4/25~5/2 酒どころ
4/25
昼前に布津儀の集落に到着。酒の匂いがぷんぷん漂っている、すばらしい。
杜氏とは顔見知りだが一応、割符で確認、ぴったり合う。ついでに九林ら3人の面も見せておいた。俺が来れない場合こいつらが来る可能性が高いわけでそんな時のために互い知ってた方が楽だろう。
坂山馬車に酒樽を積み込みつつ周辺の噂を聞く。5人前後の賊が近頃出没するとのこと。行きで出くわさなかったのは運がよかったのか、それとも目をつけられて帰りを狙われてるのか。
疲れもあることだし集落で一泊。たっぷりと酒を飲みたかったところだが自重。今さらだが同じ酒好きの面子なら2、3日飲み暮らしてそれから帰るという手もあったかと気づく。次の機会があるようならその時考える。
4/26
酒香に後ろ髪を引かれつつ布津儀を出発。
九林らはきっちり休んだようで疲労は抜けている模様。これならおそらく帰り道も問題ないだろう。
警戒レベルを1段上げつつ進む。
4/27
復路で狙ってくるならこのあたりだろうとあたりをつけてたポイントがあった。それについては3人にも教えていたのでこの日はちょっとした策を用意していた。
ところに読み通りに賊が襲撃を仕掛けてきた。粗末な胸当てを身に着け、なまくらな剣をぶら下げた、いかにもな山賊。相手は5人。数ではこちらが負けている。
ひとまず抵抗はしないでおいて積み荷を調べようと一枚布をはぎとろうとした禿げ頭を、そこに隠れていた底見が跳花でもって撃ち抜いた。狙いは見事で禿げ頭は一発で後ろに倒れた。
統率のとれてない集団は予想してない出来事に弱いもので、賊の間にあからさまに動揺が走った。それを見逃してやるほどこちらは甘くはなくて一気に攻めに転じれば散り散りに逃げていった。
深追いはしない。禿げ頭は死んでいた。遺体は道の脇の方によけておいてやった。そのうち仲間が帰ってきて埋葬してくれることだろう。
4/28
賊を退治したことで明らかに空気が緩んでいる。そういう時こそ危ないと思うのだがいちいちそんな細かいことを言ったものでもないだろうと黙っておく。
実際3人は新米冒険者にしてはよくやってる方だ。十分な仕事をしてくれている。いずれもっと質の高い仕事を求められるかもしれないが、今はこれくらいでも問題ない。
そういうわけでこの日は俺一人だけきっちり気を張っていた。幸いなことに特にトラブルは起きなかった。
4/29
日のあるうちに山を降りる。
坂山馬もだいぶくたびれてきているのでペースを落とした。明日に街にたどり着けばいいと考える。
終わりが近づいてきたことで3人はそわそわしていたが、俺がそれなりに警戒してやってるのがわかったのか、気を引き締めるようになった。口でとやかく言わずとも何か伝わったのなら楽でいい。
電蜂が川で緑骨魚を捕まえてきて捌いてくれた。なかなか器用なものだと感心する。
4/30
街に帰ってきた。予定の日数のうちに坂山馬車を返却。
酒屋の親父に商品を引き渡す。ちょいと向こうで飲んできたが今年のはなかなか出来がいいぞと話せば全身を振るわせて喜んでいた。商売でやってはいるもののなんだかんだこの親父もただの酒好きだ。
そのまま酒場で樽を空けることも考えたがさすがに疲れていたので下宿に戻る。ばあさんの手料理をのんびり食って早めに寝た。
休む時は休むが一番。
5/1
女史を訪ねる。どうせそのうち新米3人組について聞かれることになるだろうから、こっちから覚えているうちに話しておく。
基礎の基礎は叩き込んだ、技術的には使える水準にある、まだまだ甘い部分はあるがそんなものは数をこなせば自然と身につくものだ、簡単な仕事ならあいつら3人だけに任せてしまっても大丈夫だろう。だいたいそんなことを言っておいた。過大評価ではないと思う。
この街は常に冒険者が不足気味である。それを俺が気にしたものではないのだが、仕事が余っているとついつい受けてしまう性分なので、もうちょい使える人材が増えてくれるとこちらとしても嬉しいのだ。
そういうわけで無茶な仕事を割り振られてあいつらがぶっ壊れるのは困る。いくらかいっしょに過ごして多少の情がわいているというのももちろんあるが。
まああとのことは女史に任せておけばいい。そのあたり非常に信頼している。
5/2
下宿のばあさんに頼まれて家の補修。
建てたのはずいぶん前であちこちぼろがきているそうだ。だからこそ家賃が安くて助かってる。ぼろ家と言っても内側はきれいなものだし、ばあさんが生きてるうちは崩れないだろうから問題ない。
1日中、大工仕事をしていたらばあさんが夕食を豪華にしてくれた。鹿肉の味噌漬けに今年の新酒。奇遇なことにどちらも俺が仕事で調達してきたもので巡り巡って自分の口に入ってきた。
ばあさんが死んだらどうしたものかと考える。少しの間なら教会に頼めば住処を都合してくれるだろう。あんまり長くなりすぎると追い出されるだろうが。
結局その時のことはその時になって考えればいいという結論に落ち着く。そうなったでそうなったでどこかちょうどいい下宿先は見つかることだろう。多分そういうものだ。
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