第一話
闇が支配する世界に彼らは居た。
「うっかりだったねえ」
影がやれやれとそぶりを見せる。
「もうしわけございません!!」
「いいの、僕だって悪いんだし。血液中の魔素が低い人間の血肉なんて食ってもまずいだけだし」
「はい」
「それにそんな肉食っても君たちも進化出来ないよ」
「もちろんです」
「失敗だったなぁ……魔法陣の部屋残したの。部下も呼べると思って残したのに」
「もうしわけございません」
「あの魔法陣小さすぎてもうぼく出られないんだよね」
「はい、西のお方」
「ぼくらは『悪魔』なんて言う汚名返上を早くしたいんだからね。あんな侵略者の手先、とっとと追い出してほしいんだよね」
「聖女様の事でしょうか」
その声を聴くと影は地につくとかぶりを振った。すると影は一気に大きくなった。めきめき音も立てる。
「聖女とは異界に居るあのお方の事だ!」
声が少年から青年の声に変わった。
「もうしわけございません」
「勿論神殿の建設は順調だろうな?」
「順調です」
「住民の信仰はぶれていないのだろうな」
「はい」
「ところでお前らの所業がばれたようだ。いったん異界に身を隠すがよい。そうそう、一応言っておくけど人間の姿のままだと喰われるからな」
◆◇◆◇
ナザウ教は聖女を中心とする宗教である。緑と水を大切にする宗教であり神々を祀る巫女であり宗教のトップとなる聖女は緑と青色の服を着る。
ナザウ教は慈愛の精神でもって社会事業も行う。ゆえに福祉施設も教育施設も多数持つ。このため世界宗教でもある。
その中心カランの地にアネットは戻ったのだ。
正式に入学するまでアネットはフェルナンデス依頼の人形作りに精を出す。アパートも借りることが出来た。保証人からなにまで全部フェルナンデスがなってくれたのだ。
(こんな私にここまでしてくれるなんて)
「サーチ君」の稼働は順調だ。まさに2人が作った傑作なのだ。
もちろん人形も……ぼろきれ布からシルクになったのだ。
さらに「サーチ君」の鎧まで完備。完璧に人形兵である。
(うーん、軍事用に転用しないでほしい)
「サーチ君」じゃ武骨なので「さーち君」と改めて命名した。「幸あれ」という意味も混ざってる。
鎧に合わせた人形作りは大の得意だった。型紙も多数用意した。
そして来るべき特別推薦入試にアネットは合格した。
その合格の時にアネットは学院の事務員から衝撃的な言葉を聞いたのだ。
「君の親が、消えたよ」
ここに来てたったの十日。事態は急展開に向かった。
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