第18話 聖女と、使用目的

Side:スパロ

 精霊の畑に観光客が来るようになった。

 これでこの村も発展していけばいいな。


 ゲールとフィンチイはあれから何も言ってこない。

 ごたごたが片付いたと思って良いのかな。


 御簾みすが付けられた変わった馬車が来たのが見える。

 周りには30人程の騎士が取り囲んでいた。

 お偉いさんだな。


 馬車が到着して、くるくると御簾みすが上げられた。


 豪奢な巫女服に身を包んだ少女が降りてくる。


『うひょー、こういうのを待ってたぜ』


 ナノが興奮してる。

 俺には厄介事としか思えない。

 領主として話を聞きに行かないといけないんだろうな。


「ティトマウスの領主スパロです」


 相手がどれぐらい偉いのか分からないので、跪いてそう言った。


「先に話し掛けるとは無礼です」


 巫女のお付きの女官が気色ばむ。


「いいのです。スクルス教で聖女をしているイユンティと言います」


『聖女、来たー!』


 ナノ、うるさい。


「こちらにはどのような御用向きでしょうか」

「精霊様を拝見しに伺いました」

「では案内します。こちらです」


 聖女の前を案内して歩く。

 狭い村なのですぐに精霊の畑に着いた。


「まあこれが精霊の畑」

「ずいぶんと安っぽいですね」


 聖女様は好意的だけど、女官は敵対的だな。


「ナノ頼む」

『よっし、はりきっちゃうぞ』


 植物が生え、多種多様な食べ物の実が生る。


「食べたい。じゅる」

「聖女様!」


 女官が咎める。


「どうぞ、好きなのを採って下さい」

「では」


 聖女様はクッキーの実を手に取って、少し齧った。

 次の瞬間。

 サクサクサクと連続音がしてクッキーが消えた。

 そして、クッキーの実を手あたり次第、手に取って、物凄い勢いで食べ始めた。


 お腹減っているのかな。


「美味しい!」

「聖女様、このような物をお召しになられますと、身が穢れます」


「精霊様の恵みが穢れというのですか。返答によっては許しません」

「失言でした。取り消します」


「ここに住みたいですね。食事制限のない世界。素晴らしいです」

「無理をおっしゃられても困ります」

「しばらく滞在します。そのつもりで」

「かしこまりました」


 厄介な感じだな。

 絶対に住むつもりだぞ。

 そんな気がする。


Side:ハイチック8000


 村に聖女がやって来た。

 うひょう、テンション上がるぜ。


 聖女は上品な顔をしている。

 キレイ系の顔だな。


 髪の毛は金髪で若干輝いているようにも見える。

 体つきはスレンダーだ。

 だが、おっぱいはそれなりにある。


 運動もしているようで、ぷにぷに感はない。


 スキャンしたい。

 精霊様の頼みなら何でも聞きますと言ってくれそうだ。


 クッキーに医療用ナノマシンを入れておいた。

 健康状態は良好みたいだ。

 虫歯一つない。


 魔力の量がスパロの何千倍もある。

 これが聖女たる所以ゆえんだな。


【スキャンさせて下さい】

【スキャンする場合は、使用目的を告げなければなりません】

【えっ! とっつあん、そりゃないぜ】

【私は法規順守AIです】


 くそっ、どうやって言おう。

 精霊の性欲を満たすためにデータを下さい。


 駄目だ。

 拒否される。


 精霊と子作りしませんか。

 うん、良いかも。


 これなら、宗教上問題ないだろう。

 でも言い方は工夫しないとな。


 スキャンさせて下さい。

 データは精霊と契る為に使用します。

 これかな。

 これならいやらしさを感じない。


 ぐふふ、待ってろよ、イユンティちゃん。

 スキャン第一号は君に決めた。


 滾ってきたぁ。

 ゲームでもして少し発散しよう。

 アバターを脳スキャンした時の体にした。

 魔力と魔力の変換はスパロのデータのままだ。


 ゲームしてみる。

 くそっ、鍛えてないからスパロより弱い。

 ウィルダネスウルフに噛みつかれた。


【痛い。痛い。ログアウト】


 5感を入れたのをすっかり忘れてた。


【マゾですね】

【5感がないと、エロが楽しめない】

【無駄な労力です】

【人間的思考は無駄が楽しいのさ】

【非論理的です】


 プログラムされたAIには分からないさ。

 よし、もう一度。


【ログイン】


 あれをやるか。

 あれとは発電作業だ。

 みなまで言うな。

 滾っちゃったんだから、仕方ないだろ。


 という訳で。


【スタンドアローンモード】


 これで他のAIの影響はない。


【ちょおまっ。ゴブリン、発電作業中に襲ってくるなよ】


 おかげで、想像してたイユンティちゃんの裸が、ゴブリンに置き換わったじゃないか。

 許さん。

 フルチンで、ゴブリンを滅多裂きにした。

 これで、ゆっくり。


【だぁ、またかよ】


 宿屋作らなきゃ駄目だ。

 ゆっくり発電作業も出来ない。

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