煌めく、星の如し
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第1話 バスタ―バスター
「はあぁ。困りました」
とシエラは嘆いた。
「このままでは、食べ物すら買えなくなってしまいます」
シエラはお金がなくて困っていた。
「なんとかして、お金を手に入れなければ」
お金を得る方法を探すため、シエラは街の散策を始めた。
(うーん。武器屋や道具屋などはすぐに見つかりますが、仕事を紹介してくれるようなところは見つかりませんね)
(こうなったら、この琥珀のペンダントを売って……いや、それはだめです。大切なものなんですから)
(とはいえ、このままでは野垂れ死んでしまいます)
(どうしましょう……)
そんなことを考えながら、ぶらぶらと街を歩き続けていたシエラは、ふと、あるものを見つけた。
「おっ、掲示板だ」
ここになら何か良い情報があるかもしれない、と期待しながら、シエラは掲示板をチェックし始めた。
「ううん?」
その掲示板にはたくさんのチラシが貼られているのだが、その中にひときわ目立つチラシが1枚あった。
多くのチラシは白地の紙に黒い色の文字が羅列して書かれているだけなのだが、そのチラシはピンク色の紙で所々にハートが描かれている、とてもキュートなチラシだった。
「ええっと……」
シエラは吸い込まれるように、そのチラシへと視線を走らせる。
そのチラシには、
『あなたの街の魔物討伐ギルド【バスタ―バスター】に加入しませんか? 加入希望者は、バスタ―バスターの秘密基地までお越しください。注)加入するためには試験に合格する必要があります』
という文章と秘密基地の場所を示す地図がかかれていた。
(秘密基地なのに、どうして場所が描かれているのでしょう?)
シエラは疑問に思ったが、とりあえずは深く考えないことにした。
ちなみに、ギルドというものは仕事を請け負う組織のことだ。
ギルドが請け負う仕事の内容は、素材を採取したり、魔物を討伐したり、道具を作ったりと様々で、それらの仕事を複数掛け持つギルドもあれば、1つの仕事を専門的に行うギルドもある。
そして、ギルドに所属しているメンバーは、仕事をこなすことで報酬を受け取ることができる。
ギルドに加入して働けばお金を手にすることができるので、シエラは困りごとを解決できる。
加えて、シエラは戦うことに関してそれなりの自信があり、魔物討伐という仕事はシエラにとってぴったりの職種だった。
「早速行ってみましょ!」
シエラはチラシを手に、意気揚々とバスタ―バスターの秘密基地に向かって走り出した。
チラシの地図によると、バスタ―バスターの秘密基地は街の中心部から少し離れたところにあるようだ。
(そういえば、このチラシにはあまり詳しいことは書かれていませんね)
(どのくらいお金がもらえるのかとか、どれくらい働けばいいのかとか……)
(もしかして、従業員をこき使うような怪しいギルドなのでしょうか)
(いや、そうは言っても加入できなければ、元も子もありません)
(特に今の私の立場は、ギルドにとって、やっかいな立場のように思えます)
(その立場を理由に、加入を断られてしまう可能性もあります)
(まずは、そのことについて確認する必要がありますね)
シエラはそんなことを考えながら走り続け、やがて、地図の示す場所にたどり着いた。
「ここ……なのかな?」
シエラの目の前にあるのは、大きな古民家。
「秘密基地って感じでもないけど……。まあ、いいか。とりあえず入ってみよう」
シエラは秘密基地の引き戸の玄関をガラガラと開け
「すみませーん」
と中の様子をうかがうように呼びかけた。
「はいはい」
シエラの呼びかけに答えて、秘密基地から1人の男性が現れた。
その男性は30代前半くらいに見え、スーツを着ていて、髪は少しボサボサで、肩くらいまでありそうな後ろ髪は1つにくくっていた。
また、どことなくやる気の無さというか頼りなさを醸し出していた。
「なんの御用ですか?」
「えっと、まず1つ確認してもいいですか?」
「なんだい?」
「ここはバスタ―バスターの秘密基地ということで、間違いないですよね?」
「うん。間違いないよ」
「秘密基地なのに、どうして場所は秘密になっていないですか?」
シエラは手に持っていたチラシを男に見せた。
「チラシに地図が描かれています」
「あはは。これね。まあ、大人の事情ってやつかな。気にしないでくれ」
男の反応から、このことについてこれ以上聞いても意味がないだろうと思ったシエラは、本題へと話題を変えた。
「私、このギルドに加入したくて、ここにやって来ました。それで、早速1つ質問してもいいですか?」
「いいよ。何かな?」
「私は旅人で、いつかはここを旅立つことになると思います。つまり、早々にギルドをやめる可能性もあるということです。それでもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。短い間でも一緒に働いてくれるなら、ありがたいことさ」
「よかった」
シエラは、旅人という自身の立場を理由に、加入を断られなかったことに、ひとまず安心した。
旅人というのは、いつかは旅立ってしまうものだし、それがいつかもわからない、という不確定な存在である。
一般的に考えて、ギルドがそのような人間を好んで雇うはずがないだろう、とシエラは思っていたのだ。
「それより、加入条件は確認済みだよね?」
「もちろんです。ギルドに加入するためには試験に合格しなければならない、ですよね。それで、一体どんな試験なんですか?」
「ふふっ。驚かないで聞いてくれよ。その試験は……」
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