第5話 迷宮1
次の日にハンナが乗って来た馬車で移動する。
俺の私物は少なかったので、すぐに出発だ。
孤児院の弟達や村人から見送りを受ける。そして餞別だ。
「新しい剣……ですか? 本差?」
師匠から新しい剣を受け取った。
「脇差では、短すぎるだろう? その本差がメイン武器になるらしい。まあ、使ってみてくれ」
そうなんだ?
鞘から刀を抜いてみる。
「長いですね、それと重い……」
鈍い光を放っている……。脇差と同じ作りみたいだけど、なんか濡れてないか?
「錆取りと研ぎは済ませておいた。それと油を塗って錆止めするみたいだ。手入れを怠るなよ」
錆止めか……。脇差は、毎日研いでいた。
錆が止まらなかったからだ。本音を言うと、扱いに困っていた。
油を塗ると錆が止まるのか……。いい事を教えて貰ったな。
脇差で試してみよう。食用油ならある。
「ありがとうございます、師匠。使ってみます」
「元気でな」
ここで、アンヌさんが前に出来てた。
そして抱き締めてくれた……。
「……困難な道になると思うわ。でも、気を付けてね。頑張って生きて」
アンヌさんの〈未来視〉か……。
楽な人生を選べなくなったみたいだ。だけど、ハンナと一緒なんだ。俺に不満なんかない。
こうして見送りを受けて、生まれ故郷の村……シクラサ村を後にした。
◇
道中は、馬車での移動だ。ハンナの話を聞く。
まず、首都ではないが、
五人の冒険者パーティーらしい。一人抜けて、補充要員を探していたのだとか。
そんな時に、俺の話を聞いたんだとか。
「信じらんなかったよ。まさかルークが狩人の真似事をしてるなんてね。でも、獲物の切断面は、凄かったから、本当なんだなって。シクラサ村の人達も、山菜採りができる様になったとか、ルークのこと賞賛してるし」
「そうだろうね。俺も畑を耕して生きて行くつもりだったけど、気が付いたら熊と対峙してたし……。
ハンナが、呆れている。
「……死んだら、終わりなのは分かってるよね? 熊と対峙って、普通じゃないよ?」
「十分な射程距離があるからね。そして、一撃必殺の威力でもある。今まで、敗走した事はなかったよ」
「ふ~ん、いい"神様からの祝福"だったんだ?」
『いい』……か。有用だけど、"なんでも切れる"のと"射程がある"だけだ。まだ、真価は発揮できていないと思うし。
「記録がなかったので、誰も気が付かなかったみたい。でも、有用だとは思ってるよ。でも、使いこなしているとは言えないかな。剣術の修行も続けないとね」
「……そう、良かったわね」
含みのある言い方だな。なんだろう?
◇
ハンナが、拠点にしている街へ着いた。
この地域の主要都市、辺境都市ロブエだそうだ。
そして、パーティーメンバーの紹介を受ける。
「そいつが、熊を狩る村人か……。信じらんねぇが、まあ実力がなければ死ぬだけだ。死にたくなければ、必死に働け。今日は荷物持ちだからだな。余計な事はするなよ。それじゃあ、行くぞ」
おいおい。開口一番それかよ?
名前も聞いてないんだけど?
それと、何処へ行くんだ?
ハンナを見る。……萎縮していた。この冒険者達とは、どういう関係なんだ?
「ここが、
「へぇ……」
禍々しい入り口が、俺の前にある。
ハンナは、ここに潜っているのか。
潜る前に、少し聞いてみることにする。
「ハンナは、どれくらいの頻度で
「えっと、一ヵ月ぶりかな……」
そんな間隔を開けるんだ? 一回でそんなに儲かる?
「実は、前に所属していたパーティーが解散しちゃってさ。今は臨時で組んでいるの。ルークも同じ扱いなんだ」
……少し裏がありそうだな。時間ができたら聞いてみよう。
まあいいや。最悪、ハンナと二人で冒険者パーティーを組んでもいいと思うし。
無駄口を叩くと、パーティーのリーダーらしき男が、睨んで来る。
黙ってついて来いってか。俺は荷物を背負った。
まあ、逆らっても意味がない。従おう。
今だけでも……。
◇
「ハンナ! 前三匹!」
「はい!」
――ドゴン
ハンナが、魔物の突進を食い止めると、残りの4人が一斉に襲いかかる。連携は見事だけど、ハンナの消耗が激しい。
回復薬とかいうのを使っているけど、戦闘を続ける度にハンナの消耗が大きくなって行った。
なんなんだ、このパーティーは……。
俺は見ていられなかったので、射程距離に入った魔物に飛ぶ斬撃を放って行った。ここは、森とは違う。魔物に油断はなく、避けられてしまう事もあった。
それでも、多少はハンナの負担を軽減できたと思う。
それと、パーティーでの俺の評価も決まったみたいだ。ハンナは、驚愕の表情で俺を見ているし。
五回目の戦闘で、ハンナが立てなくなった。
「ちっ。今日はここまでだな。こんなんじゃ深層攻略は、まだまだ先だな~。何時になることやら」
「そう言うなよ。リーダー。ハンナも頑張ってるんだしさ」
無意味な会話が始まった。
俺は無視して、ハンナに肩を貸す。鎧が重いな。
「ごめんね。足手まといで」
いかに、
「……とにかく
「私は……、
その時だった。
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