第4話 陰陽師or御曹司

翼は階段を降りて薫に声をかけた。


翼「キラリの母さん、ちょっと風呂入っていいすか?」


薫「そういうと思ってお風呂沸かしといたよ。入って!下着とかもし無かったらパパの貸すけど?」


翼「いや、ちゃんと持ってきたんで大丈夫です。あと、キラリが一緒のベッドで寝るのは嫌みたいなんで、布団用意してもらっていいすか?」


薫「あぁ、それならキラリの隣の部屋さっき空けといたから、もう布団とかも敷いてあるしそこ使って」


翼「さすがはキラリの母さん!何から何まで仕事が早いっすね!それに…綺麗だし…」


薫「あんたは本当にホスト向きだね。経験あるの?」


翼「いや、全然…てか、俺…女に媚び売って金儲けとか絶対無理だし…」


薫「なるほどね。で?ウチのキラリのことはどう思う?」


翼「え?キラリっすか?うーん…まだよくわかんないっすね…口は悪いし、ケンカはめちゃくちゃだし、ちょっと語学力に乏しいし…でもああ見えて意外に純情で、ウブなところがあって、ヤキモチ焼きで、素直じゃ無くて理想が高くて…いつか白馬に乗った王子様でも迎えに来てくれるとか夢みる少女みたいな…」


薫「あんたなかなか洞察力も鋭いねぇ。で?どうして家出なんかしたの?」


翼「………ちょっと親父にガミガミ言われて…ついカァーッとなって…」


薫「まぁ、22なら自分のことは自分で決めな。家庭事情は私がとやかく言うことでは無いし。ただ…親への感謝は絶対忘れちゃダメ!親ってさぁ、子供が思ってる以上に実は凄く子供のことを深く考えていて、意外と心配してるもんよ?ほとぼりが冷めたら頭下げて戻りな!」


翼「………どうかな…ウチの親は…体裁ばかり気にして…俺なんか別に必要とされてないよ…きっと…」


薫は複雑な想いで翼を見つめていた。


キラリは翼が風呂に入っている間にリビングに降りてきて薫に


キラリ「ねぇ母ちゃん…あいつさ、すっごく図々しいんだよ!私のベッドなのに私に布団で寝ろとか、腹減っただの風呂入りたいだのってさぁ…ここはお前の…いや…あんたの家か!?って…」


薫「ハハハ、そうだね。確かにあの子は自由奔放で王子様気質に見えるけど、私からしたらあれは彼の本当の姿だとは思わないな」


キラリ「え?どういうこと?」


薫「きっとあの子はさぁ…愛情に飢えていて、わざとああいうキャラ作ってるんじゃないかと思うよ。もしかしたら本当はどこかの金持ちの息子だったりしてね」


キャラ「ないないないないない!もしほんとにそんな陰陽師だったらもっと品があるでしょ普通…」


薫「キラリ…陰陽師と御曹司…もう二度と間違うな!」


キラリ「え?あっ…はい…おんぞうし?なの?」


薫「テキトーにそれっぽい言葉遣えばいいと思うな!あんたもいつかは社長婦人って事になるかも知れないんだし!」


そう言って薫はキラリをからかって楽しんでいる。


キラリ「ちょっ…ちょっと母ちゃん!なんで私があんな奴の!!!」


薫「私は別に翼のことを言ってるわけじゃないわよ?ウチだって一応会社を営んでんだし」


キラリ「か…母ちゃんオカマほったな!」


薫「キラリ…だからぁ…テキトーにそれっぽいこと言うなっつーの!オカマほったは全然違う意味!そういう時は、カマかけたな?でしょ?」


キラリ「あっ…そうなの?」


そのとき翼が風呂から上がってきてリビングに入ってきた。


翼「キラリの母ちゃんアザーっす!」


薫「ウィーッス!」


キラリ「ウィ!?…ウィーッスって…」


翼「キラリ…悪いけど俺もう疲れたから先寝るわ!キラリの母ちゃんお休みなさーい!」


翼はキラリをしばらく見つめて


翼「キラリ…お休み」


翼は薫には見えないようにキラリにウインクして見せた。キラリは翼のウインクに胸が高鳴り動揺する。


キラリ「ね…ねぇ母ちゃん…あいつほんとにウチで居候させても良いの?」


薫「何言ってんの?あんたが連れて来たんじゃない?」


キラリ「そ…そりゃそうだけど…親とか心配してないかな?とか思って…」


薫「翼はもう22よ?自分のことは自分で決められる歳じゃない!それに…あの子は大学生でしょ?ついでにあんたの家庭教師として雇おうかなって」


キラリ「は!?か…家庭教師って…そんな…それじゃ私の自由時間が削られちゃうじゃん!」


薫「だって、翼だって一円もお金持って無かったらどこにも行けないじゃない?それなら、ウチで働いてもらえば一石二鳥だし」


キラリ「そんなぁ~」


と、言いつつもキラリにとってはそれを口実に翼をこの家に拘束出来るいい機会だと考えていた。


翼が私専属の家庭教師!?マジ!?なんかドキドキしちゃう!憧れてたんだよなぁ~…イケメン家庭教師と密着して勉強するやつ…


キラリの頭の中は綺麗なお花畑一色になっていた。

そして、その嫌がる素振りを見せながらニヤニヤが止まらない我が子を、薫は優しい眼差しで見つめていた。

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