海外掲示板の噂 Side:草埜 Side:桃瀬
◆Side:
【熊本県某所・天音の別荘】
早坂くんと連絡が取れなくなり、二十四時間が経過した。彼等はマレーシアを目指して旅立ったはずだった。
けれど、一向に連絡が取れないなんてありえない。
それにニュースだ。
日本のニュースは取り上げていないけど、海外の一部の報道ではマレーシア行きの便が墜落したかもしれないと情報があった。
つまり、早坂くんたちは……。
「怖い顔してどうしたの、艾ちゃん」
「リコ、早坂くんたちと連絡取れないでしょ?」
「まあね。でも飛行機に乗っているだろうし、機内モードにしているだけじゃな~い?」
一理あるけど、そうではないと思う。
事件が起きたんだ。
「このタブレットを見て」
「ん? 海外ニュース?」
「そうだよ。海外メディアのCMMが墜落があったって報道してる」
「マジ? 啓くんたちが乗った便だよね」
「つまり……」
「嘘……啓くんたち死んじゃったの!?」
「そんなわけないでしょ。他の乗客は犠牲になっちゃったかもだけど、早坂くんたちは緊急時に備えてパラシュートを荷物に入れてるみたい。だから、うまく脱出したんじゃないかな」
「そんなことできるの!?」
普通は不可能だ。
けれど、特別な訓練を受けている早坂くんたちなら可能だと思う。特殊なウイングスーツを開発したとも言っていたし、うまく飛行機から脱出してしばらく滑空して、それからパラシュートを開けば――あるいは。
「うん、そう信じたい」
「……そうだね、あの無人島でも生き延びてここまで来たんだもんね」
「そうだよ。とにかく、早坂くんたちに連絡を取る方法を考えないと」
「う~ん……」
試しにスマホで何度も連絡を試みてみるけど、繋がらない。
「ダメか~」
「場所を特定した方がいいかもね」
「そんなの難しすぎるよ。リコちゃん、なにか良い方法ある?」
「マレーシアといえば、南シナ海。台湾、ベトナムやフィリピンもあるし、ブルネイやインドネシアもあるよ。どこに流れ着いたか分からないよ」
さすがのリコもお手上げだった。
でも、私はあの子なら特定できるんじゃないかと閃いた。
「ねえ、桃瀬ちゃんに相談してみない?」
「桃瀬に? ああ、そっか。あの子って天才ハッカーじゃん」
「そそ。衛星をハッキングとかしてもらってさ、衛星写真とか撮れないかな」
「それならドローンの方が早くない?」
「わぁ、リコちゃん天才っ!」
――そんなわけで、桃瀬にお願いしに行くことにした。
◆Side:
また“事件”が起きているみたい。
海外掲示板がやけに騒がしい。
『飛行機が墜落したってさ』
『マジ~? どこの国?」』
『どこのかの海に落ちたらしい』
『どこの海だよ』
『南シナ海って話だぜ』
『ストラトフォーがもう情報を握っているらしい』
『あ~、影のCIAな。最近キナ臭いよな』
『テロ組織が動いてるってさ』
『北センチネル島じゃねーの? 最近、ISILが活発だとか』
『陰謀だ、陰謀!』
『イルミナティ!? フリーメイソン!?』
『いや、どっちかと言えばスカル・アンド・ボーンズじゃね』
飛行機ね~…。
そういえば、早坂くんたちも飛行機に――ってまさか。
立ち上がろうとすると、扉が開いた。
そこには慌てた様子の
ノ、ノックもせずに何なの!?
「どうしたの二人とも」
「「桃瀬ちゃん! お願いがあるの!」」
「お願い? 二人揃って私に何の用?」
まずは艾が「早坂くんたちの乗った飛行機が落ちた」と言った。信じられなかった。ちょうど海外掲示板を覗いていて見かけた情報を合致する。
続けてリコは「桃瀬、ハッキングして啓くんたちの情報を集められないかな?」と無茶ぶりを言った。
そこで、私は悟った。
本当にマレーシア行きの飛行機が落ちたんだ……。
これは大変だ。
わたしは更に詳しい情報を聞いて『ハッキング』を開始した。もちろん、相手は“ストラトフォー”だ。
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