11. リードアローでのお仕事
さて、聖銀鉱と命晶核を少しだけ消費したけれど、誤差程度しか使っていない。
この山、どうしよう。
「ふむ。その武器って私の分も作れるかい?」
「リンガさんの分? 作れると思いますが」
「そっか。金は払うから試しに作ってみておくれ。種類は……ブロードソードがいいね」
「ブロードソード……どんな武器でしょう?」
「一般的な片手剣なんだけどね。イメージが湧かないか」
「すみません。剣って使ったことがなくて」
困ったな、武器のイメージって思い浮かばない。
このメイスだって無骨な武器を作っただけだからね。
飾り付けとか一切していないし。
『それならばイメージをもらえばいいのではないか?』
「ヘファイストス?」
急にヘファイストスが変なことを言いだした。
イメージをもらうってなに?
『鍛冶魔法を発動している状態でほしい装備を思い描き、手を触れてもらえ。そうすればイメージがアウラに伝わってくる』
「……だそうですが、試してみます?」
「まあ、お試しだしやってみるか。エンチャントはほどほどに頑丈で切れ味をよく、衝撃も強くしておくれ。あんたのメイスみたいな化け物はいらない」
「わかりました。では始めます」
あたしは鍛冶魔法を発動して聖銀鉱と命晶核に魔力を流した。
その状態でリンガさんがあたしに触れると、確かに武器のイメージが浮かんできたよ。
なるほど、これがブロードソード。
「イメージ伝わりました。これから始めます」
「ああ、任せた」
ほどほどに頑丈で切れ味と衝撃が強いってどの程度だろう。
中級程度のエンチャントでいいか。
メイスの時と同じように聖銀鉱と命晶核から分割された光が形作ったのはイメージ通りのブロードソード。
意匠もこっていてあたしのメイスなんかとは大違いだよ。
「できたようだね」
「できましたね。試してみますか?」
「そうするか。鎧の切れ端を切ってみるよ」
リンガさんはあたしが切り裂いた鎧の切れ端を台座の上に戻し、勢いよくブロードソードで切りつけた。
すると、鎧はさらに分割されブロードソードは魔銀鉱の台座の中にまでめり込んでいる。
……ちょっと強すぎた?
「ふむ。想像以上のできだがちょうどいいか」
「ちょうどいい?」
リンガさんがつぶやいた『ちょうどいい』とはどういう意味だろう。
しかも、強すぎるくらいでちょうどいいとは一体?
「アウラ。私の推薦した人物になら装備を作ってもらえるか?」
「えっと。悪人でないのなら」
「よし、決まりだ。紹介したい人物を連れてくるから少し待っていておくれ。そういえば、宿はどうするんだい?」
「宿……できれば駐機場にあたしの家を出したいのですが」
「家? 家を持ち歩いているのかい?」
「はい。ヘファイストスが、ですが」
「マナトレーシングフレームはなんでもありだね。駐機場の使用量を支払ってくれるなら好きにしておくれ」
「わかりました」
リンガさんの許可は出たので大量の鉱物をしまったあと、係の人にお金を支払いヘファイストスに家を出してもらった。
リンガさんはどこかに行ってしまったし、やることもないからとりあえずお風呂に入ることにしよう。
早速お風呂の準備をしてお風呂で汚れを流ししっかり温まったあと、服を着替えて謎の洗濯装置に先ほどまで着ていた服を放り込んで洗濯をしてもらう。
のんびりと洗濯が終わるのを待っていると家の扉が叩かれて、玄関の扉を開けたところにはリンガさんともうひとり、エルフの女性が立っていた。
年齢的には20代に見えるエルフの女性。
ただ、エルフもそれくらいになると見た目の年齢が変わらなくなるから外見で年齢は判断できない。
装備は金属の鎧に盾と剣、オーソドックスな冒険者スタイルだ。
金属鎧っていうことはエンチャントのかかった魔法鎧なのかな?
「アウラ、待たせたね。こいつに装備を作ってやってもらいたいんだ」
「えっと、リンガさん。その方は?」
「ああ、紹介が遅れた。こいつはエルフの剣士、ロマネ。私の知り合いでAランク冒険者だ」
Aランク冒険者!
すごい、そんな人と知り合いだなんて。
さすがはルインハンターズギルドのギルドマスター!
「おい、リンガ。この少女が本当にお前の剣を作った鍛冶師なのか? 私にはどこにでもいる少女に見えるのだが」
「魔法で作るって言っただろう、ロマネ。物は試しだ、早速作ってもらいな!」
「いや、しかし……」
「それにこの街の鍛冶師どもでは満足な品を作れなかったんだろう? ダメだったらその時は私が費用を支払ってやるよ。さあ!」
うーん、話が見えない。
ロマネって人が装備をほしいくらいしかわからないなぁ。
ちょっと事情を聞いてみよう。
「あの。なんであたしが装備を作るんですか?」
「ああ、アウラは知らないか。こいつは
なるほど。
そこに都合よくあたしがやってきたと。
あたし、結構便利キャラ?
「それで、アウラ。作ってやってはもらえるかい?」
「うーん。構いませんよ。リンガさんの紹介ということで」
「そうか! それじゃあ早速始めよう!」
リンガさんに急かされ家を出て準備を始める。
準備って言っても聖銀鉱と命晶核の山を取り出すだけだけど。
それを見てロマネって言う人も溜息をこぼした。
「……すごいな。このサイズのセイクリッドシルバーゴーレムを倒してきたのか?」
「あと17台分のセイクリッドシルバーゴーレムがあります。あと、フェアリニウムゴーレムの素材も」
「フェアリニウムゴーレム! ということは、妖精銀もあるのか!?」
「解体すればあります。そちらがお望みですか?」
「あ、ああ、いや。まずは聖銀鉱の武器からだ。リンガに聞いた話だと、どのような形状の武器がいいかをイメージして君に触れればいいということだったが」
「あたしの魔法の準備が終わったらそうしてください。あたしは武器に詳しくないですし、装飾とかはまるでわかりません。装飾とかもイメージ通りにできるみたいなので、できる限り細かくイメージしてくださいね」
「わかった。あと、エンチャントもかけられると聞いたが」
「かけられます。どの程度がいいですか?」
「ドラゴンやゴーレムを簡単に倒せるような切れ味の物がいい。可能か?」
ドラゴンやゴーレム……単純に切れ味をあげて頑丈にするだけじゃダメだね。
確か、それぞれの種族にのみ攻撃力が上がるっていうエンチャントもあったはずだからそれを使おう。
「可能です。ドラゴンやゴーレム特化になりますが構いませんか?」
「構わない。普通のモンスターにはそれなりの効果で十分だ。あとは私の技量でどうにでもできる」
うわ、すごい自信。
でも、うぬぼれじゃなくて鍛えてきた技術からくる自信だってわかっちゃう。
あたしもいつかこうなりたいな。
「わかりました。代金は完成品を見てからということで」
「そうしてもらえるか? 上物ができたなら礼金もはずむ」
「では始めます」
「よろしく頼む」
あたしは鍛冶魔法を発動、聖銀鉱と命晶核に魔力が流れる。
そのあとロマネさんがあたしに触れてきて伝わってきたイメージは、少し長めの片手剣。
両手剣には短いけどグリップは両手で握ることもできるようになっている。
そういう剣なんだろうね、きっと。
エンチャントの種類も選び終わっているし、早速作っちゃおう。
「……できました!」
「早いな。しかし、本当に私がイメージしたとおりの剣か。切れ味は?」
「ええと、魔銀の装備程度なら簡単に切り裂けます。ドラゴンとゴーレムには特攻効果のあるエンチャントをかけました」
「そんなエンチャント聞いたことがないが……物は試しだ。魔銀を切ってみよう」
「あ、それじゃあ、あたしが持っている魔銀鉱の山を取り出しますね」
あたしはしまってあった魔銀鉱の山を取り出した。
その大きさにもロマネさんは唖然としていたけど、気を取り直すとその山に向かって切りかかっていった。
すると、魔銀鉱の塊に剣の切り裂いたあとがどんどんついていく。
うん、切れ味は正確だったね!
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