第276話 容赦なく家探し

 中は、ピンク色の広い空間だった。


 天井、壁、床、すべてが淡いピンクだ。


 淡いピンクのテーブル、濃いピンクの丸型クッション、さまざまなピンクの置物が置いてある。


 壁に濃いピンクのカーテンがかかっているところもある。


 天井は高さ五メートルくらい。

 所々白く光っている。


 ずいぶんとかわいらしい部屋だな。


 プラスドライバーたちは、ピンクが好きなのかな?


 まあ、どうでもいいか。



「なんか女の子の部屋って感じがする場所でヤンス」


「そうねニャ」


「せっかく奪ったんだし、くつろがせてもらいましょうかッピ」


「ええ、そうしましょうッスわ。あっ、このクッション、座り心地が良いッスわ」


「本当ね。お姉さん気に入っちゃったわ」


「なら、お土産みやげに持って帰るでヤンス」


「ミョガガベの家を乗っ取ってくつろぐとは、実にワイルドで芸術的だねでロロ~!」


「これもメモしなきゃねでアメ~!」


 みんなが思い思いにくつろぎ始めた。



「それじゃあ、偵察用鳥類を向かわせるッスよ」


「ああ、頼むよ、トーリさん」


「了解ッス」


 偵察用鳥類が飛んで行った。



「むむっ、ここに食べ物がある気がするでゴザル!!」


「なら、探すキュ!」


「探検なら、わしゃぁもやるでちゅ!」


「面白そうでしゅね!」

わしもやるでにゅ!」

「みんなでやるでひゅ!」


 プリーディさん、キュキュ、マーナさんたちが家探しを始めた。


 あいつらは元気だなぁ。



「そういえば、先に入って行ったふたりは、どこに行ったんだ?」


「あそこから上に行ったようなのです」


 チカさんがそう言って、上を指差した。


 そこには、直径一メートルくらいの穴が開いていた。


「ここにも上階があるのか」


「わたくしの電球が、前に奪った巨大丼ハウスと同じ間取りだと言っているのです」


「ということは、ここは五階建てなのか?」


「はい、その通りなのです」


「そうか。ちょっと見てこようかな」



 俺は上の階に行ってみた。


 二、三階にはキングサイズのベッドが大量に置いてあった。


 色は全部ピンクだった。


 二階のベッドに、イアーユさんとヴィーミラが、大の字になって寝ていた。


 四、五階は空き部屋だった。



 一階に戻って来た。


「ヒモノ、上り階段を見つけたッスよ!」


「いつもの敵もいるわよッピ」


 俺は偵察用鳥類の画面を見てみた。


 そこには、馬の着ぐるみを着ているように見える人型の化け物が立っていた。


 体はショッキングピンク、タテガミは青、目は血のような赤。

 胸の突起物がある位置に、円錐えんすい型で紫色の角が二本生えている。

 尻にも円錐えんすい型で紫色の角が一本生えている。

 馬のような青い尻尾がある。


「こいつがこの階の。また妙な姿をしているな」


「ええ、そうねッピ」


「なんであんなところに角があるのでしょうねニャ」


「すごく邪魔そうでヤンス」


「ええ、お風呂に入る時とか、不便そうねッスわ」


「確かにな」



「これからどうするッスか?」


「そうだなぁ……」


「皆さん、できましたよ」


 リリィさんがテーブルに皿を並べた。


 そこには、いちょう切りにされた銀と黒のものと、さいの目切りにされた赤いもの、皮をむき輪切りにしたバナナの実のようなものが載せられていた。


「対策を考えるのは、食べ終わってからにするか」


「そうッスね」



「リリィさん、これはなんだ?」


「先程の敵を切って、ゆでたものと、ここで見つかったものの皮をむいて、切ったものです」


「ここに何かあったのか?」


「黄色い食べ物があったでゴザル!」


「反り返った角のような見た目だったわッピ」


「へぇ、そうなのか。ここの住人たちの保存食なのかな?」


「わたくしの電球が、その通りだと言っているのです」


「そうなのか」


 あのプラスドライバーたちって、食事を取るのか。


 どこから食べるのだろうな?


 まあ、そんなのどうでもいいか。



 では、食べてみるか。


 いただきます。


 俺はプラスドライバーっぽい敵を食べてみた。


 なんか餡子あんこみたいな味がするな。

 食感は軟骨のようにコリコリとしている。


 結構美味しいな。


 赤い扉っぽい敵も食べてみるか。


 こちらも食感は軟骨っぽいな。

 味はイチゴのような甘みと酸味がある。


 これもなかなか美味しいな。


 バナナのようなものも食べてみた。


 見た目通り、味も食感もバナナだな。


 甘くて美味しい。



「ごちそうさま、リリィさん。美味しかったよ」


「お粗末様でした」


「さて、食休みしたら、あの馬っぽいヤツに攻撃を仕掛けてみようか」


「また余の魔法でかゾヨ?」


「ああ、頼むよ、杖ちゃん、レーアさん」


「分かったゾヨ」

「了解したのだよ」



「そろそろ始めようか」


 俺たちは外に出た。


 あっ、イアーユさんとヴィーミラを置いて来てしまったな。


 まあ、いいか。

 あいつらは寝かせておこう。



「ここを真っ直ぐ進むと、階段があるのです」


「では、準備をするのだよ」


 レーアさんが射撃ポイントを探し始めた。



「ここから撃つのだよ」


「よし、では、呪文を唱えるぞ」


 唱え終えた直後、白い塊が一直線に飛んで行った。


 これで倒せると楽なんだがなぁ。



「トーリさん、どうだ? 当たったか?」


「残念ながら、避けられたッスね」


「そうか」


 世の中、そんなに甘くはないか。



「あっ、なんかマズそうッス! みんな逃げるッスよ!!」


「えっ!? どういうことだ!?」


「なんか撃ってきそうッス!」


「なんだって!?」


 俺たちはその場から退避しようとした。


 だが、そこに白い光が向かって来た。


 ナニアレ!?

 敵のビームか!?


 マズい!?

 あれは避けられない!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る