第60話 詩人?

 一月の話なのですが、今年に入って初めての通院、ということで、親父さんが運転してくれました。


 その日は私にしては珍しく、晴天です。しかもほのかに暖かでした。


 なんならいつも、通院の時は激しい雨に見舞われてしまう私です。


 コロナのワクチンの時は、全部が全部すごい雨でした。


 そんな私なのに晴れてる!!


 と、いうことで、少し浮かれていました。青空が大好きなのです。


 診察が終わり、親父さんが運転してくれているというのに、私はぼんやり車の窓から(顔を出したりとかはしていませんが)空を見上げていい天気だなぁー、って、思っていました。


 しばらくの沈黙の後。突然親父さんが言いました。


が遊んでるよ」


 うん? 今日はなのに?


「……そうだね。きっと、心の綺麗な人には見えるんだろうね」


 と、返事をした私に、今度はちょっと強めのトーンで、


「違うんだよ。が遊んでるんだよ!!」

「うん? だから、今日はだね。……あっ! もしかして、一句読んだ?」

「だから、ちーがーうーんだよっ!! がおれの目の前で遊んでるんだよっ!!」


 目の前とは? ふいに親父さんに目をやると、小柄なが糸を垂らし、ツーっと降りてきて、ハンドルに着地しそうなタイミングで上に登っていました。


「虫なら虫と言ってよぉー!!」

「だーかーらぁー!! そう言ってるじゃーんっ!!」


 と、いうわけで、一旦路肩に車を寄せてもらって、ティッシュで優しくをつまんでもらって、お外に出して上げました。


 いやもう、途中まで本気で親父さん、今年は詩人になるのかな? って思ってました。


 いやぁ、でもあの蜘蛛。私が見る前から、ずーっと、ハンドルに着地しそうでしない遊びを繰り返していたそうで。私は笑いがとまりませんでした。


 日本語って、面白いてすよね。


 実はこの手の勘違い系、結構親子でやらかしてるんですよね。


 つづく

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