第25話 魔族救出作戦③
「バカバカバカ!なんで私まで連れて来たんですか!」
「えー、だってあんな可愛いこと言われたら連れて行きたくなっちゃうでしょ?大丈夫。僕強いからアヅキが傷つけられるようなことないから。」
亜月は心配しないでといってキスしてこようとするライヤードの顔面を手のひらで押し留める。
「そういう問題じゃないんですよ!一体どこにいく予定なんですか!」
「おうおう。イチャイチャしやがって、腹立つぜ。俺も早くミィを助け出してイチャイチャしてーなー。」
亜月を抱えて飛ぶライヤードの横をモルガーンが恨みがましい目で眺めながら飛んでいる。
「イチャイチャしてません!どこをどう見たらイチャイチャしてるように見えるんですか!」
「どこをどう見てもイチャイチャしてるようにしかみえねーだろ?お、見えて来たぞ。あそこだ。」
亜月がさらに反論しようとするが、その前にモルガーンは高度を下げてしまった。
「あ!もう!」
「アヅキ、ちょっとごめんね?」
「え?ひゃっ!」
急にライヤードが真顔になったかと思うと、アヅキの額に優しくキスをした。すると一瞬だけアヅキの額に紫色の紋様が現れ、すぐに体の中に溶けるように消えていく。
「な、なにを!」
「僕の加護を授けたから、君に攻撃が当たることはないよ。もちろん僕が近くで守る予定だけど、もしものことを考えてね。…あいつらの気配もするし。」
「あいつら?」
アヅキが首を傾げると「アヅキが気にするようなことじゃないよ。それにアヅキは僕のことだけ考えておけばいいんだから!」といってライヤードはにっこり笑う。またも唇にキスをしようとしたライヤードはアヅキに思いっきり頬を引っ叩かれていた。
「ん?お前ら遅かったな。やっぱりイチャイチャしてたんだろ?」
「してませんってば!」
ライヤードとともにアヅキが降り立ったのは、大きな屋敷の中庭のようだった。
「…なんかすごいことになってるんですが。」
おそらく贅の限りを尽くした立派な屋敷と中庭だったんだろうが、そのどちらにも火が放たれており、見る影もなくなっている。あちらこちらから甲高い悲鳴が聞こえており、アヅキはとんでもないところに来てしまったと体を震わせた。それを寒さと勘違いしたのか、ライヤードが自分の上着を肩にかけようとしたので丁重に断っておいた。
「人間どもは全員捕縛して開いてる地下牢に放り込んでろ。抵抗する奴らには容赦する必要はない。俺はミィを探す。」
一緒に連れて来たらしい部下にモルガーンはテキパキと指示を出している。そしてそれが終わると、自分で番いを探し始める。
「ライヤード。俺は地下牢に行く。おそらくそこが一番怪しいからな。」
「そっか。なら僕とアヅキもついて行くよ。」
「…そいつもとは平和な世界の奴だろ?連れて来ていいのか?」
「大丈夫さ。それにアヅキには魔族の本当の姿を知ってもらいたいしね。」
アヅキの了解なしに話はどんどん進んでしまっていた。
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