第一局14巡目◉護りのミサト

14巡目


◉護りのミサト


 その日、カオリのクラスに転校生がやってきた。

「えー、今日からの転校生を紹介する。こちらは井川いがわさんだ」

 金髪に近い茶髪で毛先をほんの少しだけ巻いている。うちの学校は髪に対して校則はゆるいので何の違反でもないが、しかしここまで明るい髪色の人は珍しい。

井川美沙都いがわみさとです。12月25日生まれ。キリストのミサの日に都で生まれたからミサト。と言っても私はキリスト教じゃないけど。宗教なんて古い時代の発明でしょ、何が善で何が悪か自分の頭で判断出来るようになった現代人が頼るものじゃない。今の世には必要ないアイディアだと私は思っています。でも自分の名前の由来は好きなの。親の仕事の関係で東京から引っ越してきました。よろしくお願いします」


(なんか、強そうなのがやってきたな)とカオリは思った。


「井川さんの席はとりあえず一番後ろに足しておいたからそこを使うように。分からないことがあれば前の席の財前が優秀だからそこに聞きなさい。ホームルームは以上だ」

(あ、ほんとだ後ろにいつの間にか席が増えてる)

「財前さんよろしくね」

「ええ、こちらこそよろしく井川さん」

「ミサトでいいよ。ていうかミサトがいい。私、自分のファーストネームを気に入っているの」

カオリはいきなり下の名前で呼ぶのは馴れ馴れしくないか?と思ったが本人がそれがいいと望むのであれば仕方ない。

「じゃああらためて、よろしくミサト」

ミサトはニコッと笑顔になって握手を求めてきた。

「あらためて、よろしくお願いします!えっと…」

「カオリよ」

「カオリ、末長〜くよろしくネ!」


 この時の挨拶はまるで未来を予知するかのようなやりとりだった。

 

 なぜならこの井川ミサトこそが財前姉妹の生涯のライバル。【護りのミサト】と呼ばれるようになる雀士なのであるが今はまだそんな事はお互い知るよしもないのであった。

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