エピローグ
エピローグ
「………………」
「………………」
美凪と……いや、優花と初めてのキスをした。
どちらともなく唇を離したあと、俺たちは少し無言で見つめあった。
そして、
「ははは」
「あはは」
お互いに笑いあった。
「長かったようにも思えますし、短かったようにも思えます」
「そうだな。まぁ、大切なのはこれからだとは思うけどな」
彼女の言葉に俺は笑いながら答えた。
「さて、凛太郎さん。私は貴方に聞かなければならないことがあります」
「……え?なんだよ、聞かなければならないことって」
真剣な表情の優花に少しだけ気圧されながら、俺は言葉を返す。
そんな俺に彼女は、目だけ笑ってない笑顔でペリドットのプロポーズリングを見せながら聞いてきた。
「これ、おいくらでした?」
「…………黙秘で」
「黙秘は認めません。結婚するんですよ?夫婦の家計の話になります」
優花からの圧が強い……
……あはは、お前の口から家計なんて言葉が出るとはな
俺は観念して話すことにした。
「じゅ、十万円に少し欠けるくらい……」
「馬鹿なんじゃないですか!!」
眉毛をつりあげながら、彼女は俺に捲したてる。
「高校一年生が買っていい指輪じゃ無いですよ!!もう!!貴方はもう少しお金の使い方が上手な人だと思ってました!!」
「あはは……これでも安いくらいだと思ってた……」
俺が視線を逸らしながらそう答えると、優花は少しだけため息を漏らしながら言ってきた。
「はぁ……まぁ良いですよ。男の人は見栄を張りたがる生き物ですからね」
「ははは。まぁここまでの買い物をしたのは人生で初めてだったから緊張した。良い経験をさせてもらったよ」
そして、俺はベンチから立ち上がり彼女に手を伸ばす。
「さて、そろそろ帰ろうぜ。お互いに部屋着だからな、あまり外に長居をすると身体を壊しちまうからな」
「そうですね。私たちの家に帰りましょう」
私たちの家。両親が帰って来ても、あの家は俺と優花の場所ってのは変わらないからな。
俺と優花は手を繋ぎながら、家へと帰る。
その途中で彼女は俺の方を見上げながら話しかけてきた。
「お母さんと洋平さんにはなんて言って出て来たんですか?」
「お前と『家族』になって帰ってくる。そう言って出て来たよ」
俺がそう答えると、優花は少しだけ呆れたような表情で言葉を返してきた。
「うわぁ……カッコつけすぎじゃないですか?」
「う、うるせぇな……良いだろ、カッコつけたい年頃なんだよ」
「あはは。そうですね、そういう貴方も好きですよ?」
「……優花」
彼女はそう言うと、俺から手を離して身体を抱きしめてきた。
それに倣い、俺も彼女の柔らかくて小さい身体を抱きしめる。
「名前で呼ぶのは二人きりの時だけにしましょう」
「……何か理由があるのか?」
俺がそう聞くと、優花は少しだけ恥ずかしそうに笑いながら答える。
「あはは……ドキドキしてしまって心臓が持ちません」
「なるほどな。俺もそう思ってたところだよ」
彼女の可愛いワガママに了承を示すと、優花ははにかみながらおねだりをしてきた。
「凛太郎さん……その、家に着く前にもう一度キスをしてもいいですか?」
「良いぞ。てか俺もしたいと思ってたからな」
そして、俺と優花はどちらともなく目を閉じて、二回目のキスをした。
彼女の柔らかくて温かい唇の感触を楽しむ。
舌を入れるのはまた今度だな。
さて、家に帰ったらまずは親父と『お義母さん』に話をしないとな。
俺はそんなことを思いながら、優花のことを強く抱き締めた。
腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
第二章 ~完~
第三章へつづく
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