第63話 猫猫猫

君は猫みたいなやつだった。こっちから話しかけてもツンとしていて、こっちが忙しい時に限ってちょっかいをかけてくる。


食べたいというから君の希望の店にしたのに大して喜ばない。その癖、人の食べてるものを食べようとする。


みんなで見ているテレビは平気で横切る。なのに自分が同じことをされると文句を言う。


自由奔放。周りの人は振り回される。


だけど俺はそれが苦じゃなかった。君にならどんな迷惑だってかけられてもよかった。


なのに君は突然姿を消した。探したのに見つからなくて、スマホにも出ない。


君のことが気がかりだったけど日々の生活があって。気づけば半年。


君の訃報を聞いた。君の親からだった。


癌だった。絶対に話すなと言われていたと彼らはいう。


猫は死を悟ると姿を消すという。そんなところまで似なくたっていいじゃないか。


それから俺は猫を飼った。何かしていないと君の元へ向かっていきそうで。


猫、猫、猫。今日もわがまま、悪戯をする。


お前たちはいなくならないでくれよ。本当に迷惑をかけて欲しい時に君はいなかった。


気づけなかった自分が恨めしい。猫の世話をするためだけに生きている。


君の姿を重ねている。猫、猫、猫。

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