戦争
今戦場は地獄と化している。
「うぉー!」
男どもの唸り声と共に熱気が辺りを包んでいる。
「邪魔だぁー。」
かくいう俺も同じく戦場に身を投じる言わば戦士の一人である。
「ぐわぁー!」
「なにー!」
一人また一人と戦場に赴いては負けていく。
しかし、それでも男どもはやめないのだ。
この戦争をこの闘争を。
思えばこれは俺たち特有のものかもしれない。いつかは忘れ去り懐かしむものかもしれない。
それでも今を生きる者にとってこの闘争をやめることは出来ない。
古今東西ありとあらゆるところで起こるこの戦争。激化しようともあらゆる犠牲を払おうともやめることは決してない。
「焼きそばパンは俺のものだぁー!」
「メロンパンはいただいた。」
「嫌だ嫌だ あの謎の魚まるごと一匹パンは嫌だ。」
「てめぇ。そのカレーパンは俺がとってただろ。」
「あぁん?こっちが先だろ。てめぇこそわりこんでじゃねぇ。」
「限定ソースパンあと10個です。」
「今度こそくうんだ。」
「俺 ソースパンゲットできたら あいつに告白するんだ。」
そう腹を減らした若人どもが一同にかいし己の昼食をかけて争う。
「どきな!」
「あれはラグビー部の田辺山。」
「ラグビー直伝 肉弾丸。」
「「ぐわぁー!」」
己のために自らの身体をつかい相手を押し退ける。
「邪魔だ!」
「あれは柔道部の納見。」
「くそ!あいつら強すぎてもうちかづけねぇ。」
「はっはっはっ!悔しければ押し退けてみるがいい!」
「くそ。なんて体感してやがる。びくともしねぇ。」
力がすべてのこの戦争。
「まい クリームパンが食べたいな♡」
「はっ!畏まりました。」
「あ あれは腹黒アイドル 舞衣ちゃん。」
「誰が腹黒だってあぁ?…じゃなくてひどいですよ。まい は腹黒じゃないですよ。むしろ白ですよ。」
時に武力だけでなく己の容姿すら武器にし立ち向かうものもいた。
戦争の時間など昼休みの中でみるとほんの少しの時間である。
それでもなお男たち、いや学生たちはその刹那にすべてをかけるのだ。
「本日のソースパン売り切れだよ。」
戦争の終了は法螺貝でも将軍の声でもない。
購買部のおばちゃんの声によって終了する。
「だぁー!負けたぁ~!」
「ゲットだぜ。」
あるものは喜びあるものは涙を流す。
そして明日またこの時間に集うのだ。
人々は口をそろえてその戦争を 闘争をこう呼ぶ。
購買戦争と。
人知れず静かになった購買部へ足を運ぶ。
「おばちゃん。」
「なんだい?」
「魚パンちょうだい。 」
「あいよ。にしてもあんたぐらいだよこのパン欲しいなんて。」
「そりゃ人気なパンも欲しいけど地味に美味しいよこのパン。」
「そりゃ自信作だもの。はいよ。」
「ありがと。」
勝者と敗者がいるこの戦争。
しかし、この学校においてはそうでもないかもしれない。
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