第四部:ハーレム生活Ⅱ

奇跡が起こった!? 脱出への道筋!

 天音、楓と共に俺は洞窟内を調べていく。

 どこかに未発見の通路とかあるかもしれない。手あたり次第、探していく。


 出来れば、爆破しても危険のない場所がいいが、そんな都合のよいポイントはないだろうな。思えば、あの罠部屋が一番だったかも。


 だが、あの部屋はもう埋まってしまった。戻ることはできない。



「あ、行き止まりだ……」



 天音の言う通り、行き止まり。多分ここはトーチカの下だ。最初に俺たちが降りて来たところだな。あの時はダイナマイトで爆破したから、塞がったんだ。これでは出られない。



「困ったね。C4爆弾で爆破できそうな場所はないよ」



 楓にも洞窟内部を見極めてもらっているが……そうか、無理そうか。下手すりゃ、永久に出られないなんてことも。それだけは避けたいが。



「う~ん、どうしたもんかね」

「早坂くん、一か八かここを爆破してみる? ほら、一応ここってトーチカの場所だったわけでしょ。繋がるかもよ?」


 そんな提案を楓がしてくるが、無理だろうな。


「楓が思っている通り、ここはもう崩落してるから爆破するだけ更に埋まるだけだ」

「だよね~」


 爆弾はC4が1個と手榴弾が1個しかない。無駄にはできないぞ。


 これ以上は無理か。

 諦めかけた――その時だった。



 トーチカの方でドカドカと音がした。これは爆発の音だ。地響きもこちらに伝わってきていた。なんて衝撃だ。どれだけの爆薬を使っているんだか。



「早坂くん、これって」

「多分、軍人の連中かもな。ヤツ等、おかまいなしに爆弾を使って穴を開けようとしているんだ」


「そ、そんな……こんなことしたら洞窟が塞がっちゃうよ」

「これは想定外だったな」



 ヤツ等もC4か何かを使っているに違いない。結局、時間の問題だったわけか。

 このままでは崩落に巻き込まれる。

 俺たちはトーチカの真下を後にした。


 逃げるように戻っていくが、さすがに疲れた。


 いったん中間地点で腰掛けて休憩だ――と、思ったらお尻が沈んで俺は、ひっくり返った。



「――って、嘘だろおおおおおおおおお!?」



 まさか岩が沈むなんて……。

 いや、違う。今のは岩ではない。泥の塊だったんだ。



「ちょ、早坂くん、嘘でしょ!!」

「なんでこんなところに落とし穴が!?」



 * * *



「――――いてて……」



 俺は随分と気絶していたらしい。目を開けると、天音に膝枕されていた。……て、天国かよっ。



「大丈夫、早坂くん」

「あれ、天音か……俺はいったい」


「ほら、見て。あの上」

「あの上?」


 見上げると、そこには急な下り坂があった。そうか、俺はあの場所から落ちてきたんだ。地下洞窟の更に地下があったんだ。本当に迷宮だな。



「やっぱり、他に通路があったんだ」

「さすが早坂くんだね。強運の持ち主だよ」


「いや、それほどでも」



 立ち上がって周囲を確認した。

 なんだか見覚えのある通路だな。



「……ここ、もしかして」



 そうだ。思いだした。ここは、かつて田中とアキラってヤツが歩き回っていた通路だ。この道のことは天音には話したことがあった。


 こんなところに繋がっていたとは!


 ということは、まさか!!



「ねえ、早坂くん。この道って戻れるんじゃない!?」

「ああ、天音。これは奇跡だぞ」



「え? どういうこと?」



 そういえば、楓はあの時にはいなかったか。俺は、同じ学年の田中とアキラと戦闘になったこと。ここで草埜に会ったことを話した。



「というわけなんだ」

「ここに田中とアキラが? しかも、艾ちゃんまで」


「楓、田中とアキラを知ってるのか」


「あ~、アイツ等って不良仲間じゃん。最低のクズだったよ」



 どうやら、楓はヤツ等と同じクラスだったようだな。それで知っていたのか。

 いやそれよりも、これが当時の通路なら……森に繋がっているはずだ。ロープもそのままのはず。うまくいけば脱出できるぞ。



「よし、この先にあるロープを確認しに行こう」

「そうだね、最後の希望になるかも」

「天音のことは俺が守る」

「頼もしいな。うん、わたしのこと守ってね」


 笑顔を向けられ、俺はドキドキした。やっぱり、天音といると気持ちが弾む。


「ちょっと、私だっているんですけど」

「悪い。楓には俺の背中を守ってほしい」

「合点承知の助」


 そんな変わった返答を貰ったところで出発だ。


 ここはかなり天上も高くて幅も広い。歩きにくいということはない。三人、四人が横に並んでも平気だ。


 なぜ、ここだけこんなに広いんだか。


 それに宝の場所に繋がっているとは思わなかった。あの当時の田中とアキラは見つけられなかったのか?


 銃を構えつつ先へ歩くこと三十分。


 ようやく見覚えのある通路に出た。



「かなり歩いてきたが、これは間違いないな」

「うん。早坂くんが言っていたロープの場所だね」



 そうだ、この先に森に通じる場所があるはずなんだ。


 ついにその場所に出た。



「おぉ! ここ無事じゃん!!」



 俺はテンションを爆上げした。ロープがそのまま残っていたんだ。



「「おおおおおおおお! 早坂くん、凄すぎ!!」」



「いやいや、完全に偶然だったけどね。まさか、森に繋がる道になっていたなんて……」


 でも、疑問は残る。

 なぜ、田中とアキラは財宝の近くまで来れたのに探し出せなかったんだ? 地図がなかったから、迷ったとかかな。


 そう思えば仕方ないだろうけど。



「このことを絆に知らせないとね。これで財宝が運べるって」

「ああ、みんな大金持ちだ! 楓、急いで戻るぞ」



 ホワイトウォーターを出し抜いてやった。これでこっそり財宝を運び出せれば、晴れて億万長者ってわけだ。パラダイスが待っている!!


 再び財宝部屋へ戻ろうと踵を返した――その時だった。


 ロープを伝って誰か降りてきた。



「フハハハハハハ!! 久しぶりだな、早坂ああああああ!!!」

「待ちくたびれたぜ、クソ共!!」



 こ、この二人いつの間に……しかも、あの悪人面の人相……田中とアキラじゃねぇか!! 森でずっと待ち伏せしていたのか。


 アイツ等、本州に戻っていなかったんだ。



「なぜ、ここに!!」


「なぜぇ!? そんなの決まってるだろ!! お宝と女を手に入れる為だ! あの倉島と橘川が無しえなかったことを、俺たちは達成してみせる!! 早坂、てめぇだけが全てを手に入れられると思うなよ!!」



 ブチギレて叫ぶ田中は、銃を向けてきた。

 あれはデザートイーグルか……!


 まさか俺たちが一か月前に武装解除した後に、武器を拾ったのか……!

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