第537話 低、低、宝、低、マトモ?

 しばらく飛んで行くと、片足立ちをしている戦神のようなおっさんの像があった。


 なんだか倒れそうな姿勢だなぁ。


「ヒモノさん、あそこにわながあるのです」


 チカが片足立ちをしているおっさんの像を指差して、そう言った。


「あれがか? どんな罠なんだ?」


「あの像は倒れそうに見えるけど、倒れないのです!」


「えっ? それだけ?」


「それだけなのです」


「それ、なんの意味があるのでヤンス?」


「近くを通った人を、少し不安にさせるのです」


「くだらない罠だなぁ……」


「これはいつもの低クォリティトラップみたいッスね」


「そうねニャ。ヒモノ、もう行きましょうよニャ」


「ああ、そうだな」



「ヒモノさん、またわながあるのです」


「えっ? どこに?」


「あそこなのです」


 チカが像の足首のあたりを指差した。


「ん? 白い紙が貼ってあるみたいだな。あれが罠なのか?」


「はい、あの紙には、求人情報が書いてあるのです」


「求人情報? どんな人を求めているんだ?」


「像のモデルになってくれる人なのです」


「そうなのか。それで、あれはどういう罠なんだ?」


「あの紙には、応募方法が書いてないのです」


「……それだけ?」


「それだけなのです」


「それのどこが罠なんだよ!?」


「像のモデルになりたかった人は、なることができなくてガッカリするのです」


「く、くだらなさすぎる……」


「また低クォリティトラップなのねッピ」


「ヒモノ、早く進みましょうよニャ」


「そうだな。行こう」



「ヒモノさん、下に宝箱があるのです」


「ああ、確かにあるな」


 地上には、木製と思われる大きな宝箱が三つ置いてある。


「あれは開けても大丈夫か?」


「はい、問題ないのです」


「では、開けてみるか」



 地上に下り、宝箱を開けてみた。


「なんだこれは? 粘土か?」


「はい、その通りなのです。周辺の像の材料にもなっている粘土なのです」


「へぇ、そうなのか」


「いろんな色があるでヤンス」


「そうッスね」


「ふむ、これは子供の遊び道具になりそうでございますね。というわけで、ヒモノさん、雌たちと生殖活動してくださいでございます!!」


「おもちゃを手に入れたくらいでやるわけないだろ!」


「また不潔なことを! 洗浄します!!」


「服や体がまったく傷付かない鼻フック、臭い汁の塊もどうぞでござんす!!」


「「ぐああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」」



「こっちにも同じものが入っているでナンス」


「こちらにもですよでナス~」


「そうなのか。大量に手に入ったなぁ」


「ふむ、この量なら二百人くらい子供ができても問題ありませんでございますね!!」


「二百人!? 問題あるに決まってんだろ!?」


「お姉さん、がんばって産むわね!」

「ワタクシも攻めた子供を産みますわ!」

「正妻のわたくしが一番に産むのです!」


「何言ってんだよ!? 気が早すぎるぞ!?」


「不潔すぎるので、もう一回洗浄しておきましょう!!」


「スーパー私様能力セットも付けておくでござんす!!」


「「「あああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」」」


 ぬるま湯をぶっかけられた後、頭頂部にタライをくらい、両すねに何かが激突し、腰と足の裏に激痛が走った。



 粘土を頭に収納した。


 では、先に進むか。



「ヒモノさん、またまたわながあるのです」


「えっ? どこに?」


「そこの向かい合っている二体の像なのです」


「どういう罠なんだ?」


「あの像の近くを歩いていると、踏まれそうになるのです」


「踏まれそうになるだけ?」


「はい、それだけなのです」


「踏まれないのか?」


「踏まれないのです」


「ええ……」


「それ、なんの意味があるのでヤンス?」


「踏まれそうになって、ちょっと怖い思いをするのです」


「くだらないわねッピ」


「まったくねニャ」



「ヒモノ、せっかくだから体験してみるざます!」


「なんでだよ!?」


「これもエンターテイナーとしての修行ざます!」


「ええ……」


「さっさと行くざます!!」


「はいはい、分かったよ! やればいいんだろ、やれば!!」



 地上に下り、像の近くを歩いてみた。


 すると、像の片足が数十センチくらい上がって、すぐに下りた。


「……もしかして、今のが罠だったのか?」


「はい、その通りなのです」


「今のは、踏まれそうになったとは言えないのでは?」


「いえ、踏まれそうになったのです」


「ええ……」


「やる気のない罠ねニャ!」


「まったくねッスわ!」


「まあ、いいじゃないか。先を急ごう」


「そうねッピ」



「ヒモノさん、またまたまたわながあるのです」


「えっ? また? どこにあるんだ?」


「そこの向かい合っている二体の像なのです」


「どういう罠なんだ?」


「あの像の近くを通ると、踏まれるのです」


「えっ!? 踏まれるのか!?」


「はい、その通りなのです」


「久しぶりのマトモな罠だな!」


「ええ、そうねッピ!」


「空を飛んで移動しているあーしたちには、なんの意味もない罠ッスけどね!」


「ああ、そうだな!」



 像の上空を通過した。


「あれ? 像が動き出したぞ」


「なんで動いたのでヤンス?」


「どうやら飛行するものにも反応してしまうようなのです」


「そうなのか」


 残念なセンサーだなぁ。

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