第一局3巡目◉自然の法則
3巡目
◉自然の法則
私は佐藤ユウ。少し年上のお兄ちゃんが大好きな普通の高校2年生。うちは共働きで両親とも家にいなかったり家でも仕事してたりして小さい頃から私はお兄ちゃんに面倒を見てもらって育った。そのお兄ちゃんも今では仕事に出ちゃってるからあまり遊んでくれないし。わかってるよ。高校2年生にもなったらお兄ちゃんと遊んでる方が変なんでしょ。でも、私はお兄ちゃんと二人でやる麻雀が好きだったな。お風呂掃除とかゴミ出し係とか今日の晩御飯作るとか、そんなことを賭けてやる麻雀。おやつのプリンを賭けてる時に負けたのには泣きそうだった。そんな時にも真剣勝負を汚したくないからって言って負けた私には決してプリンをやっぱいいよとか言って渡したりはしないお兄ちゃん。でも、最後に「もう飽きた」とか嘘ついて一口分だけくれるお兄ちゃん。
ああ、お兄ちゃん。大好き。
お兄ちゃんとやる麻雀。楽しかったなあ。
なんで私達、成長しちゃうのかな。ずっとあの頃のままが良かったのにな…。
あの頃に想いを馳せて街の路上をぼんやりしながら歩いていたら全品千円という安っぽいペンダントや指輪やピアスが売ってる店でサイコロのピアスを見つけた。小さな黒いサイコロが2つ並んで1のゾロ目が出ているピアス。
サイコロを2つ使う遊びと言えば麻雀だ。私はそのピアスに一目惚れしてしまった。1の目の赤が宝石になっててとてもキレイだった。
「これ、ください。」
「はいよー、千円ねー。ありがとう。」
思わず買ったがピアスの穴はない。
(穴開けの機械買いに行くか…)
近くのデパートでそれは売っていた。今日は思わぬところでお金を使ってしまった。しばらく買い食いはしないで節約しよう。お金がないわけでもないが使い過ぎたら戻す。平たくしようとする力を意識する。それが自然の法則であり麻雀もそうだとお兄ちゃんに聞いたから。
その夜。
カシャン!
「痛ったーい!」
私の耳に小さな穴が開いた。
私はちょっとだけ大人になった気がした。
その数日後、隣の席の財前さんが私に話しかけてきた。「佐藤さん、今日ちょっと放課後時間あるかな」なんて、なんだろう、なんだろう。財前さんは美人だ。なんの話だかわからないけどドキドキしてしまう。
それがまさか。麻雀の誘いとは夢にも思わなかった。
類は友を呼ぶ。それも自然の法則だってお兄ちゃんはそうも言ってたっけ。
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