第4話 美少女達と馬車に揺られ王城に向かうお話
思い詰めた表情でミューが語る。
「隣国カルサイトの催すパーティーに参加した帰りだったのです。そしたら国境付近であの魔物の大群が襲ってきたのです」
馬車の中でミューがことの始末を話していた。シンイチは当事者であるドラゴン娘エルの方を向いて尋ねる。
「おいエル。どうしてこの馬車を狙ったんだ?」
シンイチはドラゴン少女エル・シヌーのことをエルと呼ぶことにしていた。エルは一つ頷くと、弁解するように話し始める。
「はい……。実は、魔術師に操られてたのでよく覚えていないというのが正直なところです」
「操られていた?」
「はい。おそらく、その魔術師はカルサイトの者かと」
エルの口にした言葉にミューとアーシャは息を呑む。続けてシンイチはエルに聞いた。
「ってことは暗殺か?」
「その可能性は否定できかねます……」
ミューが暗い顔をした。暗殺という言葉に心当たりがあるようだった。
「おそらく私がカルサイトの王子の求婚を断り続けているからだと思います。私はシンイチ様という運命の相手がいるとわかっていましたから、何度も何度も求婚を断ってきたんです。そのことに腹を立てた何者かが暗殺を企てたのかもしれません。それか単純に神石を求めただけかもしれませんね」
シンイチは一つ引っかかりを覚えて、ミューに聞き返した。
「シンセキってなんだ?」
「私の一族は神の末裔なのです。その身に神の石を宿して生まれてくるのです。その石は高等魔術を使う際に用いられることがありまして、私を殺して私の神石を得ようと考えた者の仕業かもしれないなと」
そうか。そんな物があるのか。流石異世界。やはり元いた世界の常識の範疇を越えるな。シンイチは驚きつつも、ミューに告げる。
「大丈夫。ミューのことは俺が守るから」
「はい。ありがとうございます」
これはシンイチの本心だった。三人の神様にだってミュー・クリスタルを守って幸せにしろと言われている。何があってもシンイチはミュー・クリスタルを守って見せると心に決めるのだった。
シンイチ以外のみんなは疲れてしまったのか寝てしまった。隣に座るエルの頭がシンイチの右肩に乗っかっているが、美少女だからか全然悪い気はしない。
シンイチは一人向いに座るミューの寝顔を見てはつい頬が緩む。確かに世界で一番美しいと言うのもわかる。吸い込まれそうなほどに透き通った瞳に、雪のように真っ白な髪。唇は薄らとピンクで可愛く、スタイルも抜群だ。あの三美神と比べたってシンイチはミューを選ぶだろう。
出会って間もないが完全にシンイチはミュー・クリスタルに一目惚れをしてしまったらしい。しばらくミューの寝顔を見てから、シンイチはそう言えばと思い出して、ステータスを確認した。
「えっ!」
何気なくスキル【全知】でステータスを確認したらおかしなことになっていた。
【名 前】カミヤ シンイチ
【種 族】人間
【性 別】男
【年 齢】16歳
【職 業】超越者
【レベル】81
【体 力】78/78
【魔 力】7/10
【攻撃力】42
【防御力】73
【魔攻撃】10
【魔防御】0
【俊敏性】121
【幸 運】1111
【ステータスポイント】790
《スキル》
【全知】
【万物の王】
【言語理解】
レベル81。何故レベルアップしているんだろう。もしかしてテイムしたエルが倒した魔物から経験値が貰えるのではなかろうか。今すぐ試す手段はないが、この推論はかなり現実味がある。
とりあえず、この有り余るスキルポイントをどうするかシンイチは考えることにした。個人的には魔力を重点的にあげたいとシンイチは思っていた。先程までの暇な時間、シンイチは魔法に必要な魔力量をスキル【全知】で調べていた。
基幹魔法:1
初級魔法:10
下級魔法:77
中級魔法:200
上級魔法:777
超級魔法:3000
天級魔法:7777
神級魔法:5万
虚空魔法:∞
どうやら大抵の人はどんなに努力しても超級魔法で止まるようだ。歴代の賢者が数人天級魔法を使ったと言う。神級魔法や虚空魔法は理論段階らしい。そりゃそうだろう。虚空魔法に関しては必要魔力量が∞なのだから。神級魔法を使うのにも、総魔力5万に至るためには全てのステータスポイントを魔力にささげても、レベルを五千にしなくてはならない。
途方もないがこれは逆に希望でもある。虚空魔法を会得できれば、もしかしたら元いた世界に戻れるかもしれないとシンイチは考えた。一緒にミューを連れて行けるのならそれもありかもしれない。
先ずは魔力から上げたいが、他のステータスが心許ないので幸運以外それぞれ100ずつステータスポイントを振ることにした。そして魔力だけ余った90を振ることにした。
【名 前】カミヤ シンイチ
【種 族】人間
【性 別】男
【年 齢】16歳
【職 業】超越者
【レベル】81
【体 力】178/178
【魔 力】8/200
【攻撃力】142
【防御力】173
【魔攻撃】110
【魔防御】100
【俊敏性】221
【幸 運】1111
【ステータスポイント】0
《スキル》
【全知】
【万物の王】
【言語理解】
シンイチの魔力量は200なので、今は中級魔法まで使える。上級魔法を使えるようになるのは当分先になりそうだった。それにしてもエルはレベル128で魔力8000超えていた。シンイチは人と竜とではステータスの上がり方が違うのかもしれないと推測する。
ふと、シンイチは思う。この世界には魔王とか邪神とかそう言う明らかにラスボス的な存在はいないのかな、と。この世界での最終目標を元の世界への帰還、及び虚空魔法の会得として、魔王がいるのなら討伐してみたいと思うのが男だろう。ミューが起きたら聞いてみようとシンイチは思う。
そんなこんな考えていると馬車は無事に神聖国クリスタルに着いた。とは言ってもまだ見えるのは5メートルくらいの壁だけだが。
「着きましたね」
目を覚ましたミューが言った。外が騒がしい。
「護衛の者はどうされたのですか?」
「それが、魔物の大群に襲われてしまって。命からがらここまでやってきたのです」
どうやら御者の男と門番が話しているようだ。
「そうか。それは災難だったな。通っていいぞ」
中のチェックをされるのではとシンイチは緊張したが取り越し苦労だったようだ。馬車が街中を歩いていく。
「ミューさん。目的地まではあとどのくらいですか?」
「王城まではあと一時間くらいですよ」
「そうですか」
「それと、私のことはミューとお呼びください。シンイチ様」
「うん。わかったよ、ミュー。その様ってのやめてほしいかな」
「なら何と呼べばいいのでしょうか?」
「普通にシンイチでいいよ」
「わかりました。し、シンイチ」
シンイチの名前を呼ぶミューは、やはり可愛かった。こうしてシンイチらは王城へと向かうのだった。
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