第37話 女神と反女神①
「きゃあああ!いだい!いだいいい!」
痛みにのたうち回るサキラだったが、彼女に駆け寄るものはいなかった。みな、反女神から攻撃を受けた亜月の所に駆け寄ってくる。ライヤードはとくに顔を青くして倒れ込んだ亜月の身体を抱き上げた。
「…大丈夫。ライヤード、私なら大丈夫だから。」
抱き起こされた亜月は、ライヤードの頬を優しく撫でる。ライヤードは今にも泣きそうな顔で亜月のことを見ていた。
「ごめん、ごめん!また傷付けた。君を一番幸せな女の子にするって約束したのに!なのに僕は!」
震えながらブツブツと呟くライヤードの頬を、亜月は両手でべしんと挟み込む。
「うぶっ!」
「大丈夫だって言ってるでしょ!ほら、ちゃんと見て!」
「わっ!そ、そんな破廉恥な!」
「だれが破廉恥ですか!」
攻撃を受けた自分のお腹を見せた亜月に、ライヤードが顔を赤くする。その頭をペシリと叩いてちゃんと見るように促す。
「あ、あれ?怪我してない。」
ライヤードが亜月のお腹を触って確認する。確かに攻撃を受けたはずのそこは、全く出血しておらず、以前の攻撃の傷跡だけがあった。
「アヅキ様は聖獣として覚醒されました。女神であるわたくしが近くにいれば、その力はさらに強まります。反女神ごとに傷付けられる訳がありません。」
笑いながらミィが説明してくれる。確かに攻撃を受けた衝撃はあったものの、全く痛くなかった亜月はそうだったのかと納得した。
「でも許せません。わたくしの大事な聖獣を二度も殺そうとするなんて。お前は絶対に殺します。」
「うるさいわねぇ。ぐだぐだしゃべってないで、さっさと攻撃してきなさいよぉ。ほんとぉは勝つ自信がないんでしょぉ?」
反女神が煽るようにニタリと笑う。両手に持っていたサキラの腕にガブリと噛み付くと「まずっ」と顔を顰めて、呆然と座り込んでいる御門のそばに放り投げた。
「っひぃ!」
「ほら、あなたのだぁーいじな女の子の両腕よぉ。あげるからだぁーいじに持っとくといいわぁ。私ったらなんて優しい女神なんでしょう!」
「…ほざきなさい!」
「あははは!」
「っ!離脱するぞ!」
「分かってる!」
反女神と女神がそれぞれ球体のような光に覆われてふわりと浮き上がる。それを見たモルガーンは慌てて痛みに苦しむサキラとサキラの腕を抱え込んで狂ったように笑う御門を抱えて、空へと飛び上がる。それに続いて、ライヤードも亜月を横抱きにして空へと飛び上がった。
「ここからできるだけ離れるぞ!急げ!」
ものすごい速さでモルガーンとライヤードが元いた場所から離れる。
「わぁ…。」
抱えられながら、亜月が後ろを見てみると、ミィたちがいた場所から目も開けていられないほどのまばゆい光が立ち上った。亜月が目を開くと、そこにあったはずの大地が抉れて、巨大な穴が開いていた。
「えっ…こわっ。」
亜月は思わず呟いてしまったのだった。
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