第6話 風間由
カラオケ屋に入り、予約していた部屋の前に行くとウマぴょい伝説が聞こえた。歌っているのは間違いなくハル。北村くんが随所で合いの手をいれている。
「ごめん、お待たせ」私はそう言って部屋の扉を開ける。二人は「お疲れ」と言って手を振ってきた。全く一緒の動作だったので、マジでこいつら今日付き合ったばっかのやつかよとツッコミをいれたくなったが、まあいいや、なんて呟きながらハルの隣に腰を下ろした。
「早速だけど、今日の用件ってなに?」ハルが言う。
「いや、ホントに急だね。まあいいや、単刀直入に言うと私好きな人が出来た。はい誰でしょうか?」
「え、ホントに?」
そう言うとハルはうーんと言って悩む。
「工藤とか?」クラスでよく絡むグループの男子を上げた。
「ぶっちゃけ好きでも無い。って多分永遠に答えでないと思うから答え言うね。私が好きなのは
そう言うとハルは勿論、北村くんも驚いていた。それはそうだろう。本岡
「でもどうして本岡くんが?」
「いや、実はさ、この前コミケにコスプレして同人の出版の手伝いに行ったんだけどさ、そのときにわたしセクハラにあってさ。まあ……あのそこそこ露出高い服着てたからあれなんだけどもおっぱい揉まれたわけ。そしたらまあキモいなって冷や汗かいてたんだけども、後ろからさなんか声がするの。『おっさん、やめろよ、あんたみたいなのがいるからコミケが汚物呼ばわりになるって分からないのか』って。おっさんはチッて舌打ちしてどっか行ったんだけども、ふと振り返ったらその声の主が本岡君だったわけ。いや、あっちは私がコスプレしてるって気がついてない様子で『大丈夫ですか?』なんて言ってたけど、私はコイツこんなカッコいいことする人だっけって思ってさ。まあ、その後は高校で本岡くんを目で追いかけてたんだけども、いや。何て言うか気にしないと気がつかないことがあるっていうか。なんか落とし物とかあったら持ち主探して届けたりとかさ、誰か飲み物ぶちまけたら処理を手伝うとかさ、正直コイツイケメンすぎだろって胸がズキズキし始めたんだよ」私は思うがままのことを言いまくる。
「まあ、祐樹は元々そうだけども」北村くんは嬉しそうに頷いていた。まあ、友達なら昔から素晴らしさを知っていたのだろう。ちょっと悔しく思う。
「そこで二人に相談ていうのはさ、まず北村くんになんだけどさ、わがままは承知なんだけど来週の日曜日、このカラオケショップの隣のカフェに一緒に来てくれないかな」
「いいけども、なんで僕も一緒に?」
「いや、まあそれはちょっと照れ隠しといか……あれですよ、サプライズーって感じで、ちょっと頼まれてくれないかな?」
「いいよ。実はあのとき助けてもらった……みたいなやつですね」
「そーそー」北村くんは思ったよりもものわかりが良さげだ。私は胸を撫で下ろす。そして、一度息を飲んだら、次はハルを見た。
「それでね、ハルへのお願いって言うのはね。明日学校で、あのクラスのグループを一緒に辞めようよって言う話なんだけど」
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