第52話 結婚祝い金と、魔脈

Side:スパロ

「キヌフラガ王女の結婚祝い金として金貨1万枚を納めるように。しかと伝えましたぞ」


 役人から御触れが来た。


「金貨1万枚は横暴だ」

「ではティトマウスは払わないと仰るので」

「そうではなくて、相場というものが」

「払わないと仰るのでしたらご自由に。その代わり謀反の志ありと伝えさせてもらいますぞ」

「くっ、払わないとは言ってない」

「初めからそう言えばよろしいのです」


 くそっ、きっとフィンチィの奴の策略だな。

 きっとアンデッド騒ぎで荒廃したアーティクル領の復興に充てるつもりだ。


 確かに領は潤っている。

 観光地として整備されつつあるが、金貨1万枚は用意できない。


『俺が出してやろうか』

「ナノに頼りたくない。代わりの物が俺には払えないから。なるべくなら、貸し借りのない間柄でいたい。どちらかが一方的に利益を受ける関係は嫌なんだ」

『お好きなように』


 さて困った。

 領の儲けには税金も掛かるし、道を整備したりもしないといけない。

 宿泊施設の建物も増築中だ。

 余分に回すお金はない。


「スパロ、眉間にしわ寄せちゃって、似合はないわよ」


 ベルベルの明るさに救われた感じがする。

 ええと俺の領地は村が二つ。

 精霊の畑があるから、畑の面積は要らない。

 土地の有効利用は出来ている。


 他に持っている権利といえば井戸の権利だな。

 井戸を使わせるときに税金を取ったら、非難されるだろうな。


「もっとないかな」

「何が?」

「権利だよ。村二つと掘削した井戸の権利しかない。転移関係はナノの物だと思っているから使えない」

「あるじゃない」

「えっ」

「ドラゴンのいた山が」

「確かに未開の地で、開拓したらその人の物になるけど」

「ドラゴンを討伐したんだから、開拓一番乗りできる権利はあるわよね」

「大義名分は立つけど」


『そういう話なら協力してやるよ。山にハイキングコースを作ろう。物騒な植物とか、モンスターとかは狩りまくっていいよね』

「死骸を好きにしてくれというのでは虫が良過ぎるかな」

『いいや、帳尻はあっている』


 ドラゴンが住んでいた山を開拓する事にした。

 開拓後は土地の権利を売るつもりだ。

 広大だから金貨1万枚ぐらいはいくだろう。


Side:ハイチック8000


 ドラゴンの山を開拓する事にした。

 山をくり抜いて秘密基地とか作ってみたかったんだ。

 あそこの寄生植物を何とかできるのは俺だけだから、独占できる。


 許可も得た事だから、ちゃっちゃとやりますか。

 ゴーレム100体を現地に派遣した。

 山の中に『ここはティトマウス領です』との看板を幾つも立てる。


 杭を打って、ロープを張り巡らす。

 こんだけやれば、良いだろう。

 うはは、土地の権利ゲットだぜ。


 地下の感じはどうかな。

 地下水脈と鉱物と代わり映えのしない感じだ。


 むっ、ドラゴンの巣があった山頂の魔力濃度が高い。

 山の中央を魔力の流れが貫いているようだ。

 これは使えるな。


 俺の物にしたいが、スパロに言うとどう答えるだろう。


『魔力の湧き出るマグマみたいな物が山にあるんだが。8、2でどうだ』

「えっと、マグマって何?」

『火山だと溶岩が噴き出てくるだろ。あれの魔力版がある』

「もしかして、魔脈?」

『そうかもな』

「困った。魔脈があると人が住めない。モンスターをおびき寄せるから」

『魔力を利用してもか』

「魔脈の影響を取り除けるの?」

『まあね。それで魔力の取り分を8、2でどうだ』

「要らないよ。魔力貰ったって使えない」


『じゃあ、ありがたく俺が貰っておく』


 ふへへ、魔力ナノマシンの製造プラントを作ろう。

 魔力ナノマシンでロボットを作ったらどうかな。


【その計画を推奨します。帰還確率が0.1%ほど上がります】


 作った魔力ロボットを精霊と名付けよう。

 どうせ神も精霊もいないんだ。

 俺が作ったところで誰も困らない。

 本物が出て来たら、うちの惑星の基準ではこれが精霊だと言い張れば良いだろう。


 精霊第1号の機能として。

 許可を取り魔力を採取して、魔力ナノマシンを製造。

 医療用魔力ナノマシン。

 自衛攻撃用魔力ナノマシン。

 などの機能を盛り込んだ。


【甦れ、古の聖霊よ。眠りから覚めるのだ】

【いま、作ったところですよ】

【うるさい気分だよ】

【精霊第1号。目覚めました】

【大精霊ナノが命じる。人々を救うのだ】

【了解です】


 医療支援しながら、お礼として魔力をもらう。

 貰った魔力で体の維持と、複製を作るようにプログラムしておいた。

 魔力は見えないから、緊急時は無敵の軍隊として作動するはずだ。

 下級AIしか入れてないので、暴走する事もないだろう。

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