現実逃避は自己防衛




ブヴウンと言う音がして光の剣は天上へと伸びた。何処かの映画の様に輝きの強いこの武器が、所謂伝説のエクスカリバーというものらしい。


抜けてしまったその剣の柄を、光を消しては誰にも見つからぬ様もう一度岩の間へ突き刺しておく。

待ち合わせまでまだ時間がある。勇者候補が来るまでの手持ち無沙汰で抜いちゃったとかシャレにならん、ちょっとトイレでも行こうかな。



「あれ、まだ二時間前だよ?早いね。」

「げ、魔術師殿。」

「げ、とは酷いなぁ。一応審判役だからと前倒しで来たのに、君が先にいるなんて驚いた。」

「んー、」

「てっきりベルジュと来ると思ってたよ。道中は大丈夫だったかい?」

「こちら、ウチの店自慢の聖堂の雫が御座りますれば。」

「なるほど魔除けの薬か、それはいい!かなり強力みたいだ。人気な訳だねぇ。」



魔術師殿もお一ついかが?なんて便利アイテムを突き出しながら言えば、目の前の美青年は軽く笑いながら遠慮しておくよと呟いた。視線はもうかの剣の柄に注がれ、色っぽいため息を吐いている。


彼曰く、魔王が誕生してからすでに百五十日。数々の勇者候補をこの洞窟へ案内しては審判してきたが、この伝説の剣を抜ける者はついぞ現れぬままだと言う。

へぇー、なんて相槌を打っていれば君の兄は抜けると思うかい?なんて聞かれて返答に困る。いや、私に言われても。正直私は奴が勇者候補に選ばれる程の強者だなんてつい昨日知ったばかりなのだ。


とりあえず黙ったままでは何なので、抜けるんじゃないですかねぇなんて適当に言っといた。だがまぁ、折角なのでもし彼が抜いてしまったらと仮定してみては考える。

今は命の恩人であり、家族として迎え入れてくれた義兄のベルジュ。そしてそんな兄さんの店を手伝う形で生計を立てている私は一体どうなってしまうのだろう。


恐らくもなにも、選ばれてしまった兄は国を挙げて魔王退治の勇者として祭り上げられる。立会人の妹である私と友の魔術師は王に呼ばれ、魔王退治に行かないという選択肢を無くす為に人質なり褒美を与えるなり、何かしらの束縛誘惑を受けるに違いない。

結構面倒な事になるんだろうなと唸っていたら、隣の彼がそうかいと肩を落として悲しそうな声を漏らしていた。

だから私はヨイショと奴の横にあった大きな岩に腰掛ける。魔術師殿はここ数日、ずっと顔色が悪かった。



「なんなの。不安な訳?なら兄さんを紹介しなければ良かったじゃない。」

「君は酷いなぁ、そんな事言わないでおくれ。僕だって苦肉の策なんだ。」

「?」

「知ってるかい。ここは王都の近くだからまだ被害が少ないけれど、魔界に近い場所から日に日にモンスターが進行してきている。」

「うん。」

「何人も、何人も国の重鎮が犠牲になった。だから僕の知る限りの強者を連れてきた。」

「うん」

「でも誰一人として抜けないんだ。もう、ベルジュしか。彼しか思い当たる人物がいなくて、」

「、うん」

「ともだち、だから。巻き込みたくなんて無かったけどこのままじゃ国が、みんなが」



なるほど。お上が回らなくなれば国は荒れる。国が荒れれば民の統率が取れなくなる。そんな所にモンスター何ぞの侵攻が来れば、例え知能が低い敵だろうが数で押されて一網打尽って事なんだろう。

魔術師殿はぎゅっと拳に力を入れて、そのまま土壁を殴りつけていた。血液がどろりと腕から滴る。きっと立会人を私達だけにしてあるのも、彼の権力によるものなのかも知れないなと他人事の様に思った。


コイツは優しい。そして頭もいい。だからあり得てしまうかも知れない可能性と保険を沢山考える。例えばこの聖剣をもし兄が抜いてしまったとして、ベルジュ自身の意見を尊重出来る様にしておくだとか。

誤魔化せる様に、ここに居る全員で嘘を吐くという選択肢を取れるように。そうして王都側に自分を、兄側の人間として私を選び、皆が寝静まり見つかりにくいこの時間帯を選んだ意図。


当然理解はできていた。しかし、納得が出来るかと言われると別問題な訳で。



「難儀だねぇ。」



フイっと顔を背けてやる。そこまでするのなら、やっぱり兄をここに連れてくる決断なんてしなきゃ良かったんだ。そして、審判なんて行わなければよかったのに。

不貞腐れながら彼の魔力を帯びた赤い目を見つめれば、何かに飲み込まれてしまうかの様な感覚に襲われたが気にはしない。


だってそうだろ?ベルジュは強力な魔力が体内にあれど、瞳の色は一般人と同じな訳で。ただ黙ってりゃ済む話だったのだ。この世界にはややこしい事が嫌いでそんな赤眼の魔力持ちですらひっそりと暮らしてる痕跡が所々にある。

見過ごし、他人行儀に、こっそりと。それだけで平穏が約束されるんだぞ、万々歳だろうが。


そして勿論、国の魔術師とやらも決して目の前の彼だけではない。

大勢いる人間達の中で、偶々この見知った魔術師殿が国一番の実力者だった。そして偶々、義理堅く情の厚い友の実力を知っていた。今の状況はそういった偶然が重なっただけという、下らぬ話が発端だったのだ。

いずれはバレて候補に引き摺り出されるかもしれないから先手を打った?それは、ただの言い訳だろうに。



(つーか態々首を突っ込むから、)



うーんと唸って、そこから先はやめといた。なんにせよコイツへの不満を止める事など出来やしないのだ。

べつに、私だって国のため人の為に奮闘する彼を嫌いでは無かったし、魔獣進行の所為で死んでいく人間に何も思わない程冷酷では無い。それどころか明日は我が身かもしれない、そう思えば彼の立場も考えて良心的にはなれるのだが。

いかせんどうにも、なぁ。誰だって身内から犠牲が出るのは良しとしないもの、なんて理屈を捏ねて、子供の様に口を尖らせては空気を足で蹴ってみる。


散々だった。この内心も、状況も。だから敢えて投げかける。やめちゃう?別に君だけが気張る必要はないんだよと。今にも潰れてしまいそうな彼をどうしても放っておけなくて。やめてほしくて。



「嫌悪感があるなら逃げちゃえ。」

「っ」

「今から三人で国を出ようよ。遠くの地でさ、一緒に暮らそ。国一番の魔術師殿と隠れ実力者の兄さんがいればモンスターも魔王も何とかなるよ。」



だけど頑固な本人は此方の願いに気づかない。自分で自分を傷つけてる事。己の首を絞め続けている事。今も尚国や人々を思い、考え詰めてる彼にはきっとこの言葉ですら毒なのだ。

気づかなければ改善は見込めない。気付いてないフリもただ意地を張るだけで。認めなければ楽にはならず、更にまた苦しくなる。これまた自身へ跳ね返ってきたド正論にばかだなぁなんて、わらってしまうのは仕方なかった。


手首を握って目を瞑る。吸い込んだ息はまるで毒ガスでも取り入れたかの様だった。

それでも、そうだなぁ。この馬鹿げた情を捨てられない理由は、この世界に来てからそれはもう長い十数年を義兄やこの人と一緒に過ごしてしまったからで。このバカに至ってはどこまで行っても他人を見捨る事が苦手なのだと知っていたからだ。

親友は見捨てるくせに。思わず出てきそうな言葉は心の内に渦巻いている。けれどきっと、彼は彼自身でさえそうやって見捨ててしまうのだろう。



「それはできない。」



ほら。怒りたいのに怒れないのは、完全に惚れた弱みの所為だ。



「何故?」

「みんなが死んでしまう」

「ふぅん。」

「それはいやだ。」

「そう、じゃあ兄が死ぬかもね。」

「、それも嫌だ。」

「我儘じゃない?」

「うん、そうだね。そしてぼくは」

「うん。」

「君にも辛い目にあって欲しくない。」

「、うん?」

「本当だよ?」



視線を合わせて、ひどい顔で魔術師殿は微笑む。それで笑っているつもりなのかと呆れてしまったけれど、その好意は決して嫌ではなかった。

だからその剣が視界の端で消えて、自分の中で小さく灯る様な暖かい光を感じた時、私は彼の頬を包み呪いの言葉を吐く。


自己犠牲なんて、嫌いだよ。そんな単語に心底驚いた様な顔をして、彼は今度こそ綺麗に微笑んだ。例えこの身が焼け爛れようとも、僕は君達を守りたいんだと。呪詛返しでもされた様な気分だった。



「そんなあなたは嫌いだ。」

「ええ、悲しいなぁ。」

「それが世界を救うとでも?」

「人柱に誰を立てるかの違いだと思うけど。」

「私は君も兄さんも、居なくなったら嫌だよ。」

「そっか。君もワガママだ。」

「うん。」

「ではこれは押し付け合いだね。万が一抜けてしまった場合、君達には今夜逃げてもらう予定なのに。そんな事言われたら迷ってしまう」



盛大に、それはもう迷ったらいいじゃないかという言葉は空気に消えた。口付けられたと理解する前に顔が歪む。黙れってか。君の心を少しだけ軽くする事も、君は許しちゃくれないのか。


悶々する此方の気持ちなど総無視で、魔術師殿は儚げに微笑んだまま私の手の上に自分の掌を添えた。兄さんとは違うその細くて綺麗な指が血の色に染まるなど考えたくもない。

というかそもそもベルジュがコレを抜ける訳ないだろ。だって私が抜いちゃったんだし。君は気づいてないけどもうそこにエクスカリバーはないんだぞ。ついでに言うと私がその人柱とやらになるんだから、逃げるんならお前ら二人なんだからな!


あーだこーだ、言いたい事はやっぱり沢山あった。それでもそれを言ってしまえばきっと、コイツは私の事も同じ様に守る気なんだろう。

魔術師殿の瞳に嘘はない。だから、私と兄を逃して自分を国へ突き出すつもりであるとすぐに理解できた。勇者を逃し罪人となった国一番の魔術師の末路だと?そんなの、考えなくともわかるだろ。特攻隊だよ。


つまり責任感という鎖に縛られたこの馬鹿は、何をしても人々を救う為に自ら死の最前線に立ってしまう訳である。ほんっっとそういうの辞めてほしい。

残される方の気持ちとか考えた事あるのかコイツ。しかも折角引いてた距離感の一線普通に超えてきやがって。ほんとバカじゃない訳?あ、天才魔術師様でしたね、それは悪うござんした!ぜってぇ名前で呼んでやらねー。



「不機嫌そうだなぁ。良いじゃないか、君達はどの道助かるんだし。」

「そういう話じゃないんだわ。」

「困った困った。」

「困ってないよねそれ。認めないよ、見殺しになるじゃんか。」

「おや、今度は別方面での誘惑かい?別に罪悪感は持たなくても良いんだよ?」

「、じゃあ。私を未亡人にでもする気?」

「え、結婚してくれるの?」

「あんたが馬鹿な真似しなければ喜んで。」

「うーん、操立てする気ない?」

「結婚して死ぬ前提の話は辞めてくれる?」

「バレたか。しかも頑固だなぁ。」

「何を今更。お互い様でしょ。」



ふふ、あははと冗談の様に笑い合う。けれどもお互いが本気だった。

しまったな、私が勇者ですなんてカミングアウトのタイミング無くなったぞと困っていたら、いつの間にか時は過ぎ。存外彼との言葉遊びが楽しかったのだと、理解しては噂のお兄様がやって来ると同時に少し動揺してしまった。


結果論として全員が大分早く集まった事に苦笑する。なんだ。結局の所三人とも、この選定の所為でもう今通りの生活なんか出来ないって察してたのか。

全て分かっていて、それでも友の頼みを受け入れた兄。人々を見捨てられず、その罪を受け入れるかの如く審判を引き受けた魔術師殿。


やれやれ、素敵な関係です事。個人的には巻き込まないで欲しかったなぁと明後日の方向を向く。

やはり出来心で抜いてみようなんて思わなければ良かったか。私が選ばれし者だったのだから、余計な事をしなければこの夜ベルジュは聖剣を抜けず、案外丸く収まっていたのかも知れないと今更ながらの後悔が酷い。



「いや、でもそれだとコイツにここまで心砕いてないのよねぇ。」

「うん?」

「あ?何の話だ。」

「私と魔術師殿がついに恋人関係になってしまったという結末を分析していたのだよ、兄。」

「はぁ!?」

「おや、バラしてしまうのかい?つまらないなぁ。」

「おま、妹に手は出すなとあれほど!!」

「ややや、全くもって誤解だよ!無理矢理手籠めにはしてないさ!」

「当たり前だ馬鹿っ!」



深夜にも関わらずギャイギャイじゃれ合う両者に呆れしか出てこないが、まぁそれは置いといて。

愛されているなぁなんて実感しながらもバレない程度にため息を吐く。幸い喧嘩に夢中で気付かれていないが、私の中にエクスカリバーなる物が溶け込んでしまったと指摘されるのは最早時間の問題だ。やはりトイレに行くしか無いのかも知れない。え、違う?


ついっと横目で彼等を見ると、髪の毛をぴょんピョコさせながら未だに取っ組み合っている。うーん、これは今のうちにバックれるのが正解な気がしてきたが如何だろうか。

因みにこっそり行動に移そうとした瞬間、奴らに手首を捕まれ未遂に終わる。抗議しようとしたらしたで何処に行くんだい。話はまだ終わってねぇ。僕達は愛し合っているよね。大体お前が隙を見せたりするからコイツが調子に乗るんだ等々。そろそろいい加減にしてほしい。

今度は私を挟んで罵倒し合うものだからシャレにならん。お前ら身長高い事理解してる?耳元で大声だすな馬鹿もんが!!



「ええい、だまらっしゃーーいっ!!」



瞬間感情に反応したのか、ドカン!と大きな衝撃派が私の周囲から発せられ、彼等は物凄い勢いで壁へと叩き付けられ気を失った。

何が起ったのかも分からず唯呆然といていたが、はっと我に返って急ぎ安否を確認する。ああ良かった、二人とも無事である。ちょっと目を回してピヨピヨしているけど、外傷は無いようで安心安心。そしてチャーンス。


しめしめと忍び足を忘れずに二人へ傷薬と例の魔除け薬をぶっ掛け、すぐさまその場をお暇する。戦闘慣れしている彼等の事だ。数分後には目を覚まし、この状況を分析するに違いない。

その時私と聖剣が側に無く、自身の気を失った原因を推測して確信をもってしまうだろう。んでもって絶対に追いかけてくる。自意識過剰だと?上等だ。過保護を耐え続けたこの数年間は忘れてないわよお兄ちゃん達。



「おお、モンスターがゴミのようだ!なんちゃって。」

『、えぐ、』

「んん?」

『こんにゃくってどうやって作るの、。』



こんにゃ、え??


困惑する。立ち塞がるモンスター達を片っ端から投げ、聖剣の所為で段々身体能力が上昇してきたなと実感していればあら不思議。不意にどこからか啜り泣く様な気配がして何よこれホラーかな状態に陥った。

耳を澄ましてみれば内容は何々。さみしい、つらい、カレーライス、崇めないでほしい、味噌汁、魔王やめたい、しちゅー、おなべ、すし、いやまずこんにゃく。おい待てお前どれだけ食いたいねん、とか呆れながらもその食への単語に目を見開く。


断言しよう。この世界には似た様な食材で日本食っぽい品は存在するものの、その単語を知る者は皆無である。

なぜなら食文化は圧倒的に元の世界の方が上だし、海外チックな世界観のせいで生魚すら敬遠されているのだ。つまりは寿司、だなんて日本文化特有の料理はあるもなく。



「、これ。もしや魔王転生者なんじゃね、?」

『なんて???』

「おっと会話できるんかーい。此方エクスカリバー所持者、日本関西出身の転移後一般市民ですそちらどうぞ。」

『おおお!!?こちら関東在住トラ転後魔王なり!』

「なるほどドンピシャ。ところで不可侵条約とかしない?」

『え、するする~!色々あるしちょうど考えてたのー!』



軽っ、いや魔王かるっ。話の分かるやつじゃんとか思いながら何やら会話を進めれば、寒いからおでんパーティなるものを懐かしの人間界でしようとしたら、思いの外モンスター達が集まって来て人間側に進軍してるのではないかと勘違いされたらしい。え、何それ。なんか情報と違うんですけど。


騙されてる様子はないものの、一応核心的な情報は伏せて此方の被害等の話をすればそれはおかしい、自分が魔王になってからは人間を襲うなと指令を出しており、王に忠実なモンスター達はそれを実直に守っていると言うではないか。

しかも魔王転生の特典として、モンスター側の動向等は千里眼ぽい力で全て把握しているらしい。いやチートかよ。エクスカリバー負けてるぞ、頑張れよ。



「おっけ、取り敢えず魔界付近に向かうから合流しようか。もしかしたらこちら側の陰謀説もあるし。首都へ届くまでに情報が改竄されてるのかもしれない。」

『了解~!確かに国のお偉いさんだけ亡くなってくのは変だよね。こっちの仕業なら間違いなく町ごと襲ってると思うし~!』



血の気多いなオイ、なんて突っ込みは空気に溶けた。しかし目敏く拾い上げた魔王様は真剣にそうやねん、なんて言い出す始末。

君関東人では?エセ関西弁は嫌われるぞと言えば、心底嬉しそうにケラケラと笑われた。現代ジョークが楽しいって?おう、私も久々すぎて魔術師殿との恋愛空気時よりドキドキしてる。

一応近辺の街の様子も調べるねー!なんて仕事できる発言に最早頭が上がらない。おいおい、有難うって言ったら元気にどういたしまして!とか可愛い声が聞こえてきたぞ。い、良い奴だなぁ!私騙されてない?ないよねぇ?



『うへへ、ホント嬉しいよ。私ヒッキーだったのにいきなり王様扱いされるし、寂しいし、誰かお友達が欲しくてさぁ。』

「え!お友達?聖剣持ってるけど??」

『でも同郷じゃん。あ、もしや嫌だった?わたし、元人間とはいえ人外だし、魔王だし、』

「ああいや、それは大丈夫。私もオタク民だったので理解はあります。」

『ほんと!?じゃあ甘味開発とかも参加してくれたりする?!』

「え、それはむしろ喜んで!」



そう返事をすると今度は大層高い音程で喜ぶ声と、ピョンピョン飛び跳ねてる音がした。ああうん、これは女子である。声からしても仕草からしても間違いなく純粋幼女であると聖剣がそう囁いている。うん、さっきは悪態付いたが未知なる世界を有難うねエクスカリバー。お友達ができました。


振り返ればヒュオオと風が吹き抜けて、洞窟内の魔術師殿と兄が起きた気配がした。あ、やばい。これは急がねば。まぁあの二人ならば万が一とて国の人質なんぞにはならないだろうし、私共々この聖剣がなくなれば多少なりとも人間側の動きは鈍くなる筈だ。

つまり、何が得かっていうとあの自己犠牲大好き二人組がちょっとの間活動停止になってくれるのである。よーしその間に最強幼女な魔王ちゃんに相談乗って貰おうそうしようっと。



「それでは達者でな!」



案の定そう言った瞬間、後ろから物凄い怒気が感じられたけど。うん、無視するに限るので割愛しておきますサヨウナラ!




<現実逃避は自己防衛>

(ただいまー。あ、二人に紹介するね!此方がお友達の魔王ちゃんです。王様とは和平を結んだらしいのでご安心ください。)

(こんにちは!魔王やってますゼロ歳です!!この度は内乱分子を沈めたので友好の証を承り、今後は魔界との貿易も担当させて頂きます!食文化、かいっぜん!)

((なんて???))





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