年末
波瀾万丈なクリスマスから何日か経ち、今日は12月31日。大晦日。年末である。年末と言ったらみんなはどのように過ごすだろうか。ダラダラしたりする人もいるだろう。が、僕の家ではダラダラすることは許されない。なぜなら
「兄さん起きて!掃除するよ!」
「うおあ!!びっくりしたぁ!!」
音はが朝に耳元で叫び、跳ね起きる。心臓に悪いからやめてくれって前に頼んだはずなんだけど…
「………何するって言った?」
「掃除するよ!」
そう。僕の家でダラダラするのが許されない理由。それは、年末は掃除をすると言う謎の文化があるからなのだ。
「めんどくさ〜い。」
そう呟いて僕はベッドに潜り込む。嫌でも掃除なんてしたくないので、無断でまた惰眠を貪ろうとしたその瞬間、インターホンが鳴り響いた。年末に誰かが訪ねてくることなてこと、普通はあるのだろうか。
「兄さん出て。」
「あい。」
インターホンには僕が基本的に出るので、僕は仕方がなくベッドから出た。
僕が玄関を開けるまでの間、何度かインターホンが鳴った。急かさなくても開けるっつうの。
「はいは〜い。今開けますよ〜。」
そうして僕は玄関を開ける。そして、そこにいたのは
「まじか…お前ら…」
そこには真夏、汐恩、有栖がいた。なんでここにいるの?
「なんでここにいんの?」
すると有栖が前に出て説明し出した。
「音羽ちゃんに先輩の家に来ませんかって誘われたんですっ!」
「な、なるほど……まぁ、寒いだろうし上がれよ。」
僕の言葉で全員ゾロゾロと家の中に入っていく。途中汐恩と目が合った。なんていうかすっごく気まずい。ついこの間クリスマスの日にデートした時に振ったばかりだから。
「あ、えっと…おはよう?」
僕が若干、いやかなりきょどりながら挨拶をすると、汐恩は呆れたような表情をして
「なんであんたが気まずそうにしてんのよ。逆でしょうが。」
そう言い僕の頭をペシリとはたいた。あれ?意外といつも通り?もしかすると僕の杞憂だったかもしれない。
リビングに着き、見るとみんなこたつに入っていた。
「おい。この家に来るんだったら掃除を手伝え掃除を。」
今現在掃除をしているのは音羽一人である。窓を掃除していた。
「私は最初からそのつもりですよ!」
偉い!流石は有栖!
「めんどくせぇ。」
「帰れ。」
「ひどい!」
真夏は案の定面倒臭がっていた。
「私もめんどくさ〜い。」
「汐恩はだらけてても良いぞ。」
「やったぁ!」
無邪気に喜ぶ汐恩。近くで真夏が対応の差に驚いていた。
「汐恩さんも手伝ってくださいね〜!」
遠くから音羽が叫んでいた。その声が聞こえたのか、汐恩は急激に顔が引き攣っていく。傑作だ。
そうして僕たちは家の掃除をやり始めるのだった。窓を開けているせいで寒い辛い。
「さっさと終わらせてこたつに行こう。」
僕の言葉にテキパキ働いている音羽以外の全員が頷くのだった。
「こ、腰が痛いぞ…」
真夏が腰をさすりながら雑巾掛けをしていた。わかるよ。学校の大掃除で教室の雑巾担当になったら腰が死ぬもんな。だから真夏にやらせたんだけど。
「サボンな!テキパキやれ!」
生憎と僕は情というものを持ち合わせていないので真夏に厳しく命令する。そして僕は高みの見物というわけだ。
「フハハハハハいてぇ!?」
高笑いしていると、急に頭を何かで叩かれた。後ろを振り返ると働いていた女子三銃士に睨まれていた。音羽がスリッパを持っていた。それで叩いたのだろう。正直かなり痛い。しかも兄を殴る妹とか怖すぎる。
「兄さんも働くんだよ?」
顔に影ができているかと錯覚するほどに悍ましい表情をしている音羽。
「ひゃ、ひゃい…」
あまりの圧に畏怖してしまい、声が裏返った。これは恥晒しである。そうして僕も手伝うことが決まるのだった。
掃除が終わり、僕たちはこたつでくつろぐ。
「やっぱり年末は掃除なんかしないでこうするべきだと思うんだ。」
僕は掃除反対派である。ゆえに貴重な年末という時間を潰されるのが嫌なのだ。
「いいや、掃除をするべきだよ兄さん。」
僕の意見に意義を申し立ててくるのは妹の音羽。正直こいつくらいしか掃除賛成派はいないだろう。
「私も掃除は賛成ですっ!」
あれ、僕も掃除賛成派に回ろうかな。
「なんで掃除をやるのか、俺は意味がわからん。」
真夏は突っ伏しながら反対意見を主張する。
「私も反対よ。毎日掃除してれば年末急いで掃除する必要もないしね。」
汐恩もどうやら反対派らしい。僕を除いて2対2である。まぁ、実際のところ僕も反対なので2対3。僕らの勝ちである。
「ふふ。フハハ。僕らの勝ちだ。」
「別に競ってないし。」
「知ってるか?音羽。マジレスする女は嫌われるんだぞ。」
「マジレスするの兄さんに対してだけだし。」
「ご覧ください。これが辛辣な僕の妹でございます。兄である僕は心に傷を負いました。」
「はぁ。」
音羽にため息をつかれる。本当にメンタルに来そうだ。おい、やめろよ……やめろって本当に効くからその表情!!
心に傷を負っていた僕が机に突っ伏し始め、この場にいる全員がだらけ始めた。その瞬間、怠惰の限りを尽くしていた真夏が声を上げた。
「そんな変なこと言ってねぇでなんかやろうぜ。」
「ふむ。そのなんかとはなんのことだ?」
一同、思案する。そして、真夏が何かを思いついたような顔をする。
「ククク。これならどうだ?」
一同、真夏の言葉を聞く。
「王様ゲームだ!」
「却下。」「却下です。」「やめましょう。」「嫌に決まってるわ。」
「なんで!?」
全員に否定され、悲しそうなする真夏だった。
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