第四話 ~荷片付けを手伝ってたらお約束のハプニングに見舞われた件~
第四話
「しくしく……隣人さんに汚されてしまいました……」
「何言ってやがんだ。お前だって初めてじゃないだろ?」
「初めてでは無いですけど、あまり経験は無いです」
「少しは勉強しとけよ。結婚したら必須になるスキルだぞ?」
「……それを強要するような人とは結婚したくないですね」
「まぁ、今は男女平等の時代だからな」
『食器洗い』を終えた俺たちはそんな会話をしながら台所を後にした。
「さて、隣人さん。夕飯の代金は身体でお支払いしましたので、貸し借りはゼロです!!」
「……まぁ、そういう事にしてやるか」
天秤は圧倒的に傾いたままだと思うけど、まぁ良いか。
こいつの食べっぷりは見てて気分が良かったし。
「それでは、私のお部屋に案内します!!」
「はいよ。さっさと終わらせて明日に備えようぜ」
俺たちはそう話すと、部屋を後にして美凪の部屋へと向かった。
『美凪の部屋』
家の中へと案内され、居間へとたどり着いた俺たち。
俺の方を振り向いて、美凪は笑顔で言った。
「こちらが私の部屋です!!」
「見事に何も手をつけてないな……」
家具とかは設置されているが、居間のど真ん中にはダンボールの箱が大小十個近くある。
「先程お母さんからメッセージがあり、今日は会社に泊まることになったので帰れない。との事です……」
「かなりのブラックじゃねぇか……」
休みの日に呼び出されて、そのまま泊まりで仕事って……
「システムエンジニアって大変ですよね……」
「へぇ、うちの親父もシステムエンジニアなんだよ。絶対になりたくない職業だと思うわ」
「私を養ってくれているお母さんには感謝してますが、私もそう思います。まぁ私は専業主婦になる予定なので!!」
「あ、そう……」
そんな会話をしながら、俺は目の前にあった『割れ物注意』と書いてあるダンボールを封を開く。
そこには新聞紙に包まれた食器が入っていた。
「これは食器だな。あっちの食器棚に移していけばいいか?」
「はい。よろしくお願いします!!」
俺は自宅の要領で食器を棚に収めていく。
よく使うものを取りやすいところに。
あまり使いそうにないものは上に。
そうやって配置をしていく。
そして、十分ほどで全ての食器を納める。
「よし。じゃあ次のダンボールに……」
「ふふふ……」
俺が振り返ると『漫画本』と書かれたダンボールを開いていた美凪が、漫画を読んで笑っていた。
「おい、いい度胸だな、美凪」
「……は!!しまりました!!」
冷めた目で見ている俺に、美凪は少しだけ気まずそうに
「す、すみません……真面目にやります……」
と頭を下げた。
「最初から真面目にやれよ……」
俺は呆れながら手近にあったダンボールの封を開ける。
手元の確認を怠っていた俺のミスだった。
「……あ!!それはダメです!!」
「……え?」
俺は美凪の制止も空しくダンボールの中を覗いてしまう。
そこには真っ白な女性物の下着がたくさん入っていた。
ダンボールには『下着(優花)』と書いてあった。
俺はパタン。とダンボールの蓋と閉じる。
「……隣人さん。何か言うことはありますか?」
「清楚な下着は嫌いじゃない」
お前は生意気だが、下着は清楚なんだな。
とは言わなかった。
「歯を食いしばってください」
と美凪はニコリと笑った言った。
まぁ、ビンタの一発くらいは許容してやるか。
「良いぞ。眼福だったのは間違いない。まぁ、今度はつけてるところも見せてくれ」
と冗談めかして言ってやった。
「隣人さんのバカー!!!!」
パーーーーン
と気持ちの良い音が美凪の部屋に響いた。
痛え。
そんなハプニングがあったものの、二人がかりで荷物の整理を行った結果。
二時間も掛からずに仕分けをすることが出来た。
「お、終わりました……」
「おう、お疲れ様」
居間でぐったりとしている美凪。
俺は食器棚からコップを持ってきて麦茶を注ぐ。
隣の俺の家から持ってきた冷えた麦茶だ。
「飲めよ。美味いぞ」
「いただきまーす」
グビグビと麦茶を飲み干して、美凪はコップをテーブルに置く。
そして俺の目を見て美凪が言う。
「今日は助かりました。ありがとうございます隣人さん」
「俺も迂闊な一言には気を付けようと本気で思ったよ」
俺がそう言うと、美凪はフワリと笑った。
へぇ、そんな顔も出来るんだな。
「明日はこの美少女と登校する権利をあげます」
「うわ……いらねぇ」
俺は本気で嫌そうな顔をすると、美凪が不機嫌そうな表情で反発した。
「な、なんてことを言うんですか!!普通の男の人なら泣いて喜びますよ!!」
「見た目は可愛いけど、中身は残念すぎるだろ、お前」
俺がそう言うと、美凪はポンと顔が赤くなる。
「か、可愛いなんていきなり言わないでください!!」
「ポジティブな部分だけ拾うなよ……」
呆れたようにそう言うと、俺は椅子から立ち上がる。
「朝八時。家の前に居るから一緒に登校したいならその時間に外に出ろ」
「え?」
キョトンとした表情の美凪に俺はニヤリと笑って言う。
「優しい俺と登校する権利をお前にやるよ」
「い、いらないです!!」
顔を赤くしながら美凪はそう言ってきた。
「あはは。じゃあな、美凪。また明日」
「はい。また明日……隣人さんは意地悪ですね」
頬を膨らませる美凪に俺は言っておいた。
「寝坊するなよ、美凪」
「しません!!」
そんな言葉を背中に受けながら、俺は美凪の部屋を後にした。
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