靴を見ろ

 母がよく「その人がどんな人なのか判断するにはまず靴を見ろ」とかなんとか言ってたような。


 ホームレスだった頃、たまたま駅前で見かけたイギリス人に声をかけた。彼は私が英語が分かるのがよほど嬉しかったのかベラベラと話しかけてきたのだが、どこかの地方の出身らしく強い訛りがあり、言っていることがたまに聞き取れなかった。

 そんなとき、彼が私の靴を見てあることに気づいた。

「お前、それどうしたんだ?」

 当時ド貧乏だった私はドンキホーテで適当に買った靴を履いていたのだが、消耗が早くすぐに穴が空いてしまっていた。

 彼はボロボロの靴を見て随分詩的なことを言った。

「お前は表面的には生きてるように見えるが、心の中は死んでるな」

 確かに当時うつ病の症状がひどく、私はかなり頭がおかしくなっていたように思う。初対面の外国人にすら見抜かれてしまった。

 

 結局、その日も晩飯を食うお金がなかった私は、彼とたまたま一緒にいた別のアメリカ人の男に吉野家でご飯をおごってもらった。

 「金はいい」と言われたが、なんだか複雑な気分だった。

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