第251話 愛と料理

 ステージの上で半裸の巨漢が、自分の腹をたたきまくっている。


 ただそれだけなのに、なぜか会場にはさまざまな音が調和する、素晴らしい音楽が響き渡っている。


 この重厚なメロディ、まるでオーケストラが奏でる壮大なクラシック音楽のようだ。



 演奏が終わった。


 見事な演奏!

 拍手せざるを得ないな!!


 と思ったけど、ここでやって良いのかな?


 ここは地球ではないからなぁ。


 ん?

 他の観客たちが立ち上がって、拍手をしているぞ。


 ここにもそういうものがあるのか。


 なら、俺もやっておこう。


 俺たちは立ち上がって拍手をした。



「いやあ、素晴らしい演奏だったな。あれは特殊能力なのかな?」


「わたくしの電球が、その通りだと言っているのです」


「やはりそうなのか。なんという能力なのだろう? 『腹を叩くと音が鳴る能力』なのかな?」


「惜しいのです。あれは『太鼓腹を叩くとイメージした音が出る能力』なのです」


「へぇ、そうなのか」


「はい、あの能力は太鼓腹を維持する必要があるうえに、出したい音を正確に素早くイメージする必要がある、使いこなすのが難しい能力なのです」


「ほう、そうなんだ。それをあんなにうまく使いこなしているのか。さすがはプロだな」


「ええ、まったくねッピ」


「不潔な変態扱いしてしまって、申し訳ない気分ですね」


「確かにそうだな。でも、あれでは仕方ないような気もするけどな」


「そうねニャ。あれは無理ないわねニャ」


「まったくでヤンス」


「ええ、あれはどう見ても、半裸の変態だからねッスわ」



「そろそろ次の演奏が始まるようでごじゃんす」


「ああ、分かったよ」


 俺はステージを見た。


 さまざま楽器を持った奇抜な格好をした人たちが、椅子に座っている。


 今度は地球のオーケストラのような感じなのかな?



 演奏が始まった。


 ん?

 なんだこれは?


 音楽自体は美しいと思うのだが、なぜか説教をされているような気分になるぞ。


 なぜなのだろうか?


 うーむ、よく分からんなぁ。


 後でアーティに解説してもらおうか。



 演奏が終わった。


「素晴らしい演奏だったわねッピ」

「ええ、心が温まるような演奏だったわニャ」

「最高の演奏でヤンス」


 女性陣には大好評みたいだな。


「そうでございますか? なんだか愚かな感じがしましたでございます」


 と思ったが、セイカさんには不評みたいだな。


「うーむ、俺様はなんか説教されているみてぇな気分になったぜ」


「聖剣は、俺と同じ感想なんだな」


「なんだ、おっさんもなのか?」


「ああ、なんでだろうな?」


 アーティに聞いてみるか。


「あれは、一途な愛の素晴らしさを表現した音楽でごじゃんす」


「ふむ、なるほど、それで愛よりも生殖活動優先なワタクシにとっては、愚かなことを言っているように聴こえたのでございますね」


「そして、不潔な浮気者のヒモノさんには、説教のように聴こえたわけですね」


「ええ……」


 そういう理由だったのかよ!?



 ん?

 ステージの上に、ガスコンロのようなものが載せられている、調理台のようなものが並べられているぞ。


 さらに、フライパンのようなものも大量に用意されている。


 なんだあれは?

 料理でもするのか?


 おや?

 赤いキュウリのようなもの、ステーキ用の牛肉のようなもの、薄茶色の円形の何かが運ばれてきたぞ。


「あれはもしかして、俺たちが買おうとしている食べられる楽器なのか?」


「はい、あれはパキウーリィ、ジュゥジュジュジュ、ポキトテを薄く切って揚げたものなのです」


「やはりそうか。次はあれを使って、演奏するわけか」


「そのようでごじゃんすね。楽しみでごじゃんす」


 どんな音楽になるのだろうな?



 演奏が始まった。


 というか、あれは調理が始まったといった方が良いのだろうか?


 ステージの上の人たちが、ジュゥジュジュジュを焼いたり、パキウーリィとポキトテを折り始めた。


 うわぁ、これはすごいな!


 肉が焼けるような、メチャクチャ良い匂いがする!!


 ついでに、なんか良い感じの音楽も聴こえてくる。


 なんだか腹が減ってきたぞ。



 演奏が終了した。


 ああ、良い匂いだった。


 ものすごく腹が減ったぞ。


 そうだ。

 人魚焼きを食べよう。



「あれ? 人魚焼きは?」


「全部食べたでゴザル!」


「美味しかったキュ!」


「ええ~、食っちゃったのかよ」


 くそっ、遅かったか!


 いくつか確保しておけば良かったな。



「お腹すいたわッピ」

「妾もよニャ」

「人魚焼きはなくなってしまったッスか?」


 他のみんなも腹が減っているようだな。


 どうしよう?

 どこかに食べ物が売っている店はないのだろうか?



「失礼しますダベッ。こちらが追加の軽食になりますダベッ」


 ここの職員と思われる男性がそう言って、またテーブルに人魚焼きを大量に載せていった。


 おかわりもあるのか。


 しかも、このタイミングで持って来るとは気が利くな。



 では、食べようか。


 俺は人魚焼きを食べた。


「これには、焼き肉が入っているな」


「私のには、シャキシャキしている野菜が入っているでヤンス」


わらわのは、カリカリに上げてある揚げ物が入っているわニャ」


「これはもしかして、さっきの演奏のか?」


「はい、その通りなのです」


 ええ……


 それを客に食わせるのかよ!?


 こういうのは、スタッフが美味しくいただきましたじゃないのかよ!?

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