうさま!」

「ぼくたちも、おとうさまをすくってくださったしゅごしんさまに」

「おつかえさせていただけるのですか?」

「ああ!もちろんだとも!」

「わ~い!」

「わたちたちだけじゃなくて、おとうしゃまもたしゅけてくれた、だ~いすきなしゅごしんしゃま!」

「しゅごしんさまによろこんでいただけるように」

「ぼくたち、がんばります!」

「そうかそうか!私も我が子となるお前達が、リン様の御許でお仕えさせて頂けるのが嬉しくてたまらないよ!」


そして、かつて違法奴隷としてドグサレ商会で人ならぬ過酷な扱いを受け…

そこを救わんが為にキーデン伯爵に購入された孤児達も、養父となるキーデン伯爵と共にリンに仕えることができるのを、無邪気な笑顔を浮かべてはしゃぎながら喜んでいる。


キーデン伯爵に正式に養子として引き取られてからは、貴族の子としての教育をしっかりと受けつつも、養父の愛情を惜しみなく注いでもらい…

キーデン伯爵の侍従達も、元が違法奴隷の孤児であったことなどなかったかのように、この子供達に目いっぱいの愛情をもって接してくれている。


領地はかつての第二王妃・第一王子派の貴族が所有していた領地のいくつかを統合した為、元の数倍程の広さになっているものの…

そこは神の宿り木商会の存在が非常に大きく、常に領主の領地経営はもちろんそこで暮らす民の生活をも支えてくれている為、キーデン伯爵の人柄をそのまま表したかのような、民を常に思いやる政策を問題なく実施することができており…

サンデル王国の領地の中でも一二を争う程に住みよい領地と、評判になっている。

もちろん、その領主となるキーデン伯爵は領民からの支持も非常に多く、信頼も厚い。


「(偉大なる守護神リン様…このキーデン、リン様の為にも全身全霊でお仕えさせて頂く所存でございます!!)」


リンの為にも、より自身の預かる領地をいい方向へと導き…

領地で暮らす民が幸せに暮らしていけるようにしようと、改めてその心に誓う。


そして、リンの為に自身はもちろん、一族郎党でリンに全身全霊でお仕えすることを、その心に誓うのであった。




――――




「ふふ…リン…リン…♡」

「あ、う、う…」


そんな感じで、サンデル王国の各所に守護神リンの御許で仕えることができると言う朗報を、セバスとアンを始めとする王家直属の侍従達が国の貴族に届け…

それを受けたキーデン伯爵を始めとする貴族達が大喜びしつつも、その輝かしい未来に向けて心を奮い立たせている最中。


この世界を司る神の一柱であり、リンを心底溺愛してやまない女神アルテナが…

初めてリンの魂を天界に召喚し、思う存分に触れ合うことができて以来、全くリンと触れ合う機会がなかったことに業を煮やした為、リンは再び天界に召喚されることとなってしまった。


女神アルテナは、その神々しい程の美貌をだらしなく緩ませながら、リンをその母性と慈愛に満ち溢れる豊満な胸の中に抱きしめ、思う存分にリンを愛することに没頭してしまっている。


「ああ…リンはどうして、こんなにも可愛いのでしょう…♡」

「あ、あの…」

「わたくし、リンが可愛すぎて愛おし過ぎて…リンのことをめっちゃくちゃに愛してあげたくて、たまらなくなってしまうのです♡」

「は、はな…」

「リンを通して、わたくし達神々への人々の信仰が凄まじい勢いで増えていってます…そのおかげで、わたくし達神々の力も強くなり…この世界をよりよい方向に導くことができるようになりました♡リン…全てはあなたのおかげ…あなたはわたくし達が寵愛すべき神子なのです♡」


まさに神の造詣と言える程の美貌を持つ女神アルテナにぎゅうっと抱きしめられ…

その幼げな頬にキスの雨を降らされ…

ただただひたすらに愛されることとなっているリン。


世界を司る神の一柱でありながら、下界の存在であるリンの神気と愛らしさに心を奪われっぱなしとなっている女神アルテナは、リンを愛することのできる心地よさに至福の笑顔を浮かべている。


ちなみに初めて天界に召喚された時とは違い…

普段から念話でのやりとりはするようになっているものの、実際の触れ合いがなくて悶々としていた女神アルテナが、リンに天界に来てほしいと駄々をこねてしまったことにより、今回の召喚に至ったのである。


もちろん、リンはこの日も自身がするべき仕事は全てこなしており、日頃からリンを愛してやまない傍付きの女性達に、少し疲れたから一人で寝ることを伝え…

天界に召喚される際にはリンの肉体は仮死状態になってしまう為、それを見られないようにしてから、天界に召喚されることとなった。


もし前回の時のように、いきなり天界に召喚されて何の脈絡もなく仮死状態に陥ってしまったなら、周囲にどれ程の悲しみを負わせてしまうことになるのか…

そして、ただでさえ過保護になってしまっている傍付きの女性達はもちろん、商会全体がどれ程過保護になってしまうのか…

それを考えただけで恐ろしくなってしまったリンは、同じ過ちを繰り返さないようにと、今回はしっかりと準備したのである。


「リン…わたくしの愛してやまない神子…♡」


そんなリンの陰の奮闘など気にも留めず、女神アルテナはただただリンを溺愛してしまっている。

自分の胸の中で恥ずかしそうに俯いているリンがあまりにも可愛くてたまらず、その黒髪を梳くように小さな頭を優しく撫でながら、自身のぷるんとして艶のいい唇をリンの頬に押し付けるようにキスして、ひたすらに可愛がってしまっている。


すでにスタトリンはおろか、サンデル王国中の民もリンを心の底から崇拝する信者となっており…

リンを守護神として崇める教会の本部、支部全てで毎日リンへの祈りが運ばれることとなっている。


そうして祈りを捧げられる側のリンが、人々の幸せを喜んで、より真摯に純真無垢な祈りを、自身に送られた祈りも併せて天界の神々に送ることで、それがそのまま神々への多くの祈りを捧げることとなっている。


そのおかげで、女神アルテナを始めとする神々は…

現在では数百万人にも及ぶ、下界の存在の祈りを受けることができ、そのおかげで神としての力が増幅することとなっているのだ。


現に、多くの信仰心を得られるようになった今の女神アルテナは…

リンと初めて邂逅した時と比べて、明らかにその美しさと若々しさに磨きがかかり、神気もはっきりと増幅することとなっている。


そう言った恩恵を、他の神々も受けることができており…

女神アルテナを始めとする神々のリンへの愛は、日に日に深まっていくこととなり…

どの神も、リンと直接的な関わりを持ちたくてたまらない状態となってしまっている。


のだが、現状唯一リンと直接的なやりとりができる女神アルテナが、リンを独り占めしたくて他の神々のそんな要望にそっぽを向いてしまっている状態である為…

未だにリンがこうした触れ合いを含む、直接的なやりとりができているのは、今のところ女神アルテナのみとなっている。


「ああ…リンの清浄で純粋な心…魔力…神気…おまけにこの抱き心地のよさに素敵な匂い…わたくし、リンをこうしてぎゅうってしているだけで、幸せでいっぱいな気持ちになってしまいます♡」

「ア、アル、テナ、さ、様…」

「はい?どうかしましたか?リン?」

「ぼ、ぼく、こ、こん、なに、ぎゅ、ぎゅう、って、さ、され、る、の、は、恥ず、かしい、で、です…」

「!…もお…リンはどうして、こんなにも可愛いのですか?わたくし、もっともっとリンのことを愛して可愛がりたくなってしまうじゃないですか♡」

「は、はな、して…」

「だめです♡リンはわたくしの最愛の神子…親の顔も知らない孤児…その上、人との触れ合いが叶わない呪いまでこの小さな身体に宿しているなんて…そんなリンに寂しい思いをさせるわけにはいきません♡リンには、わたくしの溢れんばかりの愛を受け取って頂かないと♡」


リンのことを抱きしめて可愛がっているだけで、女神アルテナの心に溢れんばかりの幸せが湧いてくる。

だから、いつまでもリンのことを離したくなくて、ずっとぎゅうっと抱きしめている。


リンはそれが恥ずかしくて、儚い抵抗をしてしまうのだが…

当然ながら女神アルテナが、リンのそんな抵抗など認めてくれるはずもなく…

むしろそんな抵抗も可愛く見えてしまい、ますますリンのことをぎゅうっと抱きしめてしまう。


「!あ…」

「ああ…もう時間なのですね…」


だが、リンの身体が淡く光り始め、天界にいられる時間の終わりが知らされる。

女神アルテナは、この至福のひと時の終わりにとても寂しそうな表情を浮かべてしまう。


「リン…また天界に来て下さいね♡わたくしにとって、リンは最愛の神子ですから♡」

「は、はい」


リンを抱きしめている感覚がどんどんなくなっていくことに、女神アルテナは寂しくて寂しくてたまらなくなってしまうものの…

切なそうな笑顔をどうにか浮かべて、また次にリンと触れ合える機会を楽しみにすることにした。


そんな女神アルテナに、リンはまた次回、と言うニュアンスの言葉を残して、天界から姿を消すこととなった。




 ――――




「………ん………」


微睡の残る中、うっすらとその目を開いていくリン。

ぼんやりとした視界には、自身の自宅の寝室の天井が映ってくる。


それを認識すると、リンは天界から下界に戻ってきたことを実感する。


「リン様…よくお眠りになられていましたね。その御身をお休め頂けて、ローザは本当に嬉しいです♡」


丁度そこにローザが、リンのお世話をしようと入ってきて…

少しぼんやりとした様子で、ベッドの上で上半身を起こしているリンのそばにある椅子に腰かけると、まさに慈愛の女神と言わんばかりの、優しく美しい笑顔を向けてくる。


今でこそかなり余裕ができているものの、それでもリンにしかできない仕事が多々ある為…

やはり日頃は多忙なリンが、こうしてその身体を休めることができたことを、ローザは純粋に喜ぶ。


「ぼ、ぼく、ま、また、お、お仕事、し、しな、いと…」

「リン様…専属秘書のアシリス様から言伝を頂いております。『本日リン様でなくてはならない業務は特にございませんし、せっかくですのでリン様はこのまま休暇に入ってください』とのことです」

「え?」

「リン様はこの小さな御身で、日頃どれ程の業務に携わられていることでしょう…何より、そのお力で日々、多くの方々を幸せに導いて下さっております。そんなリン様に、この私はもちろんのこと、商会の関係者は誰もがもっとその御身をお休め頂けるようにと、日々願っているのです」

「で、でも…ぼ、ぼく…も、もっと、み、皆、さん、の、た、為、に…」

「リン様…リン様はこの神殿から見守っていてくださるだけで、私達は幸せなのです♡リン様がお傍におられて…リン様が私達を見守ってくださっている…それだけで私達にはリン様のお力を頂けて、リン様に幸せを頂けているのです♡」

「あ、あう…」

「それだけでも、この生涯をもって尽くさせて頂いても返しきれない程の御恩を頂いているのに…それ以上に下さろうとするのですから…この私も、どれ程リン様が愛おしくてたまらなくなっているのか…そのことは、ご存じでしょうか?」

「え、え?」

「私だけではございません…リン様はもう、少なくとも商会に所属する方全てに愛されております。リン様にお仕えすること…リン様を愛させて頂くこと…それはまさに幸せそのものなのです♡」


リンのことが愛おしすぎて、もうどうしようもなくなってしまっているローザ。

今しがた目覚めたばかりのリンを、自身の身体で包み込むかのようにぎゅうっと抱きしめてしまう。


「!あ、あの、は、はな、して…」

「だめです♡リン様は私がお仕えすべき神…同時に私が愛すべきお方…リン様…ああ…大好き…大好き…大好きです…♡」


弱弱しくいやいやをしてしまうリンが可愛すぎて、ローザはますますリンをぎゅうっと抱きしめてしまう。

そして、その幼げな頬にキスの雨を降らせ、己の心に溢れかえって止まらないリンへの愛を、そのままぶつけてくる。


「だ、だめ、あ、あ、あ、あ、あ、あ………………きゅう…………」


それにより、目覚めたばかりであるにも関わらず、あっさりとその意識を手放してしまうリン。


リンの寝顔、抱き心地、匂い、神気…

その全てが愛おしくてたまらないローザは、リンのベッドに潜り込んで添い寝をしながら、思うが儘にリンのことを可愛がって愛してしまうのであった。

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