　優秀なベリンダの才能を知ったデイビッドは、彼女にアドバイスだけでなく現場での指揮もお願いすることにしたようだ。

　本来なら助言するだけの予定だったのに、それじゃあ勿体ないと判断したらしい。俺も、デイビッドの意見に賛成だった。僕は知っている。過去に彼女が取り仕切ったパーティーは素晴らしかった。また、彼女のパーティーを見てみたいと思っていた。意見を出すだけじゃなく、ベリンダが手掛けた新しいパーティーを。

　デイビッドの要請に応えて、ベリンダは俺と一緒に会場の設営を手伝う。

「皆さん、本日はよろしくおねがいします」

　作業を始める前に、職人達に向かって丁寧なお辞儀をするベリンダ。そんな彼女の姿を見た職人達は、感心している様子。まず最初の挨拶から彼らの心を掴んで、信頼関係を築いていく。

　前からベリンダと一緒にやっていた職人達は知っていたようで、笑顔で彼女を迎えていた。いつも、こうやっているのだと分かる。そんな光景を見た僕は、彼女の凄さを改めて実感した。皆で一緒に作り上げる、ということ。これが大事なんだ。

「それでは、作業を開始しましょう」

「よし！　皆、始めるぞ！！」

『はいッ！！』

　職人達の一声で、作業が始まった。

「まずは、大物から設置して下さい。アレを、あの位置に」

「了解しました！」

　ベリンダの指示で動き出した彼らは、スムーズに準備を進めていく。指示を受けた職人達が率先して動くことで、他の職人達も連携して動いていた。現場の流れが良いことが分かる。とても順調に作業が進んでいく。

「ベリンダ、何か僕に手伝えることはあるかい？」

「ありがとうございます、ウォルトン様。そうですね、それじゃあ―――」

　僕も、ベリンダの指示に従って手伝いを始めた。会場内を見回って、作業の様子を一緒に確認していく。

　いつも落ち着いた様子で、物静かなベリンダ。しかし現場で作業を指示する彼女は普段と違い、とても厳しく真面目だった。指示を出す時は真剣で、妥協を許さない。職人達にも容赦がなかった。

「この配置だとダメです。ここに置くように、直して下さい」

「了解です！　お前ら、急いで直すぞッ！」

『はいッ！！』

「お願いします」

　普通なら気付かない。言われて初めて分かるような違い。ベリンダは少しのズレも見逃さずに、完璧に仕上げていく。

「こっちの作業は終わりました。次は、提供する料理を確認しに行きましょう」

「あぁ、分かった」

　ベリンダは、次々と仕事をこなしていった。料理の味のチェック、材料の再確認、提供する順番の見直し。それから、会場で演奏する楽団の確認など。他にも、細かいことを何度も確認していく。デイビッドも作業に合流して、色々と見直していく。

　今までパーティーに参加する側だった僕は、こんなに大変なんだと初めて知った。だからこそ、あんなに素晴らしいパーティーに仕上がっていたのかと納得する。

　今回、僕は彼女のサポートを必死で頑張った。だけど、あまり役には立たなかっただろう。だけど、経験を積めたのはとても大きいはず。しっかり記憶したので、次はもっとスムーズに手伝えるだろう。次は、彼女の役に立てる。

　これだけ頑張って準備したから、成功してほしい。僕は今回のパーティーが無事に成功するよう祈った。

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