ス族の言語辞典(第5版)

しゃちき

【はじめに】

 ス語には決まった文法というものが存在しない。

幾つかの意味を含んだ単語を自分なりに繋ぎ合わせて相手に伝え、そして相手に伝わればオッケーという非常にフレキシブルな言語だ。

ス族は文法よりも、声の抑揚や音の響きを重視する傾向にある。


(中略)


「ス語には敬語が存在しない」

という説が一般的であったが、最近になってからそれは誤りであると判明した。

特定の族長の時代のみに使われていた敬語表現が存在したのだ。

 敬語表現が廃れた理由は、おそらく会話が「冗長」になるからである。

ス族の者は皆、自分の身分に合うように言葉を受け取る(訳する)ので、わざわざ「私はあなたを敬っています」という敬語表現――意思表示をする必要性を感じなかったのだろう。

 だが敢えて敬語表現を用いて喋りたいのならば、話し言葉の始めに「セラ」を付けるとよいだろう。

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