第10話 レディース!?特攻服!?

キラリ「母ちゃん…翼が…」


薫「翼がどした?」


キラリ「いや…その…出てっちゃった…」


薫「どこに?」


キラリ「どこにって…わかんないよ…何も言わずに行っちゃったから…」


薫「すぐに戻って来るでしょ」


キラリ「だと…いいんだけど…」


キラリは小声でそう言った。

キラリは肩を落として自分の部屋に戻り、そしてベッドにバタンとうつ伏せに寝転がった。


あ~あ…どうしてこう上手く行かないんだろ…ほんとはもっと翼とイチャイチャしたいのに…やっぱり漫画と現実はかけ離れてんのかなぁ…


そういや、翼のやつ私のお気に入り読んでたみたいだな…


あぁ…翼があの王子様だったらなぁ…


そのとき玄関の方で誰かが入ってきた音がした。


来たぁーーーーー!翼が帰って来た!何だよ心配させやがって!


そうだ、私があいつを追うんじゃ無くて、あいつに私のことを追いかけさせるように持って行かなきゃ!


ここは、とことん無視して心配させてやろ!


翼が階段を上がって来た。


トン、トン、トン、トン、トン、トン…


キラリはベッドで壁の方を向いて寝た振りをした。


キラリのドアが開いてこちらの様子をうかがっている気配を感じた。

しかしその気配は何も言わずにドアを閉めて隣の部屋に消えてしまう。


何だよ翼の奴!どうしてこういう時に声をかけてくれないんだよ!

ほんと乙女心わかんないなぁ…


そしてキラリはベッドから起き上がり、翼の様子を見に部屋から出ようとキラリのドアを開けた瞬間…


翼「よっ!」


キラリの部屋の前には翼が待ち構えていた。


キラリ「うわぁ~~~!!!」


翼はキラリの反応を見て楽しんでいる。


キラリ「あぁ、マジうぜぇ…ほんと腹立つ!」


翼「だってさ、お前寝た振りをしてたから。それよりジュース買ってきたから一緒に飲もうぜ!」


キラリ「あのさ!そうやって人のことからかって楽しい?」


翼「いいからいいから、とりあえずそこ座れ!」


翼はキラリの背中を押してベッドの上に座らせた。そして翼もその横に座って


翼「ほらっ!お前これ好きだろ?」


そう言ってキラリの大好きなジュースを差し出した。


キラリ「え…どうしてそんなこと知ってんの?」


翼「今日お前の鞄の中に入ってたの見えたし、冷蔵庫にもこれの飲みかけがあったからな。あれは悪くなるといけないと思って飲んでおいてやったぞ!」


キラリ「はぁ!?飲んじゃったの?後で飲もうと楽しみにしてたのに!」


翼「だから新しいの買ってきてやったんじゃねぇかよ」


翼…それって…間接キスだよ…?


キラリ「あ…ありがとう…」


翼「あとさぁ…お前の部屋片付けてる時に見つけたんだけど、これって…」


キラリ「あぁ、特服じゃん」


翼「とっぷく?何だそれ?」


キラリ「私、こう見えてレディース総長やってんの!」


翼「レ…レディース!?」


キラリ「うん、普段は可愛い女子高生だけど、夜になると豹変(ひょうへん)するってよく言われる」


翼「ま…またまたお前…それ全部間違ってねぇ?」


キラリ「何が?」


翼「レディースの総長じゃなくて店長じゃねぇの?んで、普通レディースの店って夜とかなかなかやらんだろ?それに豹変って…全然昼間も夜もガチでヤンキーって感じ変わってねぇだろ!」


キラリ「はぁ!?翼こそ何ワケわかんないこと言ってんの?レディース知らないの?」


翼「レディースぐらい知ってるって…」


キラリ「翼…今度ウチのチームの集会来てみる?」


翼「チ…チーム!?お前んとこチームとかあんの?」


キラリ「………普通…あるよね?」


翼「しかも会議とかじゃなくて集会!?」


キラリ「………普通会議って言い方はしないよね?」


翼「まさかお前…そんなもん着て店に立つのか?」


キラリ「え!?え!?店!?あぁ…祭りとか出店があるときはこれ絶対必須アイテムだから…」


翼「祭り!?お前…何の話ししてんだよ!?」


キラリ「お前こそ何の話ししてんだよ!全く意味理解出来んわ!」


二人は埒(らち)があかないのでスマホで検索して翼に説明した。


翼「あぁ、なるほどね!俺そういう世界と一切関係無い世界で生きてきたから女にもそんな族とかあるの初めて知ったわ」


キラリは特服を持って


キラリ「ちょっと着て見せてあげる!私の特服姿可愛いよ!」


翼は別に興味無いのだが、また断ればキラリが面倒なことになると思い何も言わずにいた。


キラリがそのまま着替えようとして、翼がそれをボーッと眺めていると


キラリ「翼…」


翼「何だよ」


キラリ「私着替えるって言ってんだけど…」


翼「あぁ、着替えれば良いじゃん」


キラリ「だからぁ~…女の子が着替えるんだから普通出てくだろ!」


翼「あぁ、そうか…お前そういうの気にするタイプか…」


キラリ「え…当たり前じゃない?」


翼「いや…みんな別に普通に目の前で着替えるけどな…」


キラリ「はぁ!?お前誰の話ししてんだよ!」


翼「誰って…まあ、いろいろなヤツだな…」


キラリ「お前…やっぱりけっこう遊んでんだな…」


翼「はっ!?何の話だよ…」


キラリ「もういいよ…やめたやめた!もう今日は寝るわ…出てけよ!」


翼「なっ…何だよ急に…全くワケわかんねぇよ…」


そう言って翼は自分の部屋に行ってしまった。


翼…お前のこと…嫌いになっちゃうからな…

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