第119話 構築

「…よし、こんな感じかな」


イリスがジャスティン商会の本店にリンの二つの案を持ち帰り、会頭であるジャスティンも交えて紹介の不動産部門と場所の選定と購入について熱烈な会議をしている中…


また、冒険者ギルド スタトリン支部でもエイレーンを筆頭に、リンの案についてと、今後の支部の改築について積極的に意見を出し合っている中…


リンは、すでに広大な地下空間として大衆浴場の建築に勤しんでいる。


空間は男女で完全に切り分ける為、一つ一つで作っていっている。




脱衣所

・縦横50m、高さ20mの直方体の空間

・空間内に【火】【風】の属性を付与し、空間の温度は常に一定を保つ

・空間の隅に四つの転移陣を設置、それぞれ町の東西南北の受付施設を行き来できるようにする

・二百個の荷物置き場を【土】魔法で作成、一つの大きさは縦100cm、横60cmとし、一つを一人用としている

・荷物置き場の扉を閉じた時に、付与している【浄化】が中で発動し、中の物全てを綺麗にできる

・リンの収納空間への収納機能のみを付与した、貸出のタオルと剃刀の返却箱を十個設置、ここに使用済みのタオルと剃刀を入れるとリンの収納空間に返却される

・返却箱と同じく、リンの収納空間への収納機能のみを付与したごみ箱も設置

・日の変わり目の時間帯と、日の真ん中の時間帯の合計二回、空間全体に【浄化】を発動し、施設そのものを綺麗にする

・天井の中央の部分に、リンの魔力を常に吸収し、貯蓄する魔道具を設置、そこで貯蓄した魔力を使って、各設備に付与された魔法を使うようにしている

・空間全体、そして空間内の設備は全てリンの【空間・結界】を付与し、保護している


風呂場

・縦横400m、高さ20mの直方体の空間

・直径10m程の円型の湯舟を十個設置、中央に【火】【水】属性の魔法を付与した噴水口を設置し、適温のお湯が自動で補充されるようになっている

・十個ある湯舟とは別に、ひんやりとした水風呂も二個設置

・壁付けのシャワーを百口設置、こちらも【火】【水】属性の魔法を付与しており、利用者がシャワーに触れると適温のお湯が出てくるようになっている

・終端に、リンの収納空間への収納機能のみを付与した排水溝も設置、収納した水は常時、【浄化】で綺麗な水にし、補給物資として保管する

・日の変わり目の時間帯と、日の真ん中の時間帯の合計二回、空間全体に【浄化】を発動し、施設そのものを綺麗にする

・営業開始前となる七時に、自動で湯舟への給水を開始し、以降営業終了となる二十時までずっと一定水量で給水し続ける

・営業終了時点で給水が完全に停止する為、全ての水は排水口に流れ、リンの収納空間へと収納される

・天井の中央の部分に、リンの魔力を常に吸収し、貯蓄する魔道具を設置、そこで貯蓄した魔力を使って、各設備に付与された魔法を使うようにしている

・空間全体、そして空間内の設備は全てリンの【空間・結界】を付与し、保護している




この広大な風呂場空間を、リンは自分の拠点から南の方に数百m程離れた位置に構築。

男用、女用で計二つ、大衆浴場空間を完成させる。

とは言え、一旦は試験的な営業となる為、今後改善点が見つかれば適宜対応していくつもりだ。


(フレア、アクア、ウインド、ソイル…い~っぱいお手伝いしてくれてありがとう。おかげで、こんなにも早く、こんなにもいいお風呂場ができたよ)

(えへへ~♡リンのおてつだいできて、うれしいのー♡)

(わ~い♡リンがほめてくれたのー♡)

(リンがよろこんでくれて、あたしすっごくうれしいのー♡)

(リンといっしょにおふろばつくるの、すっごくたのしかったのー♡)


今のリンは、四元素を司る高位の精霊であるフレア、アクア、ウインド、ソイルと契約を結んでいる。

その為、【火】【水】【風】【土】属性の魔法が以前よりも格段に強化されており、以前に自分の拠点や孤児院を建築した時よりも遥かに少ない時間で、この大衆浴場空間二つを完成させることができた。


そして、フレア、アクア、ウインド、ソイルも各属性の付与などを、リンからやって欲しいことを聞き出して、それぞれで分担して手伝ってくれたのだ。

特に【土】を司るソイルは、リンと共に大衆浴場空間の構築もしてくれたので、そのおかげでより短時間での建築ができるようになったのだ。


空間の設計は、リンの【生産・建築】を使い、この案を思いついた時にすでに実際の建築イメージとして作り上げていた為…

後は、建設予定地となる地下にそのイメージを反映させ、その部分の土を【空間・収納】で収納して、【空間・結界】でできた空間そのものを保護した上で、設計イメージに基づいて【土】魔法で肉付けし、内装の構築にかかっていけばよかったのだ。


何はともあれ、これでひとまず大衆浴場の建築は完了。

ただし、転移魔法陣は設置こそはしているものの、まだ受付の場所の選定が終わっておらず、転移先を登録できない為、今のところはハリボテの状態となっている。

リンは【空間・転移】があるので、いつでもここに来ることができるので…

転移魔法陣の転移先の設定は、一旦後回しとなる。


(ふう…じゃあ次は、公衆トイレの建築かな…フレア、アクア、ウインド、ソイル…また、お手伝いしてもらっても、いい?)

(もちろんなのー♡)

(リンのおねがいなんだから、いくらでもするのー♡)

(リンのおてつだいするの、すっごくたのしくて、すっごくうれしいのー♡)

(ぼく、もっともっとリンのためにがんばるのー♡)

(えへへ…ありがとう)


大衆浴場が一旦完成したので、次は公衆トイレの建設に取り掛かろうとするリン。

自身と契約を結び、もはや一蓮托生の存在となっているフレア、アクア、ウインド、ソイルに建築のお手伝いをお願いすると…

フレア達はとても嬉しそうな笑顔を浮かべて、リンのお手伝いをすると、言葉にしてくれる。


そんな精霊娘達が可愛くて、リンも思わず顔を綻ばせて感謝の思いを言葉にするのであった。




――――




(リン、ここはこんなかんじでいいのー?)

(うん、ありがとうソイル)

(えへへ~♡どういたしまして、なのー♡)


事前に【生産・建築】で用意していた設計イメージを、予め大雑把にくりぬいて作った地下空間に投影し、公衆トイレの建築に取り掛かっているリン。


【土】を司る精霊、ソイルもリンが作った設計イメージに対して、自身の【土】魔法を駆使してどんどん肉付けをしていく。

作るべき形を、視認可能な魔力がはっきりと映し出しているので、その通りに【土】魔法で作っていけばいい為、ソイルも非常に作業がやりやすいと感激している。


そうして、リンとソイルで建築作業を続けていくこと、約一時間弱…

リンが発案した公衆トイレが、ひとまず完成した。




公衆トイレ

・縦100m、横20m、高さ10mの縦長の空間を二階建てで構築

・一つの階の空間の長辺となる壁沿いに、各二十五室ずつ、個室を構築

・一つの階で五十、計二つで百の個室を構築

・一階を男性用、二階を女性用とする

・地下一階と二階をつなぐ螺旋階段を、空間の端に設置

・個室一つは縦横1.5m、高さ2.5m程の空間、その中に腰掛け式の便器を一つ設置

・個室の天井から便器のそばに、握り付きの紐を垂らしており、その紐の握りに触れると【浄化】が発動、利用者と便器含む、個室全体を浄化する

・空間内に【火】【風】の属性を付与し、空間の温度は常に一定を保つ

・空間の端に、町の出入り口と行き来できる転移魔法陣を設置、町の東西南北四か所分あり

・リンの魔力を常時吸収、貯蓄する魔道具を設置、この空間内で使われる魔力は全てその魔道具から使用する

・正午、日の変わり目の時間の計二回、空間全体と全ての設備に対して【浄化】を自動で発動、常に清潔を保つようにする

・空間全体と各設備をリンの【空間・結界】で保護、壊されないようにする




空間の温度調節の為の付与はフレア、ウインドにも手伝ってもらい…

せっかくなので二階建てにし、当初予定していた倍の個室を設置した。


大衆浴場からは、さらに南に数十m程離れた位置に作り…

大衆浴場と同様にメンテナンスが必要な際にはリンが【空間・転移】で移動して行なうことにする。


大衆浴場同様、まだ行き来する先の出入り口の場所が決まっていない為、設置している転移魔法陣にそれを設定する作業は改めて、と言うことになる。


(みんな、ありがとう。みんなのおかげで、こんなにも早く、こんなにもいいトイレまで作れちゃった)

(リンのおやくにたてて、ほんとにうれしいのー♡)

(リンがよろこんでくれて、ほんとにうれしいのー♡)

(あたしたち、これからもい~っぱいリンのおてつだいするのー♡)

(リン、ず~っといっしょなのー♡)


一仕事を終えて、とても満足げな表情を浮かべているリン。

リンの魔法を強化してくれただけでなく、付与の手伝いなどもしてくれたフレア、アクア、ウインド、ソイルに、ふんわりとした笑顔で感謝の言葉を贈る。


そんなリンの笑顔が、言葉が本当に嬉しくて…

フレア達は心底、リンの役に立ててよかったと、リンが契約してくれてよかったと思い、リンの胸元にべったりとくっついて甘えてくる。


一通りの作業も終わったので、リンはついでに魔の森で狩りと採取でもしていこうと思い…

【空間・転移】を発動させ、できあがったばかりの公衆トイレの空間を後にした。




――――




(わ~…)

(すごいのー…)

(リン、めっちゃくちゃつよいのー…)

(ほんとになんでもできて、かみさまみたいなのー…)


【空間・転移】で魔の森の奥部の方へと転移したリン。

【探索】の技能を展開して周囲の状況を探りつつ、必要な薬草を【鑑定】で見定めながら、【空間・収納】で必要分を収納していっている。


料理に使える香草類。

回復薬の生成に使えるケア草。

魔力回復薬の生成に使えるマナケア草。

解毒剤の生成に使える毒草類。


さらには、魔素の密度が非常に高い魔の森の奥部で育った果実類。


決して乱獲はせず、あくまで必要分を採取していっている。


ケア草は一般的な回復薬の原料となる薬草で、少し青みがかった紋様が特徴的な植物。

スタトリンの南東にある森など、割とどこにでもある薬草で採取も極めて簡単。

買い取り額はスタトリン支部では一株で銅貨一枚。

ただし、魔の森のような魔素の密度が濃い環境だと、その効能がより高くなる為買い取り額は通常の倍ほどになる。

魔素を十分に含んだケア草は、その特徴である青みがかった紋様がより強く出てくるので、見た目にも分かりやすくなっている。


マナケア草はケア草同様、一般的な魔力回復薬の原料となる薬草で、こちらは乳白色の紋様が特徴となる植物。

ケア草と比べると、魔の森のような魔素の密度が濃い場所でしか育たない薬草であり、魔力の元となる魔素は根っこに集まる性質なので、採取は必ず根っこごとでないと意味がなくなる。

その為、買い取り額はケア草よりも当然ながら高くなり、スタトリン支部では一株で銀貨一枚となる。

このマナケア草も、魔素を多く含めば含む程その紋様がより強く出る。

当然、効能も高くなる為買い取り額もより高くなる。


ケア草とマナケア草は、まだリンの生活空間では栽培していなかったこともあり…

リンは、この二つは少し多めに採取して、栽培しようと心に決めた。


最も、大量の魔力を要する為、栽培が非常に困難なマダラ草の栽培に成功し、今では広々とした畑一面に生い茂る程マダラ草を育てることができている為…

そのマダラ草よりも栽培が容易なケア草とマナケア草なら、すぐにでも育てることはできるだろう。


「はっ!!」


そうして採取を進めながら、リンは魔の森の奥部へとどんどん進んでいき…

オークの上位四種が全ている、オークの軍勢と遭遇する。


当然オーク達は、リンと言う一見幼げな人間の子供を見かけて、美味そうな餌だとすぐに狩人の顔を浮かべ、その命を終わらせにかかっていったのだが…

称号【ぼっち】のプラス効果もあり、しかも今となっては素の状態でも飛びぬけた戦闘能力を誇るリン。

人間と言う餌を喰らうことしか頭にないオーク達を、まるで作業をしているかのように淡々と屠っていく。


未曽有の大氾濫の、称号の全てのプラス効果を最大限に発揮した時の…

あの神の領域に達していると言える程の凄まじい力と比べると、今は遥かに劣るものの…

それでも、今この場で遭遇した数千のオークの軍勢程度では、まるで相手にならない程の力で、次々とねじ伏せていっている。


「ブ、ブヒッ!!!!!」

「ブ、ブギャアアアアアッ!!!!!!」


大氾濫の時も使用した、至って普通の金属で作られた剣。

その剣から繰り出される斬撃があまりにも強すぎて、雑兵のオーク達が成す術もなく切り捨てられている。

しかも、屠ったその瞬間に、【空間・収納】で死体を収納していっており…

リンの収納空間に、凄い勢いでオークの魔物素材となる死体が増えていっている。


自分達が獲物と思い、数千もの軍勢で狩りに行ったはずなのに。

その獲物と思っていた、人間の少年は鬼神のごとき強さを誇っている。

その強さで、自分達の軍勢が成す術もなく屠られてしまっている。


すかさず、後衛部隊となるオークメイジやオークアーチャーが、魔法や弓矢による遠距離攻撃を繰り出すものの…


(リンにこうげきなんて、ゆるさないのー!)

(まほうはぜ~んぶ、わたしたちがきゅうしゅうしちゃうのー!)

(ゆみやはぜ~んぶ、あたしとソイルでふせいであげるのー!)

(ぼくもリンのこと、まもるのー!)


四元素となる【火】【水】【風】【土】属性による魔法攻撃は、全てフレア、アクア、ウインド、ソイルが魔力として吸収してしまい、リンにはまるで届かない。

オークアーチャーによる弓矢の攻撃も、ウインドが左側を【風】魔法による障壁を、ソイルが右側を【土】魔法による障壁を発動させ、全て防いでしまう。


「!!!???ブ、ブヒヒッ!!!???」

「!!!???ブヒブヒッ!!!???」


オークメイジも、オークアーチャーも、なぜあの人間に自分達の攻撃が届かないのかまるで分からず、混乱に陥ってしまう。


「はああっ!!!!!!」

「!!!!!!ブ、ブギイイイイッ!!!!!!!」


しかも、オーク部隊の中で最も力のあるオークソルジャーと、真っ向からの力比べで軽々とオークソルジャーをねじ伏せ…

たった一振りの斬撃で、実に数十ものオーク達の首を胴から切り離してしまう。


「そこっ!!!!!」

「ブ、ブヒイイイイイッ!!!!!!」


しかも、それ程の斬撃を繰り出しながら、【風】魔法による真空の刃を繰り出し…

自分を遠距離から狙ってきたオークメイジやオークアーチャーの首を次々と刎ねていく。

四元素を司る精霊達との契約のおかげで、【風】魔法の威力も以前とは比べ物にならない程に上がっている為、簡単にオークの首を刎ねる程の威力になっている。


「ブ…ブヒ……」


気が付けば、ものの二分少々で数千もいたはずの軍勢が、オークジェネラル一体になってしまっている。

数千もの軍勢で挑んでも、まるで相手にならない程の戦闘能力を持つ小さな人間…

それが、決して敵に回してはならない存在であったことに、ようやく気付くこととなってしまったオークジェネラル。


リンが屠ったオーク達は一体も残らず収納空間に収納され、もはや自分一体だけ。


「ブ、ブヒイイイイイイイイイイイッ!!!!!!!!!!」


もはややぶれかぶれで、リンに向かって攻撃を繰り出していくも…


「はあっ!!!!!!」


リンがその右手に握った剣による斬撃が、ただ一体だけ残ったオークジェネラルの首を刎ね、屠ってしまう。


そして、すぐさまオークジェネラルの死体を収納空間へと収納し…

辺り一面を覆いつくす程に飛び散っている、オーク達の血液を【浄化】を発動して跡形もなく消し去ってしまう。


「…ふう…」


まるで何事もなかったかのように元通りとなった、リンが戦闘を繰り広げたその場所。

戦闘を終えて、リンは一息つく。


(フレア、アクア、ウインド、ソイル…ありがとう、ぼくのこと、護ってくれて)

(とうぜんなのー!)

(リンはわたしたちがぜったいにまもるのー!)

(リンにはゆびいっぽんふれさせたりなんか、しないのー!)

(もっともっとリンのためにがんばるのー!)

(えへへ…フレア達が友達で、ぼく、すっごく嬉しいな…)


オークメイジの魔法攻撃や、オークアーチャーの弓矢攻撃から自分を護ってくれたフレア達に、リンは笑顔で感謝の言葉を贈る。

フレア達は、そんなリンの言葉にとても気をよくし、これからもリンを護ると宣言する。


フレア達が友達になってくれたことが本当に嬉しくて、リンは可愛らしい笑顔を浮かべながら喜ぶ。

そして、十分過ぎる程の収穫はあったものの、家族達やジャスティン商会、そしてジュリア商会の為にもっと稼ごうと思い…

リンは、さらに魔の森の奥部へと、足を進めていくので、あった。

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