第70話 モザイクがかかった不審者集団が町に入るそうです

 では、ヤァマ・ノサァーチに行こうか。


 俺たちは鳥類になり、飛び立った。



「ヒモノ、地上に宝箱袋が落ちている、と私の勘が言っているでナンス!」


「そうなのか。なら、拾っておこう。これから買い物をするわけだしな」


「あそこでナンス」


 イアーユさんが地上を指差した。


 そこには草原があり、巨大な麻袋のようなものが置いてあった。


 大きさは高さ、幅ともに二メートルくらい。


 側面に『私は宝箱』という意味の黒い文字が書いてあるようだ。


 なんだあのデカい袋は!?


 いつもの宝袋の倍くらいあるじゃないか!?


 いったい何が入っているんだ!?


 まさか罠じゃないだろうな!?


 チカさんに聞いてみようか。


「わたくしの電球が、あれは危険なものではないと言っているのです」


「そうなのか。なら、開けてみようか」



 地上に下り、袋を開けてみた。


 中には、巨大なアフロヘアーをした、金のイケメンおじさん胸像が入っていた。


「な、なんじゃこりゃぁっ!? これもオターカ・ラァオジサーンの胸像なのか!? どうなんだ、オヴァーンサ!?」


「これはオターカ・ラァオジサーンのものじゃないオタ!?」


「なら、これはなんなんだ!?」


「分からないオタ!」


「ヒモノ、その胸像は、幸運の抱擁の効果で出現したでナンス!」


「えっ!? これが!?」


「ヒモノさん、わたくしの電球が、イアーユさんの言う通りだと言っているのです!」


「本当にそうなのか!? なんでこんなの出ちゃったんだよ!?」


「今はお金が必要だからだと思うでナンス」


「だからって、なんでこんなデザインなんだよ!?」


「そこは不明でナンス!」


 ええ……



「これは売れるのか?」


「ヒモノさん、わたくしの電球が、この胸像はかなり良いお値段で売却できると言っているのです!」


「こんなデカくて、意味の分からんものを買い取ってもらえるのかよ!?」


 誰がなんのために買うのだろうか?


 加工するのかな?


 まあ、どうでもいいか。


「では、回収しておこうか」


 胸像を袋に戻し、頭に収納した。



「これで私が有益な存在であることが証明されたでナンス!」


「チームに貢献できる優秀な人材ですねでナス~。これは連れて行くしかありませんねでナス~」


 イアーユさんとヴィーミラが得意げな顔でそう言った。


「はいはい、そうだね」


「では、一生養ってねでナンス!」


「よろしくお願いしますねでナス~」


「調子に乗りすぎだろ!? 少しは役に立てよ!?」


「もう立ったでナンス!」


「一生養ってくださいねでナス~」


 まったくこいつらは!?


 まあ、今更か。


 では、先に進むとしよう。



 休憩を挟みつつ、一日飛んだ。


 すると、海と思われる大きな水たまりと、大きな町が見えてきた。


「あそこが目的地の町よッピ。そして、あの海の向こうに未開の領域があるのよッピ」


「へぇ、そうなのか」


 あれがヤァマ・ノサァーチ町か。


 西洋風の美しい町並みの大きな町だな。


 外周にもピセーイ王国都市部のような外壁がある。


 海に面したところには桟橋がある。


 だが、船は見当たらない。


 全部出航しているのかな?


 そういえば、ここの海を見るのは初めてだな。


 ここのも大きくて青いんだな。



 町から少し離れたところに下り、人類に戻った。


「さて、町に入るか。と言いたいけど、入れるのか?」


「出入りは自由にできると思うわッピ」


「そうか、良かった。では、行こうか」


「ヒモノさん! そこの痴女たちを、そのまま連れて行く気ですか!? 不潔ですよ!」


 フーカとルメーセのことか。


 まあ、確かにあのままは問題だな。


「ちょっと、お姉さんは痴女じゃないわよ!」


 いや、痴女だろ!?


 包帯を巻いてるだけだぞ!?


「なんて失礼な! ワタクシは、不潔ではありません! 攻めているのですわ!」


 そういう問題ではないだろ!?


 そんな格好では、警察みたいなものに捕まるかもしれないんだぞ!?



「とりあえず、ふたりには予備の服を着てもらおうか」


「そうですね。清潔な服を着せましょう」


「ワタクシは攻めた服しか着ませんわよ!」


「わがままだなぁ」



「ヒモノ殿、ここは私にお任せをであります!」


「えっ? またモザイクをかけるのか? あれは別の意味で目立つから、あまり意味はないぞ」


「ただのモザイクではないであります。まあ、見ているであります」


 マモリさんが俺たちに手のひらを向けた。


「みんなの首から下がモザイクに包まれたな。というか、俺までかよ。なぜこんなことをするんだ?」


「これは『目立たないモザイクで包む能力』であります。これに包まれると、名前の通りあまり目立たなくなるであります」


「本当に? ものすごく目立つような気がするんだけど……」


「わたくしの電球が、まったく目立たなくなっているから問題ないと言っているのです!」


「そうなのか」


 まあ、行ってみれば分かるか。


 警察みたいなものが来たら逃げよう。



「モザイクがかかったということは、水着を脱いでも問題ありませんわね!」


「なら、お姉さんも包帯を外そうかしら?」


「なんでそうなるんだよ!?」


「やめなさい、痴女ども! 洗浄します!」


「「きゃああああああああああっ!!」」


 痴女どもが洗浄されたか。


 良いことだ。



「では、行こうか」


 俺たちはヤァマ・ノサァーチ町に入った。



 大通りを歩いている。


 さすがは都会、かなりの人通りが多いな。


 だが、俺たちを気にしている人はいないみたいだ。


 全身にモザイクがかかった不審者の集団だと言うのに、すごいもんだな!



 さて、まずはお金を作らないとな。


「メェールさん、ここに胸像を売却できる場所はあるのか?」


「ホプレイズ王国にもミョガガベ買取所があるわッピ。そこで買い取ってもらえるはずよッピ。探してみましょうッピ」


「分かったよ」



 『ミョガガベ買取所』という意味の言葉が書いてある、壁面看板が付けられた大きな建物を発見した。


 ここが買取所みたいだな。


 では、入ろう。



 中は役所みたいな感じだな。


 椅子だけ置いてある待合所、掲示板、窓口が複数、その奥の事務スペースがあるようだ。


 職員は十数名いるが、客はあまりいない。


 すいている時間帯なのかな?


 好都合だ。


 さあ、売却してしまおう。



 胸像を買い取ってもらった。


 あんなバカデカい胸像を持って来たというのに、職員の方々は顔色ひとつ変えずに淡々と作業をしていたなぁ。


 実に素晴らしい。


 さすがはプロフェッショナルだな。



 ホプレイズ王国の通貨は『ルェメ』という硬貨で、そのすべてにメェールさんの姿が刻まれていた。


 女王だからって、これは職権乱用じゃないか?


 まあ、そんなのどうでもいいか。



「ヒモノさん、大変でヤンス」


 レデベールさんが耳打ちをしてきた。


「どうしたんだ?」


「掲示板を見るでヤンス」


 俺は掲示板を見てみた。


 な、なんだこれは!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る