7・それはズルいと思うの
「ねえねえ」
部屋に戻った悠は、後ろから蓮に抱き着くと、
「一緒に入っちゃう?」
と提案する。
分けの分からないスタートで恋人同士になった二人は、悠が別れを切り出すまでデートすらしたことがなかった。
それは彼が『強引に恋人同士にはなったものの、悠の気持ちが分からなかったから』と言う理由がある。
悠はと言えば蓮を変な人だとは思っていたが容姿が好みだったため『どんな交際をする気なのか、それなりに楽しみにしていた』
だが、全く何も無かった為、ブちぎれた。
別れを切り出した悠に蓮は従う形にはなったが、そこで彼の本音を知り『萌えた』のである。主に、悠が。
その後の二人と言うと、初デートで身体の関係に。
半年も何もなかったわけなので、愛が爆発するのも致し方ないだろう。なにせ、二人は若いのだから。
まあ、世間では年寄りの方が爆発するらしいが。
初めて一緒の朝を迎えたその日、悠は蓮から、
『一緒に暮らそう』
と提案された。
彼の一緒に暮らしたいという理由が、
『もっと一緒にいる時間が欲しいから』
だったため、両親に話す時間を貰ったものの、心の中では即決。
普段はおかしなことばかり言っている彼の素の姿は、自分だけが知っていればいい。悠は今でもそう思っている。
「えっと……」
会社では未だに悠のことを『受付お嬢』と呼ぶ蓮。
社長相手に下ネタばかり言っている彼は、実は純情で照れ屋。
自分からキスをするのは平気なくせに、悠から不意打ちされれば真っ赤になる。そんな彼が可愛いし愛しい。
愛を順調に育んでいる二人だが、未だに風呂に一緒に入ったことはない。
冗談で彼が『入る?』と聞くことはあっても。
ここは思い切って、一歩先へ進むべきだと思う。
この先、一緒に旅行へ行きたい悠としては。
「それは風呂場で悠のパイパンを拝見……痛っ」
おかしなことを言い始める蓮の後頭部を軽く平手でひっぱたく悠。
”何を言っているんだ、君は!”と言うように。
「絵画の鑑賞会じゃないんだから!」
「いや、ちょっと緊張して思わず……」
緊張して下ネタに走る人など聞いたことがない。
「まだ一緒に入ったことないし。今度一緒に温泉旅行行きたいし……。今のうちに慣れておいた方が」
と悠。
「鼻血に?」
と蓮。
「そんなスプラッターな温泉旅行嫌なんだけど?」
悠は”鼻血だす前提なの?”と思いながら。
「風呂場で好きな人の裸なんて見たら、鼻血出ちゃうでしょ?」
”ベッドの上とどう違うんだ!”とツッコミを入れたくなったが、
「じゃあ、わたしも鼻血だしたほうがいい?」
と問う。
えらくスプラッターなカップルである。
「それはちょっと……」
と若干引き気味の彼。
「自分だけが鼻血出すって、ズルくない?」
なんだかおかしな方向に会話が進む二人であった。
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